リサーチ・アイ No.2024-056
増加する高齢者の金融資産とその保全をめぐる問題 ― 認知機能低下と身寄りの減少に対して、政府と金融・福祉機関が連携してサポートを ―
2024年09月27日 下田裕介
家計金融資産における高齢者の保有が増加。試算によると、2024年6月末時点の家計金融資産(2,212兆円)のうち、6割にあたる約1,400兆円を60歳以上が占める状況。
一方、高齢者を取り巻く環境をみると、認知症や軽度認知障害(注)の患者数が今後増えていくと見込まれるほか、長寿化や家族のあり方の変容から、支える子や配偶者がいない、いわゆるおひとりさま・おふたりさまの高齢者も増加。
(注)軽度認知障害とは、認知症そのものではないが、認知症と完全に診断される一歩手前の状態をいう。
また、オレオレ詐欺や還付金詐欺といった高齢者を標的とした特殊詐欺の件数、被害額が増加。2023年の被害の認知件数のうち、約8割は高齢者が被害者。今後も認知機能が低下した高齢者を狙った金融犯罪が増加するおそれがあるなか、資産を守る取り組みの必要性は一段と高まることに。
こうした課題に対して、政府は9月13日に閣議決定した高齢社会対策大綱のなかで、福祉機関との連携や金融機関内の情報共有をはじめとする金融分野のガイドライン見直しなどを提言。金融機関では、認知症の顧客への対応として、地域包括支援センターや社会福祉協議会などとの連携を進めているが、今後も地方自治体、福祉機関をはじめとする協力先との関係を深め、高齢者に対するサポート体制を整備していくことが必要。
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