コラム「研究員のココロ」
国際化と都市再生がもたらす地域経済活性化の方向
2003年01月13日 河野 俊明
地域経済に係わる重要なファクターとして「国際化」の進展がある。一方、「都市再生」もまた、地域経済の活性化を考えるうえで重要なキーワードになっている。そして、この「都市再生」と「国際化」とは分けて考えることはできない。都市再生によって国際化の潮流に対応し、地域経済の活性化を図る方向性の提示とその実行が、今求められている。
地域経済の低迷は、東アジアの経済発展などによって国際間の競争が激化し、地域経済をとりまく状況が大きく変化したことに起因している。近年では、中国などにおいて低価格で品質の良い製品の量産技術が確立されたことで、国内製造業の多くの分野において比較優位が次第に失われつつある。
東京は、企業等の経済効率性を追求した結果、金融・経済の中心都市として発展し、構造変革を続けているが、それは国内各地から人的・経済的なエネルギーを絶えず吸収することで成り立っている。そのために、地方の経済においてはこうした変革のエネルギーが絶対的に不足しており、旧来型の産業構造から脱却できずにいる。
地域経済において、国際化は20世紀から21世紀にかけての大きな潮流である。地方の都市・地域が、こうした動きに適切かつ迅速な対応を図らない限り地域経済の活性化は困難であり、そのためのエネルギーをいかにして生み出すかが課題となっている。量的・質的にまだまだ低いレベルにとどまっている対日投資や知的人材の国際交流、外資系企業の東京偏在、国際観光客の受入れ体制の遅れ、などが地域経済の低迷に及ぼしている影響も大きい。
「地方への機能の分散」によって「国土の均衡ある発展」を図るというこれまでの国土政策は、大規模な工場や大学を都市部から周辺の地方部に追い出す一方で、中枢・管理などといった機能の東京集中をもたらした。国際規模での都市間競争が一段と激しさを増す中で、製造機能から中枢管理機能までを失いつつある多くの地方都市などは、その競争力をますます低下させるおそれがある。地域における主要な都市が活力を失うことによって、これまで都市と周辺部との間で形成されていた産業ネットワークまでもが徐々に崩壊し、地域経済全体が活力を失いつつある状況となっている。
これまでの地方分散・過疎地域重視の国土政策を見直す流れが、今日政府のいう「都市再生」を通じた「構造改革」、さらには数々の都市再生プロジェクトにつながっており、「都市再生」は、現在の日本経済、さらには地域経済の活性化を考えるうえで重要なファクターとして位置づけられる。都市には多くの社会基盤、産業基盤等が既に整備されている場合が多く、またその内部には多くの住民を抱えて魅力的なマーケットを形成していることから、都市生活者にとってはその利便性のゆえに暮らしやすく、起業家などにとっては少ない投資で多く成果を得ることのできるチャンスにあふれたところであるといえる。わが国経済の停滞感を打破するうえで、都市への期待感は一層高まりつつある。
地域が「国際化に対応する」とは、海外の企業や資本、技術や人材についても積極的に受け入れることによって、グローバルな競争関係と協力関係を新たに構築する中から、地域の発展、生き残りの道を模索することを意味する。そのためには、地方自治体や地元企業が自らの長所や強みを再認識し、これに磨きをかけ、国際的な水準にまで高めていく努力が必要となる。
また「都市再生」とは、限られた資金や資源を都市部に投入し、これまでの都市ストックと民間の力によって都市の活力を回復し、地域発展の牽引力にしようとするものである。したがって、都市の内部において、活力の源となるべき企業や人的資源をひきつけるための「基盤の整備」や企業や人材を受け入れるための「しくみ・体制の構築」が行われる必要がある。
そして同時に、今後の都市再生を考える場合に「国際化」といった視点は必要不可欠なものである。つまり、都市ストックにおける利用の効率性を追求するにあたっては、世界にも通用する、すなわち国際水準での「都市基盤の整備」や「しくみ・体制の構築」が行われない限り、海外からはもちろん、国内からも企業や人材を吸引することは困難であり、民間活力の導入も進展しないということである。
国際化と都市再生によって地域経済を活性化させるための方向として、第1に、規制緩和の促進、法制度の改革、商慣習等の是正、産業インフラの利用にコマーシャルマインドの導入などによって高コスト構造を是正し「都市における投資収益性の向上」を図ること、第2に、地域内における「競争」と「連携」、産学官の「協力」と「協調」などによって効率的で国際水準の「産業立地・育成のための都市基盤の整備」を実現すること、第3に、多様な就労形態や労働力の導入や国際ビジネスインキュベーションの形成、人材マネジメントの改革等によって知的人材の集積を促進し、さらには文化・アミューズメント等の多様な産業振興等を図ることによって「人的資源の拡大」を図ること、第4に、大学が中心となり地域に固有の知的資源を事業化に結びつけることで「技術進歩の持続力を確保」すること、第5に、都市居住のための環境整備、快適な活動空間としての整備を進めることで「都市の快適性=クオリティ・オブ・ライフの再構築」を図ること、そして第6には、「新たな都市イメージの形成」を地域経済活性化の戦略として位置づけ、これを地域全体として推進すること、などの重要性を指摘しておきたい。