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リサーチ・フォーカス No.2024-004

公開買付制度・大量保有報告制度の見直しの方向性と今後の論点

2024年04月10日 谷口栄治


2023 年12 月、金融庁の金融審議会公開買付制度・大量保有報告制度ワーキング・グループは、公開買付制度(TOB 規制)や大量保有報告制度の見直しに関する報告書を公表。翌年には同報告書を受けて、両制度の改正案を国会に提出。

TOB 規制とは、会社支配権等に影響を及ぼす証券取引について、公開買付(TOB)を義務付ける制度。報告書では、非友好的なTOB の拡大や国際標準への対応等を念頭に、①市場内取引(立会内)をTOB 規制の対象とする、②TOB 義務付けの閾値を所有割合3分の1超から30%へ引き下げる、といった見直しを提言。

大量保有報告制度とは、株券等を大量に保有する者に対して一定の開示を求める制度。報告書では、機関投資家等のエンゲージメント行為を促進するため、①規制対象行為(重要提案行為等)の明確化、②共同保有者の範囲見直し、等を提言。

M&A の多様化やエンゲージメントの重要性の高まりといったわが国の資本市場の変化や今般の規制見直しを踏まえ、今後、以下の3点が重要に。
① 積み残しとなったTOB 規制改革に関する継続的な検討
今回の検討にあたっては、非友好的なTOB 時の少数株主の利益保護等の観点から、部分買付TOB の禁止といった抜本的な規制改革を求める意見があった一方、一律的な規制が機動的なM&A を阻害するとの懸念から積み残しに。今後、抜本的な規制改正により想定される影響等について、市場参加者と検討を重ねていく必要。

② パッシブ運用の広がりに対応した協働エンゲージメントの促進
パッシブ運用では、コスト抑制が求められる一方、投資先企業が広範に及ぶため、他社との協力(協働エンゲージメント)を通じた効率的な運営が重要に。規制改正を通じて、協働エンゲージメントが活性化されるかを含め、効率的、効果的なエンゲージメントのあり方について、継続的な検討が必要。

③ PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)の充実
経産省が策定した「企業買収における行動指針」のなかで、非友好的なTOB について、企業価値向上の観点から検討が必要との見解が示されるなど、わが国において、非友好的、競合的なTOB が増加するとみられるなか、経営統合プロセス(PMI)が一層重要に。金融機関等に対するPMI 関連の対応方針策定等も検討材料に。


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