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任意に設置する指名委員会の実態調査(前編)
―TOPIX100企業の2021年12月末時点のコーポレート・ガバナンス報告書をもとに―

2022年03月31日 國澤勇人


1.はじめに

 2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂は、上場企業に対し、取締役会の機能発揮、企業の中核人材における多様性の確保、ならびにサステナビリティをめぐる課題への取り組みを求め、2022年4月の東京証券取引所の市場区分見直しに対応させることで、各企業の取り組みを促した。筆者は上場企業の指名委員会・報酬委員会等の設計や運営を支援しているが、今回のコーポレートガバナンス・コード改訂により、これらの委員会の新規設計、運営方法の見直しを行う企業が増えている。
 折しも、先に述べた市場区分見直しの手続きにおいて、上場企業は改訂後のコーポレートガバナンス・コードに沿う形で「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」(以下「ガバナンス報告書」)を2021年12月末までに開示する必要があった。ガバナンス報告書には、指名委員会の有無、委員会の名称、委員数、委員の内訳(社内取締役と社外取締役の数)、委員長(議長)の属性が開示されており、コーポレートガバナンス・コードの改訂後の各社の指名委員会の最新情報を知ることができる。  
 一般的に、指名委員会(※1)は報酬委員会よりも諮問範囲の考え方に幅があり、委員会の設計・運営に関する悩みが多い。どの企業も、指名委員会の運営方法等について引き続き検討を要するところであるが、検討に際し、現時点の実態を把握しておくことには意味があるように思える。
 そこで今回は、TOPIX100企業のうち、監査役会設置会社ならびに監査等委員会設置会社における任意の指名委員会の状況をガバナンス報告書の記載をもとに調査したので、前編としてその結果を報告する。なお、後編は今回の調査結果や指名委員会設計・運営の支援を通して感じる今後の指名委員会設計・運営のあり方等について、いくつかの意見を申し述べることとしたい。

2.2021年コーポレートガバナンス・コード改訂における指名委員会の位置づけ

 まず、指名委員会に関連する2021年コーポレートガバナンス・コード改訂箇所を確認したい。改訂以前のコーポレートガバナンス・コード補充原則4⁻10①は、「任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することにより」と定めており、監査役会設置会社・監査等委員会設置会社において取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するための手段の例示であった。しかしながら、2021年の改訂後は、「指名委員会・報酬委員会を設置することにより」という形で明確に設置が求められている。また、この原則を実施しない場合には、当該原則を実施しない理由をガバナンス報告書に記載する必要がある。



3.調査方法

 今回の調査は、以下の要領において実施した。



4.調査結果

(1)指名委員会の設置状況

 まず調査対象企業75社中71社(95%)が指名委員会を設置している(図表2)。残りの4社については、指名委員会等を設置しない理由として、指名機能について独立社外取締役を含めて取締役会で議論を行っている、独立取締役の助言・関与を得る仕組みを講じている旨を、ガバナンス報告書において示している。



(2)指名委員会の人数・構成比率・議長の属性

 指名委員会の人数としては、全71社中31社(44%)が「5名」であり、それに次いで、「4名」「6名」が多くなっている(図表3)。詳細は後編で論じるが、秘匿性の高い議論をするがゆえに少数であることが適切であるとする考えもあれば、指名委員としての負担を分散させるべく一定の人数がいたほうが望ましいとする考え方もあろう。また、指名委員会が「取締役会に対する諮問機関」であるとする位置づけをふまえれば、取締役会との人数のバランスも考慮したほうが良いと考える。



 次に、指名委員会における社外取締役と社内取締役の構成比率としては、大多数の65社(92%)が「社外取締役が過半数」となっている(図表4)。指名委員会の目的が、指名機能の独立性・客観性と説明責任を強化するためであり、また、コーポレートガバナンス・コード4⁻10①においても「独立社外取締役を主要な構成員とする独立した指名委員会・報酬委員会」との記載があり、妥当といえよう。なお、議長を社外取締役が務める会社は、71社中52社(73%)であった(図表5)。



(3)指名委員会と報酬委員会の関係、指名委員会の名称

 指名委員会と報酬委員会を1つにして指名報酬委員会等の名称にするか、もしくは、指名委員会と報酬委員会は別の委員会とし、委員会メンバーも別にするか、の点については、委員会設計時に検討する必要がある。
 この点、ガバナンス報告書では、指名委員会と報酬委員会の名称を開示する項目があり、指名委員会の名称と報酬委員会の名称が同じである場合には、1つの委員会であると判断して、調査を行った。
 図表6のとおり、現時点では、指名委員会と報酬委員会は別の委員会とする企業が71社中38社社あり、1つの委員会とする企業をわずかに上回っている。もちろん、どちらが正解というものではなく、各社の社外取締役の人数や、委員会における諮問事項をどのように考えるかによって決めるべきものと考える。
 なお、指名委員会と報酬委員会が別の場合における指名委員会の名称は、「指名委員会」もしくは「指名諮問委員会」が38社中28社(約75%)であり、その他、「人事諮問委員会」「人事委員会」「役員指名会議」「役員人事案検討会議」「役員人事案策定会議」「取締役・監査役選任審査委員会」があった(図表7)。




(4)指名委員会の年間開催回数

 指名委員会の開催頻度については、ガバナンス報告書において必須の記載ではないが、積極的な情報開示が望まれることをふまえ、補足事項等において追記している企業も多い。指名委員会を設置する71社中43社(61%)が開催頻度を明記しており、それによれば「2回」「3回」「4回」が過半数を占める。開催回数は諮問事項によって定まるものであり、必ずしも多ければ良いものではない。現実的には、取締役会と同一の日程に、取締役会開催時間の前後に開催することが多く、時間的な制約もある。しかしながら、指名委員会の場合には、議論すべき範囲は、報酬委員会よりも定型的に定められない面があり、その分、議論に時間を要する。筆者の感覚としては、年間4回の議論では、形式的な議論にとどまってしまう懸念があるように思える。



 後編では、今回の調査結果や指名委員会設計・運営の支援を通して感じる今後の指名委員会設計・運営のあり方等について、いくつかの意見を申し述べたい。

(※1) 以降、本稿における「指名委員会」とは、「監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社における、指名委員会に相当する任意の委員会の総称」と指すものとし、必ずしも名称が「指名委員会」でなくとも、これに含まれるものとする。
以上


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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