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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.25,No.96

ASEAN・インドとの経済関係拡大を目指すオーストラリア ―資源・エネルギー、教育サービス、金融サービスにおける事業動向―

2025年05月13日 熊谷章太郎


1970年代ごろまで、オーストラリアは政治・安全保障を中心にアジアに関与してきたが、その後は様々な分野でアジアとの関係を深めている。経済面では2010年代半ばにかけて、中国をけん引役に東アジアとの貿易関係が拡大したが、米中対立の激化などを背景に中国の政治・経済を巡る不透明感が高まっている。こうしたなか、オーストラリア政府は、貿易・投資先の多様化に向けて、中長期的に底堅い成長が続くと見込まれるASEAN・インドとの経済関係の強化に向けた外交を活発化させている。

オーストラリアのASEAN・インド市場での事業展開を見ると、資源・エネルギー産業では、当面の間は従前どおり石炭や天然ガスの輸出が経済関係拡大のけん引役になり続けるが、各国の脱炭素社会への移行やオーストラリアのガス不足などを受けて化石燃料の輸出は中長期的に縮小に向かうと見込まれる。そのため、オーストラリアは、EV(電気自動車)や太陽光・風力発電装置などに用いられる重要鉱物資源やグリーン水素の輸出を拡大するとともに、投資を通じてASEAN諸国やインドで資源の採掘、精錬、加工事業を拡大することを目指している。

資源・エネルギー産業に次いで輸出規模の大きい教育サービス産業では、ASEAN・インドからの学生の受け入れ拡大に向けて、留学関連情報の提供体制の強化、各国の高等教育機関との連携強化、奨学金制度の拡充、などの取り組みが進められている。一方、2024年以降、オーストラリア政府は、国内の住宅不足やそれに伴う住宅価格の高騰に対応するため、留学生の受け入れ規制を厳格化しており、それが教育サービス輸出の拡大を制約する。こうした状況下、今後、各種高等教育機関は、海外キャンパスの設置やオンライン教育輸出などを通じた海外事業展開を模索すると見込まれる。

金融サービス産業におけるASEAN・インドとの関わりでは、大手商業銀行による融資業務の拡大に向けた新たな拠点設置などの動きは見られない一方、業務効率化に向けてイノベーションセンターを設置する動きが出始めている。また、政府の支援を受けて、フィンテック分野のスタートアップ企業が進出機会を模索する動きが見られる。金融サービス産業におけるデジタル技術は他産業にも応用可能であるため、今後、他産業でもデジタル化を軸とする事業展開が広がっていくかが注目される。


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