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中国グリーン金融月報【2023年10月号】

2023年11月28日 王婷


中国グリーン金融月報【2023年10月号】をお届けします。

1.王の視点
中国、生物多様性保護への関心が高まる

 生物多様性条約第15回締約国会議首脳サミット(前半)が雲南省で2021年10月に開催されたことをきっかけに、中国では生物多様性保護に関連する取り組みが加速しています。
 まず、政府主導の政策策定があげられます。「中国における生物多様性保護法」が2022年末に公表され、初めて生物多様性が法規制に位置づけられるようになりました。グリーン金融関連の政策でも、「グリーン産業指導目録(2019年版)」、「グリーン融資特別統計制度」、「グリーンボンド支援プロジェクト目録(2021年版)」において、「生態保護」と「生態回復」が支援対象に組み入れられ、生物多様性保全への財政支援が明確に示されています。さらに、「グリーンボンド支援プロジェクト目録(2021年版)」では、グリーン農業、グリーン漁業、天然林保護、湿地保護、海域総合管理、砂漠化対策、鉱山生態系修復など20項目を対象に含めています。
 次に、金融機関が、自身のリスク管理と貸し出し先企業の支援のため、生物多様性をテーマに様々なガイドラインや基準作りに取り組んでいます。例えば、2023年7月に公表された「銀行業生物多様性リスク管理ガイドラン」では、鉱業、エネルギー、水利、観光、農業、林業、畜産業、漁業、製薬、バイオテクノロジー製造などの21業種について生物多様性リスクを分類し、各業界の生物多様性の特定と管理手法を明確にしました。また、個別では、興業銀行が生物多様性保全のための金融ソリューションを開始。その他、中国銀行など金融機関がグリーンボンドを発行し、鉱山回復などのプロジェクトを通じて生物多様性保全を支援しています。
 環境意識の高い企業の動きも活発になりつつあります。生物多様性情報を開示する各社報告数は年々増加しています。「中国企業の生物多様性情報開示に関する調査報告書(2022年)」では、2022 年の生物多様性関連情報を開示する報告書 (670 件)は、2021 年 (404 件)と比較して件数で65.8%増加し、全体の28.9%を占めました(下図参照)。うち、鉱業と電力産業がリードしています。また、生物多様性保護に特化した報告書を出す企業もあります。2021年には「中国広核集団生物多様性保護報告書」が発表されました。この報告書は、「自然資本プロトコル」フレームワークを適用して、「回避・削減・軽減・補償」という生物多様性保護の戦略を示しました。さらに、2022年5月には中国三峡集団公司も初の「生物多様性保護報告書」を発表しました。

資料:「中国企業生物多様情報開示報2022」GoldenBee

 今後、気候変動が辿ったのと同様に、生物多様性に関しても政府、金融機関、企業の三位一体の取り組みが進展するでしょう。

 2.今月のトピックス
【生態環境部】温室効果ガス自主削減プロジェクト4つの方法論を発表
 生態環境部は、「温室効果ガス自主的排出削減取引管理弁法(試行)」に基づき、温室効果ガス自主的排出削減プロジェクトの方法論を、植林、系統連係型太陽光/熱発電、系統連係型洋上風力発電、マングローブ造林の4つに分けて公表した。発表された4つの方法論では、適用条件、排出削減量算定方法、モニタリング方法、検証・検証ポイントが明確にされた。4つの方法論は、国際的な自主的温室効果ガス排出削減メカニズムの規則を参照し、中国の関連産業政策やグリーン・低炭素技術の発展方向性を考慮したうえで策定された。国際基準に合致するだけでなく、中国特有の事業条件に合わせモニタリングデータの品質の強化、検証の重要性を強調している。制度の成熟度を見ながら評価・検証を実施し、自主的排出量削減取引市場の方法論を段階的に拡大していく見通しである。
2023-10-25 生態環境部
https://www.mee.gov.cn/ywgz/ydqhbh/wsqtkz/202310/t20231025_1043940.shtml

コメント:2011年にCDMスキームが終了したあと、2012年に政府は中国国内自主排出削減取引制度を作りました。地方排出権取引市場で取引されるのがCCER(China Certified Emission Reduceの略)で、中国の国家認証自主削減量を指します。CDM(クリーン開発メカニズム)スキームのCER (認証された排出削減量:Certified Emission Reduction)から由来し、これまで、太陽光発電、風力発電、バイオ発電、水力発電、ごみ焼却、余熱利用などがCCERの対象となっています。事業者が取得するCCERは排出割当量のオフセットとして利用できます。

