中国グリーン金融月報【2023年12月号】をお届けします。
1.王の視点
気候変動に対する消費者意識の日中比較
昨年12月、COP28会議期間中に「2023年中国持続可能な消費レポート」が発表されました。同報告書は、商道諮詢(SynTao Consulting)と界面新聞が共同で10~60歳代の4,000人の消費者を対象としたアンケート調査に基づき作成したものです。
日本でも、消費者の気候変動、低炭素、グリーン消費の意識と行動に関する研究が注目され、近年、持続的発展に関する消費者意識調査の報告書が多数公表されています。上記の中国の消費レポートと、2023年3月に公表された「サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果」(Boston Consulting Group) と読み比べ、気候変動や低炭素に対する日本と中国の消費者の認識の違いや特徴を整理してみましょう。
まず、気候変動問題に対する消費者の意識についてです。中国では「気候変動問題が日常生活に影響していると認識しているか」との設問について、50代以上の年代で意識が高く、また20代以下の若者の意識もやや高いというのが特徴です。特に、中国では20歳以下の人は57.87%が「認識している」とする調査結果がありました。日本でも中国とほぼ同じ傾向を示しています。上記Boston Consulting Groupの調査結果からみると「気候変動問題に興味があり、行動を変えたか」との設問に対して、20代以降で年とともに「興味がある」とする回答率が高まり、年齢とともに意識が高っていく傾向が見られます。加えて「気候変動問題を知って行動を変えたか」との設問に対して、20歳以下の若者は「行動を変えた」と回答する比率が最も高くなっています。
次に、低炭素消費や気候変動に関する情報収集のチャネルについて見てみましょう。中国では公共の場でのポスターなどの宣伝が最も多いと回答されています。テレビ、ラジオ、新聞などがその次です。一方、日本では、テレビからの情報収集がダントツに多いと言えます。
最後に、環境負荷の低い商品を購入しない理由についての設問では、日中が同じ回答傾向を示しており、「どんな商品が環境負荷の低い商品なのかわからない」との回答が最上位を占めています。グリーン消費を促すには、正しい情報を消費者に示すことが重要だと考えられます。
気候変動対策として、個人消費者の消費行動に光を当てることは重要で、そこでの排出削減は大きな貢献となります。IPCCは「2050年までに人々が自分の消費とライフスタイルを改善すれば、需要側においては40~70%の排出削減を実現できる」としました(2022年に公表されたIPCC第6次報告書WG3)。消費者意識を高め、消費行動を低炭素型へ誘導するためには、消費者の啓発、低炭素商品の明確化、消費者の行動変容の仕組みの構築が欠かせないと言えるでしょう。
2.今月のトピックス
【国家能源局】グリーン証書の発行開始
12月13日、国家能源局はグリーン電力証書発行キックオフ会議を開催し、グリーン電力証書を申請した発電会社12社とグリーン電力利用者10社に、グリーン電力証書を発行した。
2023年7月、国家発展改革委員会、財政部、国家エネルギー局は共同で「再生可能エネルギー電力消費促進のための再生可能エネルギーグリーン電力証書の全面適用に関する通知」を作成し、グリーン証明書システムを改正して、国家能源局がグリーン証書の管理責任を担うこと、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電、地熱発電、海洋発電などを含む、再生可能エネルギー発電事業で発電される電力はすべてグリーン証書の付与対象となることを明確にした。
新制度のもと、初回発行されたグリーン証書は1,191万件となる。今後も、再生可能エネルギーの設備容量と発電量の増加が予想され、グリーン証書発行が継続されることで、中国は世界最大のグリーン証書供給市場となろう。
2023-12‐14 国家能源局
https://www.nea.gov.cn/2023-12/14/c_1310755346.htm
コメント:グリーン証書とは、政府が発電企業に対して再生可能エネルギー発電量に応じ、発行する証書のことをいいます。今回の制度改正により、いくつか変化が見られます。一つ目はグリーン証書の対象です。旧制度では風力発電とメガソーラーのみが対象でしたが、新制度ではすでに登録された再エネプロジェクトがすべて対象となります。二つ目は検証のデータです。旧制度では電力会社が提示する発電量のデータをベースとしていましたが、新制度では電網会社や電力取引所のデータを根拠にするようになりました。三つ目は証書の利用です。旧制度では、グリーン電力利用の証明として、スコープ2の排出削減量にカウントすることができるだけでしたが、新制度では、グリーン電力利用の証明に加え、排出権取引市場との連携などもできるようになります。12月13日、国家能源局はグリーン電力証書発行キックオフ会議を開催し、グリーン電力証書を申請した発電会社12社とグリーン電力利用者10社に、グリーン電力証書を発行した。
2023年7月、国家発展改革委員会、財政部、国家エネルギー局は共同で「再生可能エネルギー電力消費促進のための再生可能エネルギーグリーン電力証書の全面適用に関する通知」を作成し、グリーン証明書システムを改正して、国家能源局がグリーン証書の管理責任を担うこと、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電、地熱発電、海洋発電などを含む、再生可能エネルギー発電事業で発電される電力はすべてグリーン証書の付与対象となることを明確にした。
新制度のもと、初回発行されたグリーン証書は1,191万件となる。今後も、再生可能エネルギーの設備容量と発電量の増加が予想され、グリーン証書発行が継続されることで、中国は世界最大のグリーン証書供給市場となろう。
2023-12‐14 国家能源局
https://www.nea.gov.cn/2023-12/14/c_1310755346.htm
【中国SIF】「中国責任投資年次報告書2023」を発行
