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リサーチ・アイ No.2023-048

【「年収の壁」打破への提言③】
「年収の壁」のつなぎ対策、人手不足の解消は期待薄

2023年10月05日 北辻宗幹


政府は、10月から「年収の壁」問題への対応策を導入。今回の措置は2年後の年金制度改革で策定される抜本策までのつなぎ対策としての位置づけ。対策は「年収の壁」に起因する人手不足の解消を目的としているが、以下の2点から、その効果は限られる可能性。

第1に、「働き損」が解消されても、配偶者の扶養に入るメリットが大きい点。今回の措置では、年収106万円を超えて扶養から外れる労働者に対し、手取り収入の減少を助成金で穴埋め。もっとも、多くの労働者は手取り収入以外の理由でも就業調整を実施。アンケート調査によると、就業調整者の4割が配偶者控除の適用や健康保険の扶養継続を理由に労働時間を削減。

第2に、「130万円の壁」で打ち出された労働時間の増加がどの程度認められるかが不透明な点。今回の措置では、労働時間延長などで一時的に収入が増加しても、事業主の証明があれば扶養にとどまることが可能。ただし、アンケート調査などでは、就業調整者は「年収の壁」が撤廃された場合、2~4割労働時間を増やすことを希望。仮に、就業調整者が残業時間を正社員並みに増やしても労働時間は1割増加するに過ぎず、2~4割の収入増が一時的と認められるか不透明。労働者は労働時間の増加を小幅にとどめる可能性。

「つなぎ措置」の効果が上記のように弱い場合、人手不足が十分に解消されない可能性。試算によれば、「年収の壁」による就業調整は、経済全体の総労働時間を▲1.4%押し下げ。これに対して、「つなぎ措置」の政策効果は総労働時間を+0.1%押し上げるに過ぎず。今後、賃金が上昇すると、就業調整による総労働時間の押し下げ幅がさらに拡大する公算大。


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