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2004年09月10日

東大阪を関西の産学連携拠点に

【提言】

東大阪型産学連携モデルの確立を
東大阪で求められるのは、中小企業と大学等との産学連携モデルである。中小企業は 経営資源も限られ、産学連携にも不慣れである。
一方、経営者が前面にでることで、研究開発の目的を明確にし、良好な信頼・協力関 係を築くことも出来る(図表23)。産学連携につい ては始まったばかりで、解決されなければならない課題も多いが、以下に、東大阪の 中小企業を検討した結果に基いて5項目を提言する。

(1) 大学への期待
法的な整備など産学連携の基盤が整備され、2004年の国立大学の独立行政法人化によ る外部研究資金獲得への関心の高まりなどから、産学共同研究件数、TLOの特許出願数等は急速な伸びを示している。中小企業と大学との共同研究数も大きく伸びており、産業集積地である東大阪の企業も、産学連携のパートナーとして大学への期待は大きい(図表24)。
ただ、大学においても、従来は研究室単位の連携であり、かつ、大企業との連携が多かったことから、中小企業を相手とする産学連携は緒についたばかりと言え、これからの努力に負うところが多いと考えられる。 中小企業と大企業では、連携に求める内容が異なる。大企業は自社内に研究開発の能力を持っているため、大学との連携の成果を、時間をかけて実用化しようとする場合が多い。中小企業は研究開発について、絞ったテーマで具体的な成果を期待する場合が多い。したがって、大学は共同研究等のスピード、コスト等の面で、対応を考慮する必要がある(図表25)。
(2) ポストドクター等を介した産学連携策
中小企業が産学連携を行う場合に課題となるのが、自社内の研究者の層が薄いことである。従来、大企業では研究室の卒業生を採用することで共同研究等を円滑に行ってきた。東大阪の優良な中小企業にも大学院卒者が入社するようになってきたが、まだ、数は極めて少ない。大学とうまく連携をとれる研究者が、内部にいないことが、中小企業が産学連携をうまく行えない理由の一つである。
近畿大学では大学院生の給料額と等しい額の研究費を企業に払う形で共同研究と大学院教育を同時に行うプログラムを始めている。現在の産学連携は、企業が大学に出向くかたちをとる場合が多い。しかし、これからは、大学の方から企業に近づき、連携を進める仕組みも必要である。企業の課題解決のために、大学がポストドクター(注)などをフルタイムで2年程度派遣し、大学及び公的研究機関は研究指導など全面的なバックアップを行う仕組みを作ることが必要である。(注)博士号を取得した大学院生が、正規のポストにつくまでの間になる、一時的な研究員。
(3) 研究成果から事業化までの間をカバーする仕組みの必要性
産学連携の研究成果が事業化するまでの間には各種の中間試験や、試作研究などが必須であり、長い時間と多額の資金を必要とする場合も多い。これが、折角の研究成果が製品化、事業化にまでたどり着けない一因となっている。
東大阪では、大阪産業大学の山田教授が自らの持つ特許を中小企業に使いやすい段階まで開発研究するベンチャー企業((株)オーエス ユー)を大学と共同して設立し、大学のシーズの中小企業での適用分野まで考慮して提案している(図表26)。また、中小企業側でも、(株)イオックスのように、大学を活用して研究開発を行った後、東大阪の中小企業に新しい製造方法や新素材を普及させ、地域産業を高度化させることを考えている例もある。このようなシーズを活用できる地元企業とのマッチングなど、地域での支援が望まれる。
(4) コーディネート機能の強化
産学官連携を推進するにあたって、中小企業と大学等をつなぐコーディネーターの役 割が重要である。コーディネーターの業務の範囲は幅広く、技量は個々人の資質による差が大きいため、優秀なコーディネーターは数が少なく、短期間で適切な人員を集めることは難しい。東大阪市においては、クリエイション・コア東大阪を中心に、市内企業を熟知した専門家が集まっており、極めて評価が高い。
しかし、クリエイション・コア東大阪第2期施設が完成し、更に支援活動の活発化が 望まれることから、現在のコーディネーターに続く人々を見出し、育成する必要がある。

(財)新産業創造研究機構(神戸市)は登録制により、企業OBを主体に約120人の コーディネーター(NIRO技術移転アドバイザー)を擁している(図表27)。機械、化学、医薬品・福祉・介護など技術12分野に加えて、 経営、マーケティング、法律の専門家も約20人おり、企業ニーズ、シーズの発掘から、特許流通、技術移転のほか、技術移転後のライセンシー企業における製品企画、製品開発、技術 高度化過程までをワンストップサービスで提供している。登録人数が多いため、種々の相談に対応することが可能となり、優秀なコーディネーターに仕事がリピートするため、スキルが向上し、業績の上がる結果になっている。コーディネート機能をより強化するために、登録制と仕事に応じた出来高制を組み合わせたこのような仕組みを導入することが望ましい。

地域金融機関が、コーディネート機能を果たすことも重要である。地域金融機関は企業のことをよく知っており、支店も多いことから、日常の接触のなかで中小企業も相談しやすい。大学にとっても、企業の財務面も熟知しており、共同研究資金面の支援も期待できることから、地域金融機関を通じたコーディネートは成約確率が高いものとなっている。
(5) 工場再配置促進法適用の廃止
産学連携等により、地域が制度的に企業の高度化や創業を支援するのは、その後の企業の成長により、地域経済や雇用に好影響を与えることを期待するからである。したがって、規模が拡大しても工場がその地域に立地し続けるかどうかが重要な関心事である。2002年には大都市圏での工場立地を制限していた工場等制限法が廃止されたが、東大阪市の産業集積が今後ともわが国のものづくりに重要な役割を果たすことを考えれば、東大阪地域での工場再配置促進法(1972年法律第73号)の適用は廃止すべきである(図表28)。
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