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2004年05月12日

政権公約(マニフェスト)検証・第1回大会 株式会社 日本総合研究所 発表要旨について

内閣・与党による政権公約の達成状況の評価
1.遅延する構造改革
 構造改革の進捗ペースは緩慢。進展がみられる[1]官から民へ、[2]国から地方へ、[3]安心できる国民生活、の主要改革3分野についてみると次の通り。
(1) 特殊法人改革では、独立行政法人への組織変更が大半で改革の効果は限定的。道路公団改革では、新規の道路建設への歯止めがかからず。
(2) 三位一体では補助金削減が先行し、国から地方への権限や財源の移譲が遅延。特区では、教育・医療分野への株式会社参入に厳格な条件が付与され、実質的に競争阻害。
(3) 年金改革では、引き続き給付水準の削減と負担の増大という従来路線が踏襲。国民の安心を確保するには依然至らず。
 もっとも、こうした指摘には根強い反論。
(1) 道路公団改革では新規の道路建設こそ地域経済再生の鍵であり、経済成長力を高めて収支改善を目指すのが本道との批判。郵政民営化ではユニバーサル・サービスの維持・確保、地域経済にとって雇用保全は重要な焦点との指摘。
(2) 三位一体では、深刻な財政状況下、国と地方が痛みを分かち合い、国債を地方移管すべしとの考え方も。一方、特区については、社会的規制の観点から安易な見直しや例外措置は将来に重大な禍根を残す恐れとの懸念。
(3) 年金改革では、制度のサステナビリティーを確保するには、状況変化に応じて機敏に見直し、それによって初めて国民の信頼が醸成との見方も。
 今日、改革を巡る議論の混乱は、改革が進み、個別具体的な問題が俎上に上る段階となった結果、制度適用の条件や技術的問題が焦点となったという側面も。しかし、現下の議論が総じて改革の是非について行われている点を踏まえてみれば、むしろ、マニフェストの表現が包括的で具体性に欠けていたため、対立する見解の並存を許した側面は否定できず。さらに、そもそも改革の意義・目的についてのコンセンサスの形成が不十分であったことが、混乱の根因。

2.構造改革の目的
 そもそも、構造改革の意義・目的は何か。西欧主要各国の経緯を整理すると、戦後の高度成長による大きな政府から、低成長時代に即した小さな政府への転換、とりわけ中央政府の縮小であり、長期間にわたる持続的な取り組み。
(1) 民営化は、80年にイギリスで始まり、次いで86年にフランスへ飛び火、ドイツでは90年代に入って本格化。イギリスの行財政改革の骨子はエージェンシー化と市場テスト、PFIとPPPsの4点。わが国財政投融資類似の制度があった唯一の先進国であるフランスでは、86年以降、出口機関の徹底した整理縮小を行った後、今日、入口機関の検討に着手。
(2) 地方分権は、81年にフランスで始まり、97年以降イギリスでも始動。目的は地方経済の再生・復活。成否は権限と財源の移譲如何。フランス2003年憲法では権限移譲と財源措置がセットであることが明記。
(3) 年金改革は、80年代イギリス、90年代に入り欧州全域に拡大し、99年スウェーデンが改革断行。各国では、公的年金の役割を限定し、財政負担が軽減される一方、雇用拡大・経済再生に向け、企業負担も軽減。

3.西欧各国の構造改革断行の要因
 西欧各国の構造改革は深刻な経済停滞が発端。70~80年代では、二度にわたる石油危機に加え、日独経済が飛躍的成長を遂げるなか、製品開発競争からの脱落や産業空洞化問題。90年代入り後、冷戦終了によって中国や東欧諸国が急速に台頭し、その結果、成長スピードが一段と低迷。すなわち、西欧各国の構造改革は、民間活力の復活・創出・発揚を通じて競争力の回復・強化を目指す取り組み。

4.今後の課題
 2001年以降、わが国失業率は英仏が改革始動時の5%水準へ。マクロ的にはこのところ最悪期を脱する兆しがみられるものの、企業間競争は依然厳しく、失業率は高止まり。今後を展望すると、①高付加価値分野でも中国や東欧諸国が飛躍し競争は一段と激化する一方、②租税や社会保障など、公的負担の軽減や規制緩和を目指す各国政府の取り組みは一層拡大し国際的な制度間競争が厳しさを増す見込み。加えて、わが国は、他国に例を見ないスピードで少子高齢化が中期的に進むなか、時間的余裕は小さく、諸外国を上回るペースと規模での改革断行が急務。改革成功に、まずもって必要なポイントは次の3点。
[1] 改革目的と必要性、時間的制約の再確認
これによって、現在、散見される不毛な議論に終止符を打ち、改革推進に国民各層の力を集中させることが出来る。
加えて、経済に明るさが芽生えるなか、痛みを先送りしようとする動きを 阻止し、経済成長を改革力増大に結び付けるために不可欠。
[2] 優先順位の設定とロールモデルの提示
改革成功には、目的や時間的制約の再認識だけでは不足。 着実に一つひとつ成功を積み重ね、現実に改革メリットを享受することで 改革に総力を結集し、推進力を強化することが可能。
そのためには、優先順位を決めて一つひとつクリアーしていくこと。 加えて、成功の具体的事例を開示し、改革への支持強化も重要。 こうした観点からみると、特区の成功例は格好のプロジェクト。
[3] 推進プランの策定
個別の改革対象とマイルストーン、改革手法や財源、推進主体を明示し、さらに改革のメリットや効果を具体的に示すべき。
それによって、国民の意識や理解が深まり推進力が強化されると同時に、推進過程および事後でのチェックが可能となり、知恵やノウハウが転用。
 マニフェストは、わが国民主主義政治の進化、構造改革の推進の強力なツール。もっとも、それが真価を発揮するには、少なくとも上記3点がマニフェストに盛り込まれる必要。こうした観点からみると、わが国では漸くマニフェスト型政治スタイル実現への取り組みが緒に就いた段階。一段の進展が切望される。
以 上
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