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2004年07月02日

04年年金改革の評価と課題

【要 旨】
1.04年改革は負担抑制の一方多くの課題を残す
 04年改革は、将来の保険料負担の上昇幅を抑制した点において評価。一方、国民年金空洞化への有効な対策不在、保険料の引き上げと経済との整合性への配慮欠落、短時間労働者の厚生年金適用要件緩和の先送り、および、国民の信認がないままの現行の積立金運用の継続など極めて多くの課題を残している。
 国会審議において、議論は掘り下げられず、むしろ後退の感。それは、国民年金問題に顕著。誤った現状認識に基き、問題の多い現行制度が肯定された。すなわち、国民年金は自営業者の年金制度であるとの政府・与党の認識のもと、その所得捕捉の困難さから、現行制度における定額保険料などは肯定されると結論付けられた。
 民主党の独自案提出も今国会の特徴。同党案については、保険料と税の役割の明確化など評価すべき点がある一方、同案における「最低保障年金」がスウェーデン型の保証年金なのか、あるいは、基礎年金なのか概念が曖昧であるなど本質的な課題を残している。
 国会審議において、総じて、与党はみるべき議論もないまま、基礎年金の給付水準を15%カット。民主党は、基礎年金の最低保障年金への作り替えを提案。その結果、両者以外の有力な選択肢、すなわち、基礎年金の充実という選択肢が国会審議の場において不在。

2.空洞化の実態へのアプローチ不可欠

 国民年金の実態をみれば、現在、自営業者は加入対象者の4分の1に満たない。もはや自営業者の年金ではない。雇用者、自営業者、失業者、学生などが混在。従って、定額の保険料を肯定する理由は希薄。また、国民年金空洞化の問題は、単なる納付率アップの問題ではない。
 厚生年金に関しては、空洞化の定量的な把握が殆ど行われていない。保険料率を引き上げ続けるシナリオは、本来、経済との整合性が十分に図られるべきであり、空洞化の実態把握は、その基礎資料であるはず。
 国税庁の「給与実態調査」と被用者年金制度の被保険者数(除く公務員)には2,000万人の乖離。このうち、312万人から926万人が厚生年金の空洞化であると試算される。また、制度上給与所得者でありながら、被用者年金の被保険者となっていない人も問題なしとしない。厚生年金の加入要件が曖昧な上、ハードルも低くなく、かつ、法律としても不備が多いため。

3.政策の選択肢
 国民年金、厚生年金の空洞化の実態、および、世代間格差の是正など他の政策課題推進も併せ考えれば、基礎年金の消費税化は有力な選択肢。他にも、諸外国の事例に学べば、選択肢は存在。
 例えば、英国では、99年から、国民保険料を課す際、賃金から一定額を控除した後の額に課すこととした。このことによって国民保険加入のハードルを引き下げた。自営業者に対しても、類似の措置を行った。また、スウェーデンでは、失業や育児など所得の喪失あるいは低下の際、年金受給権において不利な扱いにならないよう、中央政府が財政的な措置をとっている。英国の取り組みをわが国にも応用すれば、例えば自営業者の保険料を6.5%の定率部分と8,000円の定額部分の2本建てとすることは可能。
 正確な現状認識と適切な手段の選択が行われていない今国会は極めて問題が多く、引き続き予定される議論の際の反省材料とされる必要。
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