2004年09月14日 |
2004~2005年度改訂見通し |
2005年に向け、景気は減速傾向 |
(9月10日発表の4~6月期2次速報値を受けて足元修正を行ったもの。前回8月18日発表時点に比べ2004年度の実質GDP、2004・2005年度の名目GDPを若干下方修正したものの、先行きのシナリオに変更はない) |
(1)2004年内を展望すると、以下の2点を背景に、景気は巡航速度に向けてやや減速しつつも、回復傾向が持続する見通し。 |
ア) | 設備投資の回復傾向が持続。2004年前半は増勢が鈍化したものの、機械受注や各種設備投資計画では製造業に牽引されて大幅増が示されていることから、年後半にかけて再び増勢が強まる見通し。 |
イ) | 個人消費は、所得環境の悪化に歯止めがかかり、消費マインドも緩やかに持ち直すもとで、全体的に底上げが期待できるほか、高齢者世帯を中心に比較的価格の高い商品にも動意がみられ始めたことから、堅調を維持する見込み。 |
(2)2005年入り後は、以下の3点から景気は減速する見通し。 |
ア) | 欧米向けを中心に、輸出の増勢が鈍化。輸出数量に先行しているOECD景気先行指数はすでにピークを越えており、先行きの輸出の増勢鈍化を示唆。 |
イ) | 原油価格の上昇が、ガソリン価格上昇を通じて家計の負担増となるほか、最終製品価格への転嫁が困難ななか、コスト増を通じて企業収益の回復ペースも鈍化。 |
ウ) | 設備投資も、製造業では輸出・鉱工業生産に半年程度のラグをおいてペースダウンするとみられるほか、非製造業でも首都圏再開発案件の一巡などから回復力は脆弱にとどまる公算が大きいことから、2005年末にかけて増勢が大幅に鈍化する見通し。 |
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(3)もっとも、以下の3点を勘案すると、景気が大きく落ち込んでいく事態は回避され、1%台後半の成長ペースは維持される見通し。 |
ア) | 中国経済の成長持続により、輸出が減少に転じる可能性は小さいと判断されること。中国の引き締め策は、地場企業による過剰設備投資など、一部産業にターゲッ トを絞ったものであり、生産活動全体の抑制を目的としたものではないため、引き締め策がわが国輸出に与えるマイナス影響は限定的。 |
イ) | 電子部品・デバイスの生産調整は、[1]最終製品がコンピューター・通信機械から民生用電子機械まで多様化していること、[2]最終需要地が米国に加えアジア地域の牽引力も強まっていること、[3]製品自体も汎用品から高付加価値製品にシフトしていること、などを背景に、2001年のように深刻化することはないとみられること。 |
ウ) | 個人消費が底堅く推移すること。高齢化に伴い消費性向が高い水準で推移することに加え、可処分所得も、[1]社会保障給付の増勢が続くこと、[2]人件費調整が終了し、自営業者の減少にも歯止めがかかるため、雇用者報酬・混合所得が下げ止まりつつあること、[3]金利低下・株価下落による財産所得の減少も止まったこと、を背景に、緩やかな増加に転じていること。 |
なお、今回の予測では、定率減税の廃止・縮小の影響を織り込んでいない。仮に定率減税が半減された場合、個人消費が0.45%減少すると試算され、2005年度の個人消費・景気を大きく下押しする恐れ。 |
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