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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.22,No.85

中国とインドの気候変動対策とグリーン・ファイナンスの動向

2022年05月11日 清水聡


2021年秋に開かれたCOP26では、気候変動への適応、気候変動の緩和、気候変動対策に対する金融などへの取り組みに関して多くの進展がみられた。しかし、この会議に先立って多くの国が更新した「国が決定する貢献」(Nationally Determined Contribution)に基づいた推計では、2030年の温室効果ガス(GHG)排出量は2010年対比約16%増となり、1.5℃目標を達成するために求められる▲45%には程遠い結果となる。世界のGHG排出量をみると、中国・インドを中心とする新興国の比率が大幅に上昇しており、排出量削減における役割が高まっている。今後の排出量予測をみても、新興国の増加が大きく、背景には高排出産業の成長がある。

中国は2060年のカーボンニュートラルの実現を掲げており、COP26直前にNDCを更新したが、仮にその内容を達成したとしても、2030年のエネルギー関連のGHG排出量は2010年対比20 ~ 28%増加すると推計されている。中国では再生可能エネルギーが順調に拡大しているものの、石炭開発には減速傾向がみられない。鉱工業分野においても、排出量削減の具体策は必ずしもみえていない。中国は2021年に電力危機に見舞われたという事情もあり、エネルギー転換は難しい課題となっている。一方、グリーン・ファイナンスは金融システムの約4%にとどまり、大幅な拡大を要する。これは中国経済全体の問題でもあるが、総じて民間部門の参加が不十分であり、グリーン・ファイナンスを民間部門の借り手に拡大していくことは容易ではない。

インドのNDCは、2015年に作成された当初のものから更新されていない。また、長期戦略(LTS)は提出されていない。2070年のカーボンニュートラルの実現を目指すとしているが、政策は具体化の途上にある。GHG排出量は、2020年代に30~40%増加すると推計されている。石炭による発電能力が拡大し続けているなど、中国と同様、脱炭素への課題は多い。グリーン・ファイナンスについては、金融システムに占める比率が極めて低く、まだ初期段階にあるため、政府による枠組みの強化が不可欠である。

COPにおいて、先進国から新興国へのグリーン投資関連のファイナンスを年間1,000億ドル以上とすることが目標となっている。これはいまだに達成されておらず、先進国の責任は重い。一方、化石燃料に基づく世界のGHG排出量はパンデミックにより2020年に急減したものの、2021年には回復がみられ、化石燃料によるCO2排出量の伸びが相対的に高い中国やインドの影響が大きくなっている。先進国には、新興国の気候変動対策に対する資金支援、技術支援、その他の知的貢献などが求められる。先進国と新興国がともに積極的にカーボンニュートラルの実現に向けて取り組む中で、新興国の自助努力と先進国の支援により新興国におけるグリーン・ファイナンスの拡大・確保を実現することが重要と考えられる。
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