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リサーチ・アイ No.2024-005

シンガポール主要行の2023年決算の注目点と今後の課題 ~ ネット金利収入の伸び鈍化と中国経済の悪化による信用コスト増加が今後の懸念点に ~

2024年04月12日 内村 佳奈子


アジアの金融ハブとしての地位を着実に高めているシンガポールでは、国内主要3行(DBS、OCBC、UOB)の業容が大きく拡大。ここ10年で、トップライン収益、ボトムライン収益ともに約2倍となっているほか、2023年度決算もネット金利収入の伸びを主因に、ボトムライン収益は過去最高益に。

トップライン収益の内訳をみれば、ネット金利収入は、コロナ禍で低金利環境にあった2020~21年度にかけて前年比減少が続いていたものの、直近2年間は大幅に増加。アセットの伸びは鈍化している一方、貸出金利の上昇を背景に利鞘が大きく拡大し、トップライン収入を押し上げ。

一方、非金利収益は概ね横ばいで推移。2022~23年の変動要因の内訳をみると、堅調な個人消費の拡大を受けてクレジットカード業務が堅調であったほか、ウェルスマネジメント関連の収入も総じて増加した一方、貿易関連手数料は減少。2023年は世界的に金融引き締めや高インフレの状況が続いたなかで、ASEAN域内向けなどを中心に貿易額が減少したことが背景。

2024年の業況を展望すれば、ネット金利収入と信用コストの動向を注視する必要あり。1点目のネット金利収入については、四半期別の業績をみると、同収入の伸びが足元にかけて鈍化。今後も、世界的に金融政策の転換期を迎えるなか、利鞘の縮小が続くことで、これまで業績拡大をけん引してきたネット金利収入が減少に転じる恐れ。

2点目の信用コストについては、中国景気の動向次第で増加へ転じる可能性。これまでの各行の不良債権比率は1%台で推移するなど、低水準を維持。もっとも、2023年末時点の各行の国別の貸出比率をみると中国向けが2~3割を占めている状況。不動産市場の不況や米中関係の悪化等によって、低迷している中国経済がさらに悪化すれば、不良債権や信用コストが拡大し、収益力が低下する懸念あり。

シンガポールの金融センターとしてのプレゼンスを展望するうえで、国内大手3行の業容や競争力は重要なファクターに。本邦金融当局や金融機関としても、アジアビジネスの競合という観点から、同国主要行の今後のビジネス展開を注視していく必要あり。


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