Sohatsu Eyes
水道民営化に学ぶ
2004年12月21日 石田直美

水道会社を民営化する際、政府がもっとも留意したのは、水道事業の質を保つための仕組みです。そのため、水道の水質を監視する飲料水検査局、下水処理場から放流される水質を監視する環境庁、さらに水道事業の経営を監視するOFWATを設立しました。鍵を握るのは、OFWATです。
OFWATは、水道事業の料金規制を行いますが、料金を適切に規制するためには、水道事業の経営にどの程度の資金が必要か、見極める必要があります。というのも、英国の水道事業では、会計が分別管理されているため、水道事業の支出は水道事業の収入で賄わなければなりません。OFWATの定める料金が低すぎて、水道事業の資金が不足すれば、株価が下がり、事業運営に支障が生じます。こうしたことから、OFWATには事業に関するプロだけでなく、エンジニアも参加し、老朽化した資産の改善や水質規制に対応するための投資にどれだけの費用が必要になるか、十分な検討を行って規制しています。
日本の水道事業でも、市町村による経営を原則としつつ、民間委託や公設民営など、官民連携型の様々な事業方式が検討されています。民間企業に得意な部分を委ねることは必要ですが、その場合には、英国のOFWATのように、水道事業に必要な費用がどれだけか、専門的見地から判断できる中立的な機関が必要です。昨年度取りまとめられた水道ビジョンにおいて、第三者機関を設置し、官民連携事業の目的達成状況を公正に評価する仕組みの必要性が指摘されました。適切な官民連携事業を推進するため、この課題に取り組んでいきたいと思います。
[写真上] 最近ある浄水場に導入された高度処理施設
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。