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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.23,No.90

成長の踊り場に立つベトナム ―中所得国の罠を回避するための課題と展望―

2023年08月10日 専修大学商学部 教授 池部 亮


1990年代以降、ベトナムは世界の自由貿易体制に参加し、輸出志向型の外国直接投資企業(FDI)のグローバル・サプライチェーン(GSC)の一翼を担う存在となった。ベトナムはFDIに安価で豊富な労働力を提供する一方で、FDIは技術や資本などの生産要素を投入することで、ベトナムの輸出は飛躍的に拡大した。

要素投入型経済から高生産性経済への転換こそベトナムが直面する課題である。安価な労働力に比較優位があるベトナムが、その比較優位を資本や技術へと移行させるためには、生産効率の向上や技術革新をもたらす教育の普及と質的向上、つまり人的資本の拡充が重要である。

ベトナムの農林水産業の就業者の割合は過去15年間低下を続けている。一方、製造業とサービス業の割合は上昇しており、2017年にはサービス業就業者数が農林水産業を上回り、製造業部門の就業者が農林水産部門を上回るのも時間の問題である。ベトナムはルイスの転換点を迎えつつある。

ベトナムの1人当たり国民総所得(GNI)は2009年から2021年までの12年間で3.2倍に拡大し、この期間のベトナムの平均経済成長率は5.9%であった。ベトナムがこれまでと同様の成長を遂げた場合、約20年後の2044年に高所得国に到達する計算となる 。

アジア諸国の労働生産性を比較すると、ベトナムは比較的高い生産性を示す。しかしながら、ベトナムの製造業の労働生産性は近年、全業種平均を下回る水準にある。ベトナムがGSCのなかで依然として「単純作業を担う国」と位置づけられており、FDIの生産比率が高いICT関連製品、自動車、オートバイ産業の資本装備率は低く、その伸び率がマイナスとなっている産業もある。

ベトナムが成長の踊り場を抜け出し、持続的な成長を遂げるには、低付加価値産業の高付加価値化や労働生産性の向上が不可欠である。

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