12月5日、第11回中国責任投資フォーラム(中国SIF)年次総会が開催され、席上「中国責任投資年次報告書2023」が公表された。5年目の公表となる。同報告書は、中国のESG責任投資政策の進捗状況、市場規模、市場の発展を分析した。報告書によると、2023年第3四半期の時点で、統計上把握できた責任投資市場の規模は合計33.06兆元に達するという。うち、グリーン融資残高は28.58兆、サステナブル証券投資市場(サステナブル証券投資ファンド、サステナブルボンド、サステナブルウェルスマネジメント商品を含む)は3.66兆元、サステナブル株式投資残高は約0.82兆元とのことである。
2023‐12-8 SINA財経
https://finance.sina.com.cn/esg/investment/2023-12-11/doc-imzxhwts8200538.shtml
コメント:報告書全体は、https://dataexplorer.syntaogf.com/china-sustainable-investment-review-2023で見ることができます。2023年の報告書によれば、個人投資家のESGに対する意識変化が指摘されています。中国SIFは4年連続で個人投資家に対してアンケートを行い、ESG投資への意識の変化を分析してきました。2023年の調査結果では、ESG 責任投資への理解について、2022年の調査結果より「ESGをよく理解している」と回答する比率が20%増えました。また、「ESG投資の導入」について、2020年の調査結果より10%以上増えました。個人投資家が責任投資をより受け入れるようになったことを示す結果となっています。12月5日、第11回中国責任投資フォーラム(中国SIF)年次総会が開催され、席上「中国責任投資年次報告書2023」が公表された。5年目の公表となる。同報告書は、中国のESG責任投資政策の進捗状況、市場規模、市場の発展を分析した。報告書によると、2023年第3四半期の時点で、統計上把握できた責任投資市場の規模は合計33.06兆元に達するという。うち、グリーン融資残高は28.58兆、サステナブル証券投資市場(サステナブル証券投資ファンド、サステナブルボンド、サステナブルウェルスマネジメント商品を含む)は3.66兆元、サステナブル株式投資残高は約0.82兆元とのことである。
2023‐12-8 SINA財経
https://finance.sina.com.cn/esg/investment/2023-12-11/doc-imzxhwts8200538.shtml
3.今月のニュース
【工業信息部等】「新エネ車製品の購入税の有無に関する技術要件の調整」
2024年1月1日から、新エネ車の購入税の免税措置に関する技術的条件と実施要件を改正すると規定。純電気乗用車の航続距離は100km以上から200km以上などに条件を厳格化する。
2023-12‐7 中国政府網
https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202312/content_6919586.htm
【国務院】「大気環境の継続的改善に向けた行動計画」を公表
2025年までに全国の都市におけるPM2.5濃度の管理を強化し、重度の汚染となる日の割合を1%以内に抑制すると明記。2025年PM2.5濃度が2020年比20%低下することを目指すという。
2023-12-7 国務院
https://www.gov.cn/zhengce/content/202312/content_6919000.htm
【中国グリーン金融持続可能研究院】責任投資原則は、中国気候共同関与プラットフォーム(CCEI)への正式な支持を発表
今後、CCEIプラットフォーム関係者と協力して、プラットフォームの開発を共同で推進すると表明。
2023-12‐4 中国グリーン金融持続可能研究院
https://www.ifs.net.cn/news/1521
【興業銀行】中国炭素登録機構と共同で「炭素割当スポット・プレッジ価格指数」を公表
「中国炭素産業国家炭素市場炭素排出枠スポット・プレッジ価格指数」は、全国炭素市場の炭素排出枠スポット・プレッジ評価額の全体的な水準と変化傾向を包括的に反映することを目的としている。
2023-12‐27 興業銀行
https://m.cib.com.cn/netbank/cn/aboutCIB/about/news/2023/20240105_1.html
【交易商協会】「中国グリーンボンド指数」正式発表
一定のサンプル範囲内の価格データに基づいて一定のルールに従って算出される指数で、中国グリーンボンド市場パフォーマンスを客観的かつ正確に反映することを目的とする。
2023-12‐29 交易商協会HP
https://www.nafmii.org.cn/xhdt/202312/t20231201_316422.html
【上海市】「グリーン転換に関する法律」を公表
第16期全人代第9回会議では「上海発展モードのグリーン転換促進条例」の採択を決議したされる。2024年1月1日より施行。
2023-12‐31 SINA財経
https://finance.sina.com.cn/jjxw/2023-12-31/doc-imzzxpaw7486918.shtml
【河北省】鉄鋼業トランジションファイナンスガイドランを公表
鉄鋼業界に焦点を当てたトランジションファイナンスのための国内初のガイドラインであり、金融機関が鉄鋼業界でトランジションファイナンスを実施するための政策基盤を提供。
2023-1‐4 北極星環保
https://huanbao.bjx.com.cn/news/20240104/1354036.shtml
紹介した記事の原文は中国語です。内容を日本語でより詳しくお知りになりたい方は、
下記アドレスまでお気軽にご連絡下さい。
100860-green-asiaatml.jri.co.jp(メール送付の際はatを@と書き換えての発信をお願い致します)
※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。