リサーチ・フォーカス No.2024-023 中小企業財務の現状と求められる金融機関の役割 2024年07月30日 谷口栄治2023年度の中小企業の経常利益は、粗利益が販管費を上回って拡大したことで、前年比+14%の増益となったほか、コロナ前の19年度と比較しても、+15%の増益となるなど、総じて回復。もっとも、円安メリットを享受しやすい大企業と比べれば、業績、景況感ともに回復に遅れあり。中小企業向け貸出残高(23年度末)は、前年比+5%程度の伸びが持続。一方、中小企業全体で保有現預金も両建てで増えており、有利子負債から現預金を差し引いたネット有利子負債は減少。債務負担を測る指標である債務残高月商比や債務償還期間は、キャッシュフローの回復を主因に改善。企業倒産件数や代位弁済件数は、コロナ前の水準を上回って増加。もっとも、小規模・零細企業の増加が多く、金額ベースでみた地方銀行の与信関係費用や不良債権比率の増加は限定的。今後の経営環境を見通せば、利払いの増大、円安・資源高や人手不足等を背景としたコストの増加は不可避。金融機関においては、以下のような対応が必要に。・競争力強化・生産性の向上を通じた中小企業セクターの経営改善・事業再生金融庁は監督指針を改訂し、金融機関に対して、資金繰り支援フェーズから脱却し、顧客企業の経営改善や事業再生支援を促進するよう要請。金融機関としては、金融、非金融の両面からソリューション力を高め、中小企業の競争力強化や生産性向上に貢献していくことが不可欠。・金利変動、為替変動リスクによるリスクへの備え金利変動や為替変動が中小企業のリスクファクターに。低金利環境が長年続いたなかで、金利環境の変化に伴う中小企業への影響を検証する必要。また、歴史的な円安が経営上の重石となるなか、為替相場の急変動に伴うデリバティブ取引の損失リスクを含め、中小企業セクターの為替リスクを検証することも重要に。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)