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リサーチ・フォーカス No.2024-019

金融機関の個人向け貸出の急増がインド経済に与える影響をどう見るか

2024年07月17日 熊谷章太郎


インドで個人向けを中心に金融機関の貸出が急増している。この理由としては、①雇用環境の改善に伴う家計の債務負担能力の向上、②デジタル技術を活用した低所得者の金融サービスへのアクセス環境の改善、を指摘できる。

個人向けを中心とする金融機関の貸出急増がインド経済に与える影響は、プラス効果とマイナス効果の両面がある。プラス面としては、耐久財消費や住宅投資の拡大、金融機関の財務状況の改善を通じた金融システムの安定性向上を挙げられる。他方、マイナス面としては、予期せぬ景気悪化時の家計の債務返済不履行リスクの上昇を指摘できる。ノンバンクの個人向け融資の約2割が無担保融資であることや、ノンバンクの資金調達の大半が金融機関からの借入に依存していることを踏まえると、無担保融資の割合が高い一部のノンバンクが経営難に陥る場合、その悪影響が広く金融・経済全般に波及する恐れがある。

潜在的な金融リスクの高まりを警戒するインド準備銀行は、リスクウエイト(貸倒リスクのある資産に対する引当金の割合)を引き上げるとともに、監督上の懸念を理由に一部の金融機関に業務停止命令を出すなど、監督態勢を強めている。今後も、厳格な規制の導入に伴う景気減速リスクに配慮しつつも、金融システムの安定性向上に向けて各種規制の見直しを進めると見込まれる。

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