ニュースリリース
2024年2月14日
各位
株式会社日本総合研究所
小中学生を対象としたキャリア教育プログラム構築への支援を開始
~社会体験カリキュラム「しくみ~な」のノウハウを静岡県富士市で展開~
株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、一般社団法人まちの遊民社(主たる事務所: 静岡県富士市、代表理事: 篠原千津美、以下「まちの遊民社」)が計画している、静岡県富士市内の小中学校での新たなキャリア教育プログラムの実施について支援を行うことになりました。また、日本総研の独自開発による社会体験カリキュラム「子ども社会体験科 しくみ~な」(以下「しくみ~な」)のノウハウを無償提供し、まちの遊民社のキャリア教育プログラムの構築を支援します。
なお、この活動を支援する静岡県富士市(市長: 小長井義正、以下「富士市」)のSDGs推進事業に対して寄附を行い、本日その贈呈式が富士市役所にて執り行われました。
贈呈式の様子
左から、日本総研 谷崎社長、富士市 小長井市長、まちの遊民社 篠原代表理事
■ 社会体験カリキュラム「しくみ~な」について
<開発の背景>
文部科学省の調査によって、小学生の時の自然体験・社会体験・文化体験の数が多いほど、高校3年生時の「新規性追求」「肯定的未来志向」「外向性」などの能力が高くなる傾向があることが明らかとなりました(注1)。これらの能力は、これからの予測困難な社会を生きる子どもたちにとって、大いに役立つものと考えられます。一方、体験活動を行うには一定の経済的負担を伴うことが多く、公益財団法人チャンス・フォー・チルドレンの調査では、世帯年収の違いによって、子どもたちが得られる体験機会に格差が生まれていることが分かっています(注2)。
社会体験の機会としては、これまでも学校で「職場体験」が提供されており、生徒は事業所などの職場で、職業や仕事の実際について体験したり、働く人々と接したりする学習が可能です。しかし、民間企業や公共機関といった複数の組織やそこで働くさまざまな役割を担う人々が関わり合って成り立っているという、実際の社会の関わり合いまでを学ぶようにはなっていないのが実情です。
<概要>
「しくみ~な」は、学内授業と学外体験施設での社会体験活動を通して世の中の仕組みを学ぶことができる、小中学生を対象とした、日本総研独自の社会体験カリキュラムです。社会・経済・お金・仕事はどのように回っているかを、全10回程度の学内授業と学外体験施設でのロールプレイを通じて学びます。
しくみ~なの学外体験施設では、子どもたちがロールプレイを通して、社会の関わり合いを疑似体験します(図1)。子どもたちは、指示書に沿ったロールプレイを行い、複数の組織や人々との関わり合いを体感します。例えば、スーパーのブースでは、子どもたちそれぞれが、店長、企画、調達、販売など異なる役割を担い、タスク(課題)を遂行します。このタスクは、農家やエネルギー会社、市役所や銀行といったスーパーに関わる組織やそこで働く人々が、互いに関わり合いながら行うように設計しています。
子どもたちは、就業者としての活動だけではなく、投票や納税といった市民としての活動や、銀行口座の開設や買い物といった消費者としての活動も行います。こうした包括的な体験活動を通じて、社会の仕組みを理解し、さまざまな組織や人の持つ役割の重要性を学ぶことを目指します。また、実際の社会の縮図に即した現実感のある体験ができるよう、学外体験施設には、公共機関のほか地域にゆかりのある民間企業や個人、NPOなどと連携して、地域の特性を反映させたブースを設けます(図2)。
(図1)
(図2)
学内授業では、教育関係者や識者などの協力を得て作成したワークブック(学習帳)や教員向け資料を使用し、教育現場の負担軽減と学びの質の平準化を図ります。民間企業などからは、ブース出展だけでなく、スポンサーシップの提供も受けることで、地域で社会体験カリキュラムを支える事業モデルの構築を図ります。しくみ~なでは、これらを公教育と連動して行うことで、子どもたちの体験格差をなくすことを目指します。
