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コラム「研究員のココロ」

親会社依存体質からの脱却に向けて

2003年04月07日 宮田雅之


 バブル期に大企業を中心に次々と子会社が世に産み落とされた。親会社の不動産を管理する会社、製造部門を独立させた会社、物流部門を独立させた会社など事業内容は様々であるが、これらの企業の多くに共通点がある。それは、「親会社からの継続受注を前提とした事業構造になっている」ということだ。

 この構造は、資本関係のある子会社だけではなく、系列会社や下請会社にも当てはまる。例えば、自動車会社本体と一体となって製品開発に取り組んできた部品会社も、資本関係はなくとも、メーカー本体からの継続受注を前提として事業を進めてきた点から見れば、構造上同じカテゴリーである。

 しかし、経営環境は一変した。昨今のデフレ下においてコストダウン圧力が強まる中、メーカー本体は従来からの系列取引にもはや捕らわれていない。必要な品質を満たす商品を最も安く入手できる先を必死で探している。付加価値の低い商品が中国製に取って代わる様は、もはや日常的な光景と言える。

 その結果、特定先からの継続受注に依存してきた企業の多くは、「脱親会社」「脱一社依存」を突きつけられている。大きな後ろ盾を失った今、自らのコアコンピタンスを明確にし、並み居る競合企業に打ち勝てる企業への脱皮が求められている。そのためには何よりも社員の意識改革が必要不可欠である。

 社員の意識改革の手法として、経営者の強力なリーダーシップを求める声を耳にする。いわゆる「リーダーシップ待望論」である。日産自動車のゴ―ン社長が、この典型として様々なメディアで紹介されている。しかし、ゴ―ン改革は、トップからの一方的な方針の発信(トップダウン)ではなく、「クロスファンクショナルチーム」と称する、組織横断型のプロジェクトを抜きに成し得なかったと考える。つまり、改革の主体を、一部の経営層に委ねるのではなく、「現場」の第一線に見出すことこそが重要なのだ。

 昨今の企業業績の停滞は、実は経営者自身の閉塞感に因るところが大きいのではないか。いま経営者に必要なのは、自らの会社の社員を信じること、そして社内の力を結集してやれることを「やり切る」ことではないだろうか。「我が社には人材がいない」という言葉を多くの経営者から耳にするが、社員の能力を発揮させるための策を本気になって講じているだろうか。

 経営者がリスクを負い、現場の第一線の社員が改革を推進しやすい「環境」を用意すれば、社員の動きは見違えるように変わるはずである。そして、社員が自らの将来を自分たちの力で変えようと考え始めた時に、「親会社依存からの脱却策」も見えてくるはずだ。
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