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リサーチ・フォーカス No.2024-044

「年収の壁」10の論点

2024年11月15日 西沢和彦


「年収の壁」は、制度が労働需給を歪めているとしてかねてより問題視されてきた。とりわけ、新型コロナ禍後の消費需要回復に伴う人手不足を背景にその影響は深刻度を増し、2023 年 10 月「年収の壁・支援強化パッケージ」が政府から打ち出された。2024 年 9 月の自民党総裁選では複数の候補が年収の壁に言及し、さらに、翌10 月の衆議院議員選挙において基礎控除等 103 万円の 178 万円への引き上げが国民民主党から公約として掲げられ、同党の躍進を受け政治の重要争点として注目を集めている。ただ、根本的な対応は先送りされ続けているうえ、「年収の壁」は社会保険制度にもっぱら起因しているにもかかわらず、税制に由来する 103 万円が持ち出されたことにより、議論の混迷も危惧される。

本稿は昨今の議論も踏まえ、改めて「年収の壁」問題の論点整理を試みた。多岐にわたる論点のうち主要な 10 点をピックアップし、節ごとに問いを立て、それに答える形式で議論を進めた。問いは次の通りである。
(1)106 万円と 130 万円の差は金額だけか?
(2)常用雇用者の労働時間の 4 分の 3 以上という基準の意義は?
(3)「壁はない」は本当か?
(4)最低賃金引き上げで年収の壁は解消するのか?
(5)「106 万円の壁撤廃」で何が変わり、何が変わらないのか?
(6)第3号被保険者の仕組みが抱える諸問題とは?
(7)103 万円と 150 万円の壁は存在するのか?
(8)現行制度の正確な理解を求める態度は妥当なのか?
(9)問題を根本的に解決するためには?
(10)学生アルバイトの「年収の壁」対策は?

今後、期待されるのは次の点である。第1に、現行制度を所与としない議論である。現行制度を所与としたまま問題に対処しようとしても、年金制度間の公平性の棄損や制度の一段の複雑化など深刻な弊害を伴う。第2に、問題の根因は、本来税が担うべき役割を社会保険料が肩代わりしてきたことにあり、よって、今後の議論においては負担増を伴うものであっても税を俎上に載せることである。第3に、基礎控除等の極端な引き上げなどの不要な税制改正の回避である。

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