リサーチ・アイ No.2024-080
高まるフランスの政情不安 ― マインド悪化や金利急騰が景気下押しも ―
2024年12月16日 朱雀愛海
フランスの政局が混迷。2025年度予算が緊縮的な内容であったことから審議が難航し、12月上旬には内閣不信任案が可決。9月に発足したばかりのバルニエ内閣は早くも総辞職に追い込まれる事態に。これを受け、12月13日にマクロン大統領が中道派のフランソワ・バイル氏を首相に任命。もっとも、議席の過半数を占める政党が不在である議会構成は変わらないうえに、フランスの政治制度では、前回選挙から1年経過するまで総選挙を実施できないことから、当面は議会が膠着状態に陥る公算大。
政局の混乱はフランス経済の回復を阻害。具体的なルートは次の2つ。第1に、不確実性の高まりによる投資や消費の手控え。フランス国民の政治への評価は急落しており、足元では企業や家計のマインドを押し下げ。今後、政治の停滞が長期化すれば、一段のマインド悪化が企業・家計の支出意欲を下押し。
第2に、財政悪化による金利急騰。市場ではフランス財政に対する警戒感が強まっており、独仏10年金利差は拡大傾向。2025年度予算の年内成立は見通せず、政府は暫定予算として前年度の予算を踏襲する特別法を適用する公算。マクロン大統領は議会の融和を図るため、共和党(中道右派)や社会党(中道左派)などの穏健派を集めて意見交換を行ったものの、社会党は憲法の発動による議会採決の迂回をしないことを求めるなど合意形成には至らず。足元では財政悪化への懸念から格付機関がフランス国債の格下げを実施。新政権発足後も予算審議は難航し、当面は財政健全化への施策は棚上げとなる可能性が高く、金利急騰リスクが増大。
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