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2010年米欧経済見通し
-最終需要の持ち直しは困難。米欧ともに本格回復に至らず-

2009年11月18日

【要 約】

1.米国・ユーロ圏景気は、2009年春以降、①在庫調整の一巡、②景気対策効果の顕在化、③新興国向け輸出の予想以上の拡大、④金融市場の安定を背景に、一部で持ち直しの動き。もっとも、足許での景気持ち直しは、主に政策面での下支えによるもの。

2.一方で、米国では、雇用者数がペースこそ鈍化したものの減少が持続。金融不安も完全払拭には至っておらず、住宅市場の調整も途半ば。ユーロ圏・英国でも、雇用の悪化に歯止めがかかっていないほか、住宅価格調整は、米国以上に遅れている状況。総じて実体経済は厳しさが残存。

3.先行きの米欧景気を見通すに当たり、共通のカギとみられる①GDPギャップ、②政策効果の行方、③金融面の状況、の3点について、個別に検討。

(1)米国
 ①GDPギャップは、足許▲6%前後と大幅な需要不足に陥っており、2%を大きく超える成長が持続しなければ、失業率の顕著な低下が見込めず。一方、製造業の稼働率が足許持ち直しているものの、設備投資(除くIT投資)増加を促す稼働率水準への早期回復は困難で、設備投資の減少は長期化。
 ②09年7~9月期のGDPを押し上げた自動車買替支援策は、需要の先食いにすぎず、雇用悪化やバランスシート調整が続くなか、今後の反動減は不可避。他の政策効果についてみても、個人減税、インフラ・環境投資は、2010年初にピークを迎える見込みで、景気押し上げ効果は減衰へ。
 ③商業用不動産価格は下落が加速。商業用不動産向け貸出は、今後順次満期が到来する一方、金融機関の貸出態度は依然慎重で、先行き焦げ付き増加のリスク大。その場合、同貸付のウエイトの高い地方金融機関を中心に、金融不安が再燃する可能性も。

(2)欧州
 ①ユーロ圏では、GDPギャップが▲6%台にまで拡大。GDPギャップと失業率の関係を踏まえると、ユーロ圏失業率は先行き11%前後まで上昇する見通し。一方、今後、順調な生産持ち直しを想定しても、設備投資を誘発する稼働率80%まで持ち直すのは、2014年以降となる見込みで、当面設備投資の増加は展望できず。
 ②欧州では、新車販売支援策は奏効しているものの、失業率の悪化が続くなか、年末から2010年初にかけて支援策が終了すれば、反動減が顕在化する見込み。一方、失業率上昇回避に向け、早晩追加の景気対策策定を余儀なくされる公算ながら、域内各国の財政収支が大幅に悪化しており、景気を牽引するだけの規模にはならない見通し。
 ③ユーロ圏金融機関の非金融法人向け貸出は減勢が拡大。企業倒産件数、個人破産件数の増加により、今後も不良債権問題が金融機関の経営を圧迫し続ける公算。とりわけユーロ圏金融機関は、欧州新興国向けの債権額が大きく、今後不良債権問題が深刻化する懸念。ユーロ圏では信用収縮が景気回復の足枷となる公算。

4.以上を踏まえ、各国・地域経済の見通しは以下の通り。
 イ)米国:2010年の米国経済は、大幅なGDPギャップを抱えるもとで、雇用や投資の本格回復は見込み難く、極めて停滞感の強い状況が続く見通し。政策効果の息切れが顕在化する年前半に再びマイナス成長に陥る見込み。一方、今後予想される新たな景気対策が年後半の景気を下支え。
 ロ)欧州:ユーロ圏では、大幅なGDPギャップを抱え、雇用と投資の持続的な持ち直しは困難で、政策効果が一巡する2010年央にかけて再びマイナス成長となる見通し。英国でも、家計のバランスシート調整・雇用悪化、等を背景に、2010年入り以降景気は再び弱含む見通し。

5.上記見通しに対するリスクは、未曾有の水準に拡大する米国財政赤字を背景としたドル暴落・原油をはじめとした国際商品市況の高騰。先進国では所得創出力が低下しているだけに、追加の所得流出により内需の低迷が一段と深刻化する恐れ。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社 日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター 牧田
TEL : 03-3288-4244
E-mail : makita.takeshi@jri.co.jp

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