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コラム「研究員のココロ」

株式公開の鍵となるビジネスプランの重要性

2002年11月04日 手塚貞治


 「株式公開をしたいのだが」というご相談が、私共のもとに日々寄せられている。多くの中堅・ベンチャー企業にとって、株式公開は1つの夢であり、それを目標としている企業は潜在的には相当な数に上るだろう。実際、規模も業種も業績も、さまざまな会社から相談が寄せられてくる。


 その際の第一声は、次のようなものが多い。


「管理体制を整備したい」

「組織体制を固めたい」

 つまり、「形」を整えたいというニーズである。株式公開の準備と言えば、管理体制や組織体制を整備することと思い込んでいる方が、実に多い。もちろん、それは間違いとは言えない。事実、株式公開を検討している会社は、事業は好調だが、成長に比して管理体制が追いついていないというケースが多いからである。


 確かに公開には一定の基準が定められており、それをクリアすることが公開の要件である。しかしだからといって、まず「形」から入っても「木を見て森を見ず」ということになりかねない。


 私共は、公開準備においても事業の「中身」を重視しており、従来から一貫して「まずはビジネスプランを固めることが第一歩です」と申し上げてきた。それを理解していただけない経営者もおり、「ビジネスのことは、コンサルタントより自分がいちばん良く分かっている」という態度を露骨に出されることもある。それだけが原因というわけではないが、往々にしてそうした会社は公開に至っていないことが多い。


 なぜだろうか。株式公開とは、不特定多数の投資家から選ばれ、買ってもらえる会社になるということだからである。何をいまさら、と思われるかもしれないが、株式公開を目指されている経営者で、このことを本当の意味で認識されている方は意外に少ない。


 投資家の立場に立ってみていただきたい。約3,700社ある公開企業の中から、将来の成長性を見込んで銘柄を選定するわけである。公開企業となった段階で、日本中の優良企業と日々比較検討される状況となる。したがって、未公開企業として成長してきた従来とは、本質的に異なるステージに立つことになる。公開後の成長戦略づくりという事業の「中身」の再検討が非常に重要であり、管理体制という「形」はその次の話になるということに気づいていただけよう。


 したがって、将来的な成長性を投資家にアピールできる形で表現することが必要である。つまり「ビジョン」や「戦略」や「経営計画」という形で明文化していくことである。経営者の頭の中に素晴らしい事業アイディアがあって、「私の頭の中にそれがあるのだ」と言い張ったところで、第三者の証券会社や投資家は相手にしないだろう。


 私が株式公開において「ビジネスプラン」の重要性を訴えるのは、こうした理由からである。現に新興企業向け市場(店頭ジャスダック、東証マザーズ等)が整備され、公開審査上でもビジネスプランが重視されるようになっており、この主張は市場サイドからも認められつつある。


 「株式公開」を念頭においた段階で、ビジネスプランを再検討し、確固たる成長戦略を築かれることを切にお勧めする次第である。
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