なお、日本総研がしくみ~なを開発するにあたって着想を得たのが、フィンランドの教育カリキュラム「Yrityskylä(ユリティスキュラ)」です。しくみ~なと同様に、学内授業と学外体験施設での社会体験活動によって構成されるユリティスキュラは、フィンランドの公教育の一環として小学6年生の約9割が参加しており、社会体験の機会を公平に提供する機能を担っています。
■ 富士市における実施内容
日本総研は、しくみ~なのノウハウを、まちの遊民社に無償で提供します。2024年度は、まちの遊民社と連携して、しくみ~なのノウハウを参考とした新たなキャリア教育プログラムを構築し、市内の小中学校数校における「総合的な学習の時間」の一部としての実施を支援する予定です。学内授業3コマで社会の仕組みを学び、その後、市役所や民間企業など富士市の産業(社会の仕組み)を反映したブースを設けた学外体験施設での学習を1日かけて行います。
また、まちの遊民社が計画する、富士市独自のキャリア教育プログラムを構築するプロジェクトに対し、富士市の地方創生SDGs推進制度「FUJI3Sプロジェクトエッグ認定制度」(注3)を通じて寄附を行いました。寄附金は富士市SDGs推進に資する取り組みに使用されます。
日本総研は、しくみ~なのノウハウの無償提供と寄附を通して、SDGs項目達成である「質の高い教育をみんなに」に関連するプロジェクトを支援することで、富士市の地方創生SDGsの推進に貢献します。
■ 今後の展開
日本総研は、まちの遊民社と連携して実施する2024年度のプロジェクトを通じて得られた知見を活かし、富士市のキャリア教育プログラムの構築・普及を引き続き支援します。子ども向けの事前学習内容や体験コンテンツ、教員向け資料の改善や体験施設の見直しなど、しくみ~なのカリキュラムの改善も図っていく予定です。また、しくみ~なの他自治体への導入も目指します。
日本総研は、これからの社会の「ありたい姿」の一つとして、「自律協生社会の実現」を掲げています。国や自治体が提供したサービスを民間企業・市民が享受することでこれまでの社会は成り立っていました。しかし、サステナビリティの観点から、これからは、社会のあらゆるステークホルダーが他者に提供できる価値を育み、相互に提供および受領しあう社会に変化していく必要があると考えています。その観点で、「しくみ~な」の提供を通して、自治体、学校、住民のみならず、地域にゆかりのある地域外の企業や個人、財団など多様なステークホルダーが協力関係を築きながら地域の教育を支えていく、新しい教育の在り方を目指してまいります。
(注1)文部科学省「令和2年度 青少年の体験活動に関する調査研究報告書」
https://www.mext.go.jp/content/20210908-mxt_chisui01-100003338_2.pdf
(注2)「子どもの「体験格差」実態調査 最終報告書 ダイジェスト版」(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン/2023年7月4日)
https://cfc.or.jp/wp-content/uploads/2023/07/taikenreport_digest.pdf
(注3)非営利法人または任意団体が行うSDGs活動について、富士市の施策推進に資する計画を市が選定し、これを富士市SDGsポータルサイトで公開して、企業からの応援(寄附申出)を求めるもの。このうち、寄附申出額が目標額に達したものを「FUJI3Sプロジェクトエッグ」として認定し、寄附金を原資として活動経費に対する補助金を支出する。
富士市SDGsプロジェクトエッグ応援補助金(富士市ホームページ)
https://www.city.fuji.shizuoka.jp/sangyo/c0302/SDGsProjectEggCheer.html
■ 本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】 広報部 山口 電話: 080-7154-5017
【一般のお客様】 リサーチ・コンサルティング部門 教育事業開発プロジェクトチーム 青山
メール: 200010-education@ml.jri.co.jp
以上