Sohatsu Eyes
不動産の土壌汚染リスク評価
2004年10月12日 澤野 哲也
金融機関が企業や個人に融資をする際、不動産を担保にとります。貸出先の所有する土地や建物などの不動産に抵当権を設定し、万一、貸出先からの返済が滞った場合、不動産を処分して融資した資金を回収します。(無担保での融資も当然ありますが、金融機関側のリスクが大きくなります。そのため、一般的に金利を高く設定したり、また融資の上限額を低く抑えたりします。)
今、この担保不動産に関する土壌汚染が問題となっています。土地に土壌汚染が存在すると、汚染の調査や浄化にかなりの費用がかかり、その結果土地の価値が大幅に下がります。
金融機関にとって、担保にとっていた土地に土壌汚染があると、相手からの返済が滞った際に土地を処分して貸金を回収しようとしても、想定していた額での処分ができず貸金を回収できない事態に陥ります。 したがって、金融機関は担保にとっている土地の土壌汚染リスクの有無を調査する必要があります。しかし、担保不動産は相当の数があります。金融機関の規模にもよるでしょうが、数万件、数十万件の物件を担保に抱えている場合もあり、全ての物件の調査を実施することは現実的に不可能です。昨年2月にある銀行が、「土壌汚染対策法の指定区域に指定された場合、その土地の担保評価をゼロにする」ということを対外発表して話題となりました。これは極端な例かもしれませんが、いずれにしても効率的な対応が必要になります。何らかのロジックによって担保物件をスクリーニングし、リスクの大きい物件に対して土壌汚染の調査を実施するというのが合理的な解決策の一つではないでしょうか。 来年度からは減損会計もはじまります。これは、企業の所有している資産について、その時価が帳簿上の価格(簿価)に比較して大きく下落した場合、簿価の見直しを行い適正な価格に評価替えをしなければならないという制度です。ここでも、土地に対する土壌汚染リスクを考慮し、適正な時価評価をすることが必要となってくるでしょう。 土地に関する土壌汚染のリスクは無視できないものになっています。土地至上主義で走ってきた日本経済全体の課題と言えます。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。