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リサーチ・フォーカス No.2022-059

新しいNISAの評価と残る課題 ― 制度拡充は評価も、資産所得倍増にはさらなる見直しが必要 ―

2023年02月13日 下田裕介


昨年末、岸田首相肝いりの資産所得倍増プランを踏まえた2023 年度の税制改正大綱がとりまとめられ、「新しいNISA」の制度概要が明らかに。

これまでNISAは、新たに証券投資を始めた人のうち8割弱が利用するなど、投資の入口としての役割を果たしてきたものの、複雑な制度などが足かせとなり、口座保有率は低く、NISA利用者はいまだ少数派。これに対し、新しいNISAは一般とつみたてNISAが一本化され併用可となり、制度の恒久化と非課税期間の無期限化が実現したことで使い勝手が向上。また、非課税投資枠も大幅拡充され、貯蓄から投資へのシフトを促進するドライバーとなることが期待。

資産所得倍増プランでは、今後5年間でNISAの口座数と買付額を倍増させるとともに、長期的に家計の投資残高を倍増させる目標も設定。NISAの残高増加を「口座数×稼働率×稼働している口座あたりの年間買付額×買越率×時価変動率」と考えると、新しいNISAでは、非課税投資枠の拡大による買付額の増加や、制度の恒久化など長期投資を促すことによる買越率の改善といった効果が期待可能。

一方で、口座数の増加、稼働率の引き上げ、時価変動率の改善に向けては、以下に示すようにNISA制度のさらなる見直しを検討する余地。
① 口座数の増加:口座開設手続きの簡素化や未成年向けNISA口座の導入。後者は、金融資産の世代間移転に加え、金融教育の一環としても意義あり。
② 稼働率の引き上げ:NISA口座開設後も金融機関が息の長いサポートを続ける観点から、金融機関ごとの稼働率の公表や、複数のNISA口座での投資を可能とする仕組みを創設して、金融機関間のサービス競争を促進。
③ 時価変動率の改善:新しいNISAでは、売却による翌年の非課税投資枠復活によりリバランスが容易になったものの、同年中の機動的なポートフォリオ見直しのために、売却代金の範囲内で新規投資が可能なスイッチングを導入。

新しい投資家層を呼び込むには、NISAの見直しのみならず、資産所得倍増プランに示された投資への不安払しょくに向けた情報発信、金融教育の充実に加え、投資に回す資金を増やすための労働市場や雇用慣行の改革に取り組むことが重要。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
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