リサーチ・アイ No.2024-106
2024年の本邦社債市場の動向 ― 金融政策変更後も社債発行は増加、調達金利は上昇 ―
2025年02月13日 内村 佳奈子
2024年の国内企業の社債発行額(公募普通社債)は、15.7兆円と前年比+5.1%増加し、過去2番目の規模に。設備投資やM&A関連の資金需要が旺盛であったほか、昨年3月の日本銀行のマイナス金利政策解除以降、7月には政策金利が引き上げられるなど、金融政策の正常化局面で金利の先高感が続くなか、低金利のうちに資金調達を行う動きが活発化。
期間別の発行額をみると、昨年7月の追加利上げまで、償還期間が6~10年、11年超の中長期債の発行が増加するなど、2023年対比、総じて調達年限が長期化。「金利のある世界」に突入するなか、中長期での資金調達を進めていた可能性。また調達金利は、利上げや調達年限の長期化等を背景に、2023年対比顕著に上昇。
足元で注目される動きとしては個人向け社債の増加。金利上昇に伴い、個人投資家にとって債券での投資妙味が増すなか、昨年の個人向け社債の発行額、発行社数は過去最高を更新。もっとも、市場全体に占める発行上位企業の寡占度が著しく高い点は課題。
先行きの本邦社債市場も、企業の堅調な資金需要や、金利上昇に伴う機関投資家や個人投資家の債券運用ニーズの高まり等を背景に、発行額の増加が続く見通し。もっとも、米国と比較すれば市場規模は依然として小さく、発行体の多様化やデジタル社債といった新たな発行手段の普及を進め、わが国社債市場の拡大につなげていく必要あり。
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