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25%削減を成長の契機に

2009年10月27日 松井英章


鳩山政権は、2020年における温室効果ガスの排出量について1990年比で25%の削減(2005年比で30%削減)させることを目指すと表明しました。麻生政権が提示した中期目標は2005年比で15%減でしたから、2倍の削減を目指すことになります。勇気ある決断ということで、国際社会からは喝采を浴びましたが、国内の経済界からは多数の批判の声が寄せられています。省エネの進んだ日本は、1トンあたりのCO2の削減費用が欧米諸国と比べて際立って高く、日本の高い削減目標は産業競争力を削ぐというのがその主な理由です。鳩山政権が、その実現に向けた道筋をまだ明確に示していないことにも批判があります。



その批判に応えていくためには、「これは耐えるだけの25%でなく、成長の鍵を握る25%なのだ」ということを、明確に打ち出していくことが必要だと思われます。2008年11月~2009年4月に開催された麻生政権下の中期目標検討委員会で、日本エネルギー経済研究所や国立環境研究所が、削減目標レベルに応じて必要なCO2削減技術対策の内容について提示しましたが、そこで示されているものは、その技術対策の導入量としては相当なものです。例えば太陽光発電についていえば、現在の日本の累積導入量は概ね200万kW程度ですが、国立環境研究所は25%削減のためには2020年時点で7900万kWもの導入が必要と提示しました。これをコスト増と見なすだけでは、相当に苦しい話となるでしょう。ただ、実際にこの量が入るかは別にして、相当量を入れていくとなると、新築だけでなく既存の住宅や建築物にも軽量で負担なく設置できる製品の開発、効率的な施工方法の開発、電力系統に組み入れる場合の障害の克服方法確立など、様々な分野でブレイクスルーを実現させなければなりません。そこで培われたノウハウは、他国での都市部における太陽光発電の大量導入に活かすことができ、日本の関連産業の競争力もいっそう高まることでしょう。



これまでも、自動車の排ガス規制やオイルショックなど、当初は産業界の負担になると思われたことを日本企業が世界でいち早く克服することで、高いシェアを獲得するに至りました。25%減も、日本の産業界にとって世界一高い壁となりましょうが、その壁を世界で一番早く乗り越えたとき、まだ他国が見たことの無い地平が広がっていると考えるべきでしょう。日本の産業界、日本社会のグランドデザインを根本から引き直す大きな契機として、この25%減を考えていかなければならないと思います。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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