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コラム「研究員のココロ」

好きこそものの上手なれ?
~間違いだらけの起業術~

2003年06月16日 原田 喜浩


 花が好きで花屋さんをオープンし、ラーメン好きが高じてラーメン店をはじめる。リストラや賃下げなど大企業も安泰とはいえない現在、このような古典的ともいえる起業を真剣に考える人も多いと思われる。しかし、自分の好きなモノを扱う商売をはじめた人のうち、どの程度が成功を収めているといえるだろうか?

 「好きこそものの上手なれ」型の起業に疑問を投げかけ、その大半は失敗に終わると説いているのが、最近、筆者が翻訳した『はじめの一歩を踏み出そう~成功する人たちの起業術』(マイケル・E・ガーバー著、世界文化社)である。この本では、アップルパイを焼くのが大好きでパイの専門店をオープンした女性起業家サラが主人公になっているが、ここでも彼女の店を例に考えてみよう。

 サラの焼くアップルパイはとても美味しいものだったとしよう。それだけで彼女の事業は成功すると言えるだろうか? サラがあるベーカリーで働く職人なら、その店は繁盛するかもしれない。しかしベーカリーで働くということと、パイの専門店を経営することには大きな違いがある。なぜなら、オーナーになった瞬間に、仕入れをおこない、人を雇い、経理の仕事をし、資金繰りを考え、広告を打ち、新商品を開発するといった「経営者の仕事」を背負い込むことになるからである。たとえ運良く、経営者の仕事をこなすことができたとしても、何年にもわたって、これだけ多くの仕事をこなし続けることができるだろうか? それは不可能であり、いつかは燃え尽きることになってしまうというのが、『はじめの一歩を踏み出そう』の著者ガーバー氏と筆者の共通の見解である。

 そもそも、起業の成功を計るモノサシとは何だろうか? 黒字決算であること、ベーカリーで働いていた頃よりも給料が増えること、これらも一つのモノサシである。しかし、もっと大切なことは、サラが店で働かなくても(=従業員に任せても)、顧客が満足し、収益が上がる仕組みができているのか、ということではないだろうか? つまり、「経営者が現場で汗を流さなくても、事業が成り立つ仕組みができているか」ということである。

 この仕組みがなければ、経営者は十分な休暇を取ることもできないまま、日々の業務に消耗してしまうことになる。また、たとえタフな人物であったとしても、この仕組みがないかぎり、複数の拠点を構え、事業を拡大することはできないのである。

 「経営者が現場で汗を流さなくても、事業が成り立つ仕組み」とはどんなものだろうか?こんな疑問を持たれた方は、『はじめの一歩を踏み出そう~成功する人たちの起業術』を手に取っていただきたい。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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