Sohatsu Eyes
中国の省エネルギー事情
2004年09月14日 王 婷
今年6月、中国政府は「エネルギー中長期(2004~2020)発展計画綱要(案)」を発表しました。 これは、今後16年間の中国のエネルギー政策を定めたものです。省エネルギーの最重視、エネルギー構造の調整、地域間の資源開発の調整、エネルギー安全保障の重視、環境保護の重視、など8項目が重要施策として挙げられました。
その中で、特に注目されるのは「省エネルギー最重視」という施策です。
省エネルギーが長期的なエネルギー政策のトップに位置づけられたのはこれが初めてです。 この背景には深刻なエネルギー事情があります。電力不足と石油価格の上昇が中国の持続的な経済発展に暗い影を落としているのです。2003年には約2/3の行政区で電力不足が発生しましたが、2004年になると、電力不足の地域が31ある行政区の24にまで拡大しました。北京や上海など大都市では、電力供給が制限されています。「世界の工場」である中国が持続的発展を続けるためには、エネルギーを効率よく利用することが必要です。したがって、省エネルギー政策が円滑に実施されれば、中国に多くのメリットをもたらすのは間違いありません。 省エネルギー策としては、まず資源の節約と生産コストの削減が考えられています。現在の発展スピードを維持しながら、省エネルギーを実施すれば、2020年まで8~9億トンのエネルギー(標準石炭換算)が節約できるといいます。金額で換算すると、8,000億人民元(約104,000億日本円)に上ると推測されています。
また、省エネルギーの実施は、環境汚染の緩和にもつながります。石炭を中心とするエネルギー構造の中国では、CO2の排出量は世界全体の14%を占め、アメリカにつぐ第2のCO2排出大国になっています。それと関連して、大気汚染や、酸性雨、水質汚染などの問題も深刻です。 持続的な発展を実現するためには、環境とエネルギーという2つの難問をどううまく解いていくかは、21世紀の中国が直面する重要な課題です。課題を克服するには、中国自らの努力が欠かせないのは当然ですが、国際的な技術協力も必要です。環境保護とエネルギーの安全保障というのは、中国の問題だけではなく、アジアひいては世界の問題だからです。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。