こうした状況下でも、国内の航空業界がSAF導入目標達成への手を緩めることはできそうもない。欧州連合は2030年にSAFの5%導入を義務化する方針を掲げた。こうした動きが世界的に広がるとSAFの搭載ができない飛行場での発着を、航空事業者が避けることも予想される。日本国内でSAF導入体制が整わない場合、国内航空事業者がSAF導入義務のある国に飛べなくなるばかりか、海外航空事業者が日本への便を減らす恐れもある。新型コロナウィルス感染症の終息後に期待されるインバウンド客も受け入れられなくなる可能性まであるのだ。 このような状況を避けようと、2022年3月に有志の民間事業者が設立した「ACT FOR SKY」は、国産SAFの安定的な供給に向けて、原料調達からSAF供給までの安定的なサプライチェーン構築に取り組む方針を掲げている。
さらには、恩恵を受ける自治体が関与する余地もあるのではないか。自治体が橋渡し役となりカーボンクレジットを発行し、クレジットを売却して得た資金をSAF製造・搭載のサプライチェーンに関わるステークホルダーに分配することも構想できるだろう。実際に、国内において自治体がカーボンクレジットを発行する動きも複数登場している。また、SAFに関しては、シンガポール航空や投資会社テマセクが、SAF利用によるCO2排出量削減に対するSAFクレジットを2022年7月から法人顧客や貨物輸送業者(フォワーダー)に販売することを始めている。本取組では、SAFクレジットが二重計上されずに信頼性・透明性をもって取引されるよう、持続可能な認証基準で世界をリードするRoundtable on Sustainable Biomaterialsのブックアンドクレーム・システムに登録を行う。このように十分な信頼性・透明性を確保した上で、SAFのサプライチェーン構築に関わる各社が恩恵を受けるような仕組みを作ることは急務だろう。国産SAFの供給体制が早急に整えられていくような大胆な発想を是非、期待したい。