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コラム「研究員のココロ」

怖い人がいなくなった。
事業再生の現場より

2003年03月31日 柴田 隆夫


 事業再生を掲げてコンサルティングを行っていますが、最近、コンサルティングの現場で感じるのは、企業のなかに「怖い人」がいなくなったなぁ、と言うことです。

 今、コンサルティングを行っている会社で、こんなことがありました。

 私達のコンサルティング活動は、経営トップから経営幹部を対象に、基本的に月2回の会合を行いながら経営課題に取り組んでいくというスタイルをとっているのですが、この会合は、「時間厳守、欠席不可」で行っています。つまり、時間に遅れた場合は、その遅刻理由を説明して頂くまで、着席を許していません。又、やむを得ない用事がある場合は、原則会合に出席し、理由を述べた上で退席可、をルールにして会合を運営しています。

 先日の会合では、約20名のメンバーのうち、2名が欠席でしたが、事前に欠席理由が届けられていました。そのうちお1人は、会合場所にこられて欠席理由を述べて退席されました。又、残りメンバー全員時間前に集合し、会合が始まりました。

 ところが、この会社さん、会議はメンバーが集まらないのがあたりまえ、欠席・遅刻の頻発している状態で、現在でも、時間どおりメンバーが集まる会合は、我々の会合だけ、とのことです。これを聞いて、思ったことは、「会社の中に怖い人がいないんだなぁ。」と言うことです。このことは、事業再生の現場に携わると、ほとんどの企業で見られる現象と言えます。

 事業再生とは、企業として、事業として生き残りをかけて行う活動ですから、「やさしい人」では勤まりません。よく現場で申し上げるのですが、人間できることとできないことがありますから、事業再生と言っても、できることしかやれません。しかし、そのやれることを「やりきる」ということが事業再生の前提条件になります。

 ですから、私達は必然的に「怖い人」にならざるを得ません。
「企業の存続を確保するためには、どのような実績をあげることが必要なのか?」
「それを達成するためには、具体的に誰が、何を、いつまでにやらなければならないのか?」
「やらなければならないことは、本当にできるのか?」
「できるようになるためには、何が必要なのか?」
「できるようになるためには、他の人間のどのような支援・行動が必要なのか?」
「できないとすれば、リカバリーはどうやってするのか?」
「そのリカバリー策で、本当に企業存続は確保できるか?最終的に従業員の職は守れる、と言えるのか?」


 このようなことを常に頭に入れ、会社の方々と話し合う。そして企業としての、組織・個人としての最大限の「行動」を引き出す、「緩み」を発生させない、そういった活動が、私達が実際やっている事業再生コンサルティングと言えます。このコンサルティングの主な活動は幹部会合になりますから、欠席だらけ、遅刻だらけではお話になりません。ですから「時間厳守、欠席不可」は私達のコンサルティングを進めていく上で一番最初の条件となります。

 他の会社で、実際「怖い」と言われたこともあります。これは、個人としては楽しい経験ではありません。しかし「それをやらなきゃ、困るのはみなさんだろう。」と言う思いが私を「怖い存在」にしつづけているのかな?とも思っています。

 それともうひとつ、会社を預かる、部門を預かる、現場を預かる、経営陣・管理職(いわゆるマネジメント層)は、基本的に「怖い」人間にならなければ、マネジメントとしての役割は果たせない、と感じるからでもあります。

 事業再生コンサルティング活動では、活動の目的を明確にし、目的達成のための具体的な目標を決めます。そして、達成に向け最大限の行動を引き出し、常にその行動が目的達成に十分であるかをチェックしていきます。このことにこだわりつづけなければ、期待した効果はなかなか出てきません。マネジメントの活動もまったく同じであり、担当する組織の活動目的を認識し、その目標達成に集中すれば、必然的に「怖い人」にならざるを得ないと考えています。

 現在、日本企業の様々な問題が取りざたされていますが、このような不調のひとつの理由が、社内に「怖い人」が少なくなってしまったことにある、と考える今日この頃です。例にあげさせていただいた会社でいえば、社内全ての会議が、時間どおり、全員が参加して行われる状態が、ごくあたりまえのことになったとき、私達のコンサルティングの目標が達成される、と感じております。
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