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Web3.0は何を変えるのか

2022年05月11日 中村恭一郎


 今、「Web3.0」が注目を集めています。2022年3月上旬には自由民主党デジタル社会推進本部NFT政策検討プロジェクトチームからホワイトペーパー「Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略」が発表されました。4月21日には岸田総理に対する説明も行われたとのことです。同チームをリードする平将明衆議院議員は「総理指示で木原誠二官房副長官と話を進めることになりました。」とその成果を発信しています。(2021年4月21日、平議員のTwitterでのツイートより)

 政界でも注目されつつあるWeb3.0ですが、私は、これが一時の流行り言葉ではなく大きな変化の兆しであると感じています。本メルマガが発行される頃には、上記プロジェクトチームの検討を土台に自由民主党のデジタル成長戦略が発表されていると思います。そこでもWeb3.0が大きく取り上げられる予定と聞いています。岸田総理が掲げる「デジタル田園都市国家構想」や「新しい資本主義」との繋がりも深いことから、「成長戦略としてのWeb3.0」がどのような中身になるのか注目しています。

 Web3.0は何が新しいのでしょうか。様々な説明が試みられていますが、今や、日常的にWebサービスを利用する世の中ですから、私は、「Web3.0で私たちの日常がどう変わるのか?」と解説することが最も理解に繋がりやすいと思っています。私は、次の3つをWeb3.0がもたらす日常の変化だと考えています。
●「Webサービスのユーザーになると同時に、自ら望めば、そのサービスの開発や運営に参加する道が開かれている。」
●「参加方法として、出資など金銭的な方法だけでなく、アイデアの提供やサービス運営のサポートなど非金銭的な方法も選択できる。」
●「参加し、貢献した対価として、金銭や運営(ガバナンス)に関与する権利など、何らかのインセンティブを得られるようになる。」
 いかがでしょうか。ユーザーはWebサービスを利用するだけでなく、ユーザー同士で繋がり、協働して、Webサービスの開発や運営にも主体的に関与する、そんなイメージが沸いてくるでしょうか。

 これまでのWeb2.0では、「巨大企業がプラットフォーマーとしてWebサービスを支配している。ユーザーは、まさにサービスの『利用者』であって、サービス利用のために様々なユーザーデータを提供している。」といった指摘を耳にすることが増えてきました。「プラットフォーマーが提供するサービスを黙々と利用するユーザー」というイメージと共に、プラットフォーマー側の中央集権的な性質やユーザーデータの独占を批判する論調も目につきます。確かに、Web2.0の現状に対する批判や疑念の中からWeb3.0が生まれたと捉える人たちも居ますし、私もそれがWeb3.0の原動力の一つではあると思います。

 ただ、私は、Web3.0は企業とユーザーとが対立したり巨大企業を敵視したりする世界を必ずしも意味するのではないと考えています。
●「サービスの利用 ⇒ サービスの共創」
●「プラットフォーマーへの信用が基盤 ⇒ ユーザー同士の信頼が基盤」
●「金銭を通じた関与 ⇒ 加えて、非金銭的な貢献による関与」
 Web3.0はこうした変化や多様化を起こし、「デジタル技術の活用で社会課題を解決する」「イノベーティブなサービスを次々と生み出す」「働き方を多様で創造的なものにする」といった“既に掲げられた未来”の到来を加速化させるものです。この過程では、企業も、ユーザーである私たち個人も、互いに繋がり、協働することがより合理的な選択となっていくでしょう。これを可能とするのがWeb3.0であり、それを支える様々なデジタル技術なのですが、その説明は次回以降に述べたいと思います。

 今回、Web3.0という新しいWebの概念について、私なりの説明に挑戦してみました。実は、このメルマガではWeb3.0を支える中核的なデジタル技術や概念とされる「ブロックチェーン」、「NFT(Non Fungible Token)」、「DeFi(Decentralized Finance)」、「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」、「メタバース」といったものには敢えて触れていません。これら技術や概念が重要であることは確かですが、「これら全てを理解しなければWeb3.0は理解できない」とすると、あまりにも難易度が高くなりすぎます。むしろ、企業や個人が信頼と相互尊敬を基盤にどんどん繋がっていく中で、それぞれの“得意分野”を活かし互いに補完し合う世界、これがWeb3.0の世界観だと私は思っています。

 創発戦略センターで取り組んでいる活動がWeb3.0の時代においても価値を発揮していけるよう、本メルマガを通じてWeb3.0に関心を持ってくださる方々との繋がりを創っていきたいと思います。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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