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地域の担い手のやりがいをセオリーオブチェンジの発想で高めよう

2023年03月28日 山崎香織


 地域や組織において、担当者が人事異動等で離れたり、新たな人が参加したりと、春は人の入れ替わりが多い時期である。その時に注意したいのが、何のためにこの事業や活動を行っているのかが共有もしくは継承されず、単なる業務の引き継ぎだけになってしまうことである。取り組みを最初に始めた人たちの思いを含めて引き継がないと、やらされ仕事に陥りやすくなる。また新たに担当になった人がその意義や進め方に疑問を感じても、見直しを切り出しにくい状況が起こりうる。どちらの場合も、結果として取り組みの成果は上がりにくくなる。

 企画段階の思いや課題認識を受け継ぎ、関係者が変わっていく中でも「何を目指しているのか」を見失わないようにする工夫として、セオリーオブチェンジの考え方の活用が挙げられる。一例として、筆者が調査研究の一環として携わっている高齢者施策での活用方法を紹介したい。

 当社では令和3年度に「地域包括ケアシステムの構築状況の見える化に向けた調査研究事業」を実施した。これは、高齢者を含めた住民が暮らしやすい地域づくりを目指し、介護・福祉部局の担当に留まらないさまざまな施策の効果を、セオリーオブチェンジの考え方を用いて点検するものだ。令和4年度には点検を後押しするツールも作成した。(※)

 点検ツールを複数の自治体で試してもらったところ、施策の振り返りや見直しの検討が進みやすくなる様子がうかがえた。特に印象深かったのは、日々多くの業務に追われている職員の方々が、なぜ取り組みをやる必要があるかを自分の言葉で語り、意味づけをすることで、本人の意欲が高まったり、他の職員や地域の関係者の共感を得やすくなったりしたことだ。

 地域によっては、自治体職員だけでなく、社会福祉協議会などの地域の担い手とともに点検を進めたところもあった。目の前の取り組みから一担離れて、地域の課題や取り組みの意義をゆっくり話し合うことは、「ありたい地域像」を共有し、参加者の意欲を高め、一緒に実現していこうという関係づくりにつながると気づいた。

 自治体職員を含む地域の担い手の人数自体は限られる。そうした中で、これからの地域のあり方を描き、その実現を目指す営みに携わる個々人のやりがいを高めることは、地域づくりの肝だと言える。事業や活動を引継ぐ人も、新たに企画を行う人も、せっかくの節目を活かして「取り組みを通じてどんな変化を起こしたいか」を意識し、共有することを勧めたい。

(※)効果的な施策を展開するための考え方の点検ツール

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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