コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

急がば回れ 担い手が減る時代の「振り返り」の重み

2023年10月11日 山崎香織


 2023年度もいよいよ後半に入った。どの組織や個人にとっても「振り返り」に良いタイミングである。振り返りと聞くと反省することと捉えて、ネガティブな印象を抱く場合もあるようだ。しかし、本稿で言う振り返りとはreflection(リフレクション)を指す。実践の最中あるいは完了時に「このやり方はよかったか?」「どんな意味があったのか?」と自身に問いかけ、出来たことに自信を持ち、これからの取り組みに生かすために行うものである。

 振り返る時間がもったいないと感じる時こそ、実は振り返りの効果は大きいと言われている。例えば職場において、限られた人数で物事を進めていくには、一人ひとりの対応力、いわば効率を高めることが欠かせないからだ。このようなとき、ただ経験を重ねるのを待つより、短時間であっても振り返りを行うことで、より良いやり方を会得する人を増やすことができる。

 個人の経験を振り返る時は、本人や周りの人の気づきを共有し、成果や成長課題を明らかにする。組織や地域の取り組みを振り返る時も同様に、出来なかったことや弱みばかりに着目するのではなく、出来たことや自分たちの強みを関係者で言語化することで、前向きに次の取り組みに挑戦しやすくなる。

 例えば当社が令和4年度に取りまとめた「地域包括ケアシステム~効果的な施策を展開するための考え方の点検ツール~」を例にあげたい。これは、高齢者を含めた住民全体が暮らしやすい地域を作るための一連の活動で、どう振り返りを行い、2040年を見据えた方向性を考えるのか、そのきっかけを提供するものだ。本ツールの中では、目指す姿を実現できているかを考える際にこれまでの成果、特にこれからの取り組みに活用できる強みを書き出すワークの姿を盛り込んでいる。

 ツールを活用している方々の反応を見ると、日々の業務では強みを考えることがあまり無いためか、改まってそれを考えることで意外な気づきを得られるようだ。他者から意見をもらうことも強みを自覚し、今後それをどう生かしたいか考える機会になる。

 未来に生かすための振り返りや強みの明確化を行う上で推奨したいのは、一瞬の気づきや疑問、議論の文脈を、なるべく生の形で共有することである。例えば、各自の意見や議論を手書きのメモや模造紙、写真・映像で共有することで、さまざまな思いや悩みが積み重なっていく様子が視覚からも捉えやすくなる。さらに少し時間を置いて自身でそれらを見返す、あるいは次の担当者に引き継いで見てもらうことで、また新たな気づきを得ることもできるだろう。

 今年度の計画や目標の折り返し地点にいる今、「振り返り」によって組織や個人の半年間の試行錯誤を生きた知恵に変えることができるだろう。「振り返り」を一人ひとりの意欲やスキルを高める契機にしてほしい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