リサーチ・アイ No.2023-030
ASEAN景気のカギを握る中国人旅行客 ― 中国人の購買力低下と対中関係の悪化がリスク ―
2023年07月28日 熊澤知喜
中国では旅行消費が回復。中国国内の航空旅行者数は2019年平均並みに回復したほか、海外への旅行者数も4割まで回復。ASEAN諸国でも中国人旅行者が急回復。本年2月以降、中国政府がASEAN諸国への団体旅行を解禁したことが背景。ただし、フィリピンについては、入国時に今もワクチン接種証明などが必要であり、他国よりも伸び悩み。
今後も航空燃料の価格安定や国際線の便数増加を背景に中国人旅行者数は回復し、ASEAN景気をけん引する見通し。もっとも、以下の2点が下振れリスク。第1に、中国人旅行者の購買力低下。中国人民元は国内の金利低下と景気悪化を背景に、多くのASEAN通貨に対して下落。さらに、中国では若年失業率が上昇するなど、所得環境は悪化。こうした傾向が強まると、中国人の旅行消費意欲を削ぐ恐れ。
第2に、対中関係の悪化。中国政府は、過去に韓国・台湾との関係が悪化した際、旅行者を抑制する経済報復措置を実施。これを受けて当時の両国では中国人観光客が大幅に減少。なお、本年の団体旅行解禁の対象国は一帯一路の参加国を中心としており、中国との政治的な関係が重視されている模様。
(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)