【深セン市】「深セングリーン投資評価ガイドライン」を公表
 10月15日、深セン地方金融監督管理局、中国人民銀行深セン支店、国家金融監督管理委員会深セン監督局、中国証券監督管理委員会深セン監督局は共同で 「深セングリーン投資評価ガイドライン」を公表した。ガイドラインの策定・実施を通じて、金融機関の投資前評価・投資後管理の具体的な作業内容・作業方法を更に明確化し、投融資プロセス全体への環境リスク管理を徹底し、グリーン投資評価・業務プロセスの管理体制の構築と改善を推進することを目的としている。また、「ガイドライン」では、金融機関に対し、グリーン投資評価システムの確立と継続的改善、金融機関グリーン投資評価の機能分業と業務プロセスの明確化を通じ、効果的なグリーン投資業務を実施するよう求めている。
2023‐10-15 深圳地方金融監督委員会
http://www.jr.sz.gov.cn/sjrb/ztzl/yshjzck/zcfg/content/post_10880837.html

コメント:グリーンファイナンスには、グリーン融資、グリーンボンド、グリーン投資、その他の商品やサービスが含まれます。グリーン融資とグリーンボンドについては、中国銀行業監督管理委員会と中国証券監督管理委員会が既に指導文書を公表しています。投資評価ガイドラインの導入により、グリーン投資においても評価制度のバラツキが解消されるという効果が期待されます。

3.今月のニュース
【国務院】「包摂的金融(普恵金融)の品質発展の促進に関する実施意見」を発表

グリーン・低炭素開発を支援すること、中小企業、農業、農民の技術向上や転換、公害防止など、生産・事業のグリーン転換を支援するよう、金融機関を指導する。
2023-10‐11 中国政府網
https://www.gov.cn/zhengce/202310/content_6908536.htm

【市場監督総局】「品質認証によるカーボンニュートラルの支援に関する実施意見」を公表
2025年までに、政府主導の強制的推進と個別機関主導の自主的推進と組み合わせることで、カーボンニュートラル関連の認証制度体系を構築する。
2023-10‐20 Zhongtanhui
http://www.zhongtanhui.cn/sys-nd/213.html

【工業信息部】グリーン製造国家基準シリーズを公表
グリーン製造用語(GB/T 28612-2023)とグリーン製造属性(GB/T 28616-2023)という2つの国家標準が発表され、2024年1月1日以降に正式に実施される。
2023-10-30 工業信息部
https://www.miit.gov.cn/jgsj/jns/lszz/art/2023/art_70a2a2c3b0574e5da6fe77fa971ac9a1.html

【上海市】金融機関間のカーボンアカウント初の相互承認
10月24日、中国銀聯は中信銀行クレジットカードセンターと協力し、中国銀聯の「低炭素プラン」と「中信カーボンアカウント」の関連サービスを連携させたと発表した。
2023-10‐25 中国証券報
https://jrj.sh.gov.cn/SCDT197/20231025/f33557b289b145c282a3fc78b96df4b5.html

【グリーン経済研究院】中外30以上の機関、持続可能な投資能力構築連盟を発足
シルクロード基金、香港金融管理局、HSBC、スタンダード・チャータード銀行、ルボマック・ファンドなど30以上の国内外の組織が、持続可能な投資のための能力構築アライアンス(CASI)を立ち上げた。
2023-10‐21 人民網
http://finance.people.com.cn/GB/n1/2023/1021/c1004-40100477.html

【招商銀行】炭素排出量マップを作成し、炭素管理システムを推進
過去3年間で1,900以上のグループ企業の炭素排出源の監査を完成し、組立式店舗の建設、公用車新エネ車導入など、自社の業務推進で低炭素発展への持続可能な道を探っている。
2023-10‐18 SINA財経
https://finance.sina.com.cn/jjxw/2023-10-18/doc-imzrpunf2880958.shtml

【スタンダード・チャータード・チャイナ】河鋼サプライチェーン管理公司に初のトランジション融資を提供
融資の用途は、2021年スタンダードチャータード・グループが作成した「トランジション融資フレームワーク」に合致する。今回の融資は、スタンダード・チャータードが中国企業に対して提供する初のトランジション融資である。
2023-10‐27 経済網
https://www.ceweekly.cn/company/2023/1027/427938.html

 
紹介した記事の原文は中国語です。内容を日本語でより詳しくお知りになりたい方は、
下記アドレスまでお気軽にご連絡下さい。
100860-green-asiaatml.jri.co.jp(メール送付の際はatを@と書き換えての発信をお願い致します)


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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