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コラム「研究員のココロ」

岐路に立たされる公営バス事業
~ 今、行政は何に取り組めばよいか?~

2002年08月26日 松村 憲一


 政令指定都市や地方主要都市など、従来から公営バス事業を抱えている都市は多いが、多くの都市では乗客減少→赤字拡大→サービス低下→乗客減少、という悪循環に陥っているのが現状だ。赤字の拡大に歯止めがかからず、存亡の危機に立たされている事業者も少なくない。

 一方、交通分野における政府の規制緩和政策の一環として、今年2月から乗合バス事業の参入・退出規制の緩和が実施されており、事業者の新規参入や既存路線撤退がより加速する可能性が高まっている。黒字路線への新規参入は、既存公営バス事業の収益性をさらに低下させるものであり、経営悪化の拡大要因となる。他方、民間事業者の既存路線からの撤退は、地域の公共交通手段を消滅させる恐れがある。

 こうしたなか、まちづくりを担う行政体としては、地域の交通手段の確保という観点から、また自動車社会の問題点を踏まえた望ましい交通体系の実現の観点から、公共交通のみならず、自動車移動や徒歩・自転車移動を含めた総合的な交通政策の立案が求められている。とりわけ公営バス事業については、公共交通機関としての役割のあり方を再検討する必要性が高い。

 そこで次の3点についての取組みが求められる。

 第一に、地域交通全般や公営バス事業の詳細な現状分析、利用者や住民に対する潜在ニーズ調査の実施等をもとに、中長期的な公共交通全体のあり方を示すことだ。具体的には、望まれる公共交通サービスの水準、地域別の方針、具体的な公共交通手段確保・充実の手法メニューや、各主体の役割分担などについて、体系的にとりまとめた基本指針書を策定することが有効である。指針策定にあたっては、行政、事業者、地域住民の幅広い参画・議論が前提となる。

 第二に、上記指針で明らかとなる公営バス事業の役割を踏まえ、公営バス事業の今後のあり方(事業形態など)について、当該地域での望ましい手法論を比較・検討する必要がある。例えば函館市では、公営バス路線を地元民間事業者に業務委譲をおこなったことで有名であるが、その他にも直営方式による経営合理化、間接経営方式、一部運営委託、事業撤退など、様々な選択肢が考えられる。
 
 第三に、公営バス事業の今後の経営のあり方について、経営ビジョンの再定義・明確化や、民間経営スタイル・手法の導入等を含む、新たな経営改善計画および実効性のあるアクションプランを立案し、顧客志向の経営改革を実現することだ。例えば筆者は、GIS(地図情報システム)を活用したマーケティング体制の強化や、事務事業評価システム導入等に関する支援・提案を行っているが、従前にない発想も取り入れながら、真の経営改革を目指す必要がある。
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