コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

JRIレビュー Vol.5,No.108

地域の経済・環境・社会価値を最大化するバイオマス活用方針の策定手法の提案

2023年05月24日 福山篤史


2002年に発表された「バイオマス・ニッポン総合戦略」を皮切りに、国内においてバイオマスの活用が推進されてきた。近年では、バイオマスの活用は、カーボンニュートラルの実現、枯渇性資源からの脱却、地政学的リスクへの対策といった複数の分野での価値創出に貢献するものとして高い注目を集めている。

バイオマスが発生する地域では、その活用により、経済・環境・社会の価値創出を図ることが期待できる。経済価値としては、バイオマスの活用による収益の確保や地域自立型経済の構築が挙げられる。また、環境価値としては、バイオマスの有効活用による廃棄量・地域内残存量の低減や、CO₂を固定化したバイオマスを原料とすることによるカーボンニュートラルへの貢献が期待される。社会価値としては、サプライチェーンにかかわる雇用の創出や未利用バイオマスの有効活用による生活環境の向上などが期待される。

各地域で活用できるバイオマスは、薄く広く存在している。また、バイオマス活用を進めるためには、サプライチェーンにかかわる広範な関係者の巻き込みが必要となる。各地域では、自治体等を中心に、活用すべきバイオマスと期待すべき用途の組み合せや、バイオマス活用に関するメリットと役割を示す方針を定めていくことが不可欠である。

政府は、2010年に「バイオマス活用推進基本計画」を策定し、2025年までに全都道府県および600市町村がバイオマス活用推進計画を策定する目標を打ち出した。しかしながら、2023年2月時点で計画を策定したのは、19道府県・74市町村にとどまる。さらに、計画を策定している地域も、必ずしも各地域のバイオマスを経済・環境・社会の価値創出のために最大限に活用できているとは言えない。その理由は、①地域の強みとなる産業や地域資源を活かす視点、②付加価値の高い用途を重視する視点、③環境・社会の価値創出に繋がる原料や用途を選択する視点、④外部環境の変化を踏まえた用途を選択する視点からの検討が不十分なことにある。

本稿では、上記の四つの視点を盛り込み、バイオマス活用を経済・環境・社会の価値創出に繋げられるよう、原料と用途の組み合せを選定する手法を提案する。本手法では、経済価値、環境価値、社会価値の三つを評価軸として、これらの価値を最大化する原料と用途の組み合せをアウトプットして導くことができる。

本手法を用いることにより、以下の効果を生むことが期待できる。
(1) 広範なステークホルダーがメリットを見出し、バイオマス活用に対する賛同を得やすくなる
(2) 需要動向を捉え、高付加価値な用途を重視するため、事業規模と収益性の向上が期待できる
(3) 地域の産業や資源が強みとして活きる原料と用途に焦点を当てるため、独自性・競争優位性のある事業を展開できる

本手法は、自治体がすでに保有するデータを組み合せるものであり、バイオマス活用方針を立案と、その後の事業立ち上げ・実施を容易に進めることに資する。各地域が本手法により優先して活用するバイオマスの原料と用途を定めることで、早期に事業が立ち上がり、経済・環境・社会の価値創出に繋がることを期待したい。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