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コラム「研究員のココロ」

営業ナレッジ移転の主役はトップ営業か?並の営業か?~その1

2003年07月14日 加藤彰


自己認識の重み

 この3月から私はコーチを雇い、コーチングを受けている。
 近年、部下と上司の関係を見直す意味で、コーチングが話題に上ることが非常に多くなった。私も、営業部門の管理職の方々にコーチングの初歩をご紹介する機会が次第に増えてきている。
 ところが、私自身がコーチングを受けたことがあるかというと実はそうではなかった。「コーチングは部下を伸ばす」とよく言うが、では自分がコーチングを受けたらどのように「伸びて」いくのか、それを体感したことがなかったのである。

 コーチを雇おうと思い立ったのは、自分の仕事上の能力を伸ばさなくてはという漠然とした切迫感があったこともあるが、コーチングのプロセスの中で一体自分にどのような変化が生じるのか観察するのも悪くないと考えたからでもあった。

 さて、コーチングが始まって、コーチは最初に私に何を宣言したか。その人は私に「あなたのセンター~価値観を見つけましょう」と言った。驚きである。私にはそのやり方はいかにもモタモタしたやり方に思えたのだ。とっとと目標を設定し、解決案を一緒に考え、そのフォローをする、その手伝いをしてもらいたいのに、と感じた。だいたい私は元来が自分の価値観など突き詰めて考えたことの無い人間だ。

 ところが、価値観探しの旅を続けるうちに、私はどういう職業人でありたいのか、私の好きな事や好きなやり方はどのようなものか、私の強み・弱みは何か、がゾロゾロと出てきたのである。しかも大事なのは、これらがコーチから「あなたはこういう人だ」と指摘されたものではなくて、自分で気付き納得したものであるという点だ。
 自分で納得できていると、自分の中から次のような気付きが湧き起こってくる:
 ・これは僕のこの能力が不足しているせいだと思っていたけれど、
  実は別の能力不足が原因だったのか。
   そっちの補強の方が先だ
 ・お~、これは僕の強みだったんだ。もっと前面に押し出して活かして
  いっていいんだな
 ・あ、これって、僕が腰が引けて避けてきただけ!?
  能力不足を言い訳にせずにとにかく経験を積むことが大事なんだな
 ・あの人のやり方をそのまま真似しても僕には続けられないな。
  僕には別のやり方の方が合っているだろう

 これらの気付きを得ることができた時点で、私の中では、いくつかの取組み項目とスケジュール感が自然に形作られてきていた(現在実行しているものも多い)。自分で自分のことを分かって納得できれば、人間は自ら「あれしよう、これしよう」という意欲を生み出す動物なのだなと実感した。

 自ら吸収・成長しようとする意欲の源泉はいろいろあるだろうが、自分で自分を分かっているという「自己認識」がそのうちの重要な一つではないだろうか。


営業ノウハウ・ナレッジ移転研究の主流
~魅力的な探索対象としてのトップ営業

 さて、私の所属するCRMクラスターでは、以前より営業ノウハウ・ナレッジ(以下、言葉の厳密な定義の問題はあるが、ナレッジという呼び方で包括する)移転を一つのメイン研究テーマに据えている。勘と経験に拠るところがあまりにも大きい営業ナレッジを、如何にして他の営業担当者に移転していくかという営業部門永遠の課題である。

 この課題に取り組む際の基本発想は、トップ営業のナレッジや行動特性を抽出して、それを如何にそれ以外の人(以下、失礼ではあるが、分かり易いように「並の営業」と呼ぶ)に伝えるかである。これに基づけば、まずはトップ営業ナレッジを抽出しないと全てが始まらない。

 ところが、トップ営業ナレッジは極めて属人的かつ状況依存的であり、抽出して活用できるような形に仕立て上げるのが非常に難しい。個々の断片的な活動事例であればまだしも、「ある状況で何故そう考えたか/行動したか」を抽出するのは至難の業である。
 また、トップ営業本人は自身の強みを自覚していないことも多く、第三者がその人の活動を細かく観察して初めてノウハウが抽出できるということも多い(日経情報ストラテジー 2003年5月 p.61)。
 さらに、トップ営業ナレッジは、顧客の購買行動特性にも依存する。メーカー開発部門を顧客とする営業と、家電量販店を顧客とする営業とでは、トップ営業ナレッジの要点ががらっと変わってくる。

これらのことがあいまって、トップ営業ナレッジの抽出は極めてチャレンジングな課題となっている。玄人ウケする「華々しい」課題なのである。ここでの主役はトップ営業であり、その人たちの行動を深く見つめていかねばならないということになる。

「並みの営業」を見直した今後の方向性へ続く
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