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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.24,No.93

ASEAN 諸国の金融システムの課題と多国間ならびに各国の取り組み ─国際金融センターとしての地位向上を目指す日本の金融部門政策への示唆─

2024年05月10日 清水聡


ASEAN諸国では、1997年のアジア通貨危機を経て、各国が金融部門の整備に取り組み、同部門は大きく発展した。その過程では、ASEAN+3域内金融協力などの協力・協調による活動が一定の役割を果たしてきた。これらの活動において、日本はアジア通貨危機直後から存在感を発揮してきている。今後もこの活動を続けるとともに、自国の金融部門政策に取り組むうえでも、引き続き、ASEAN諸国との関係を深めることに注力すべきであろう。

ASEAN諸国の金融部門の課題としては、①金融システムの整備、②域内金融統合、③金融安定、④金融包摂、⑤インフラ・ファイナンス、⑥気候ファイナンス、⑦金融のデジタル化、などがあげられる。域内金融協力の場でも、様々な機関がこれらの課題に取り組んでいる。

域内金融統合は、①金融サービスの自由化(銀行などの金融機関による様々な形でのクロスボーダー活動の拡大)、②資本市場の整備・統合、③決済システムの統合、④資本取引の大幅な自由化、⑤域内各国通貨の国際化(クロスボーダーでの利用)、⑥域内諸国の規制・制度等の調和、が主な内容と考えられる。金融システムの統合は容易ではなく、実体経済の統合を促進する現実的な手段を議論していく必要がある。

日本は2国間金融協力にも注力してきたが、引き続き、相手国のニーズに応じた経験、知見、技術の提供を行うことが重要である。例えば、高齢化が進んでいるマレーシアでは、高齢化先進国である日本が様々なノウハウを提供する余地があると思われる。一方、インドネシアでは、より基本的な金融システム整備の必要な部分が残されている。さらに、タイでも、サステナビリティ・デジタル化・金融包摂などの課題に協力の余地があろう。

国際金融センターを目指すシンガポールの政策が成功した要因としては、①外国為替市場や資産運用業などの整備にターゲットを絞る戦略を採用したこと、②長期的なビジョンを構築したこと、③産官学が共同で政策を創出したこと、があげられる。国際金融センターとしてのシンガポールの評価は、現在も高まり続けている。

ASEAN+3などの域内金融協力、ASEAN金融統合、2国間金融協力に関し、日本は役割を強化していくことが求められよう。また、日本は、国際金融センターとしての地位を高めること、資産運用分野を強化すること(資産運用立国)などを目指している。これらにおいても、ASEAN諸国との関係強化を重視し、ASEAN諸国との共存を志向することが必要であろう。金融面でASEAN諸国とのつながりを強めることは、今後の国際通貨体制のあり方などの観点からも重要とみられる。今後、有効な取り組みが拡大することを期待したい。

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