コラム「研究員のココロ」
自治体版目標管理成功のための3つの要諦
目標管理は1日にしてならず
2003年08月25日 山中 俊之
3つの要諦
その1:部署ごとに組織のミッションを議論し、職員の間で共通認識をもたせる。
その2:行政評価など他の行政経営のツールとの整合性を持たせる。
その3:定着のための研修と試行を繰り返す。
現在、自治体において職員個人を対象とする目標管理制度を導入する事例が増えている。一種のブームの感がある。近いうちに、目標管理を導入する自治体は半数を超えるのではないだろうか。しかし一方で、多くの自治体においてその導入には苦労しているようである。
筆者は、多くの自治体において、目標管理導入のお手伝いをさせていただいている。その経験から、以下の3つ点が、自治体版の目標管理を成功させるための要諦であると考えている。
第一の要諦は、部署ごとに組織のミッションを議論し、職員の間でミッションに関する共通認識をもつことである。ミッションとは、顧客の観点から見た組織の存在理由である。自治体のような非営利組織では、ミッションの重要性が企業などの営利組織以上に大きい。このミッションは、目標の対象や達成レベルの方向付けを行う。筆者の経験でも、ミッションが十分に議論されている場合や、ミッションが目標管理シートの一項目として適切に記述されている場合は、目標も顧客の視点から適確に記述されている場合が多い。また、ミッションを組織内部で議論することは、職員の間で自らの仕事の意義を改めて問い直す絶好の機会となる。このような議論は、職員の意識を変える大きな役割を果たす。
第二の要諦は、行政評価など他の行政経営のツールとの整合性を持たせることである。現在自治体では、行政評価や総合計画の進行管理など多くの行政経営に関係するツールが存在する。行政評価をすでに導入しており、職員が事務事業評価シートの記入に膨大な時間を割いているような場合、さらに目標管理シートの記入も依頼すると大きな反発が生じる。筆者の経験でも、行政評価と目標管理の整合性が取れていないために混乱が生じている事例を見聞する。筆者は、組織ごとの目標管理がマネジメントのツールの中核であり、事務事業評価や進行管理の目標や指標は、目標管理の目標や指標に活用されるためのデータであると考えている。そして、組織の目標が個人目標に落とされた場合に、いわゆる職員個人対象の目標管理になると考えている。これらの行政経営のツール相互間の関係については、色々と議論のあるところであり、どの考え方が絶対の正解ということはない。重要なことは、これらのツールを整理して、統一的なマネジメントの仕組みを職員に提示することである。
第三の要諦は、研修と試行の繰り返しである。目標管理を導入する際には、目標設定の方法や管理職の場合は年度初や年度末の面接方法を学ぶための研修が実施されるのが通常である。しかし、これらの研修を一度実施した後は、各自の取り組みに任されていることが多い。筆者は、研修の後に試行を行い、その試行の後にさらに試行結果を受けた研修が必須であると考える。初めての試行では、職員が目標設定に悩み苦しむ。職員の頭に目標管理に関する悩みが残っている間に実際に職員が記入したサンプルなどを使用して再度研修を行う。その研修の後再度試行を行う。研修と試行を2-3回繰り返すと必ずや職員の間に目標管理が定着する。研修においては、評価者の個別の疑問に対して1人につき1時間程度の時間を割く個別相談方式(ヘルプデスク方式)の活用も大変有効である。
いずれにせよ、目標管理は成功すれば自治体改革の大きな切り札の一つになる。しかし、そのためには、クリアしなくてはならないことも上記のように多い。まさに、「目標管理は1日にしてならず」である。