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富士山の周辺には富士五胡や樹海を始めとする豊かな自然があります。それらを育む自然の循環を感じられた時、...
2009年11月25日 井熊均
「創発戦略センター」所長の井熊均です。(2009/11/25) | |
忍野八海(おしのはっかい)は豊かな水資源を身近に感じられることで多くの観光客を集め、この地域の名所のひとつとなっています。富士の頂に積もった雪は陽光に溶け、岩石や土を通り、浄化され忍野の清水となって裾野を潤します。それに要する期間は実に79年にも及ぶと言われます。我々の目の前に湧き出ている水は日本が欧米列強に抗して富国強兵の道を直走っていた時代に富士の頂に舞い降りたことになります。自然の深遠さに畏れ入るばかりですが、このことは21世紀初頭を生きる我々が世紀末のこの地の豊かさに重大な責任を持っていることを意味しています。 寒暖を克服し、月に人を送ることができでも、人間社会が自然の壮大な循環に支えられていることは原始の時代から何ら変わることはありません。人間社会はサバンナのせせらぎで水を飲む野生動物の群れと変わらない移ろいやすさを内包しているのです。範囲を限れば自然の脅威から隔絶した世界を作ることはできるでしょうし、それを科学の力と言う人がいるかもしれません。しかし、特定の範囲の特定の環境は周囲にバランスの崩れを押し付ける、創世記に出てくるノアの箱舟とは全く逆の、未来無き排他的なカプセルでしかありません。自然の循環を失っても科学の力で人間が生きていけると思うのは驕りに満ちた妄想に過ぎないのです。 忍野の清水と雄大な富士の風景を見て改めて思ったのは、地球環境には全体均衡しかあり得ない、ということでした。 | |
[ Ikuma's Photo ] [写真上]忍野八海の湧き水です。 |