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保険外サービス活用推進等に関する調査研究事業

2022年04月11日 紀伊信之福田隆士、小幡京加、田上はるか、濱田樹


*本事業は、令和3年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、高齢者の多様なニーズに対応したサービスが充実していくことが重要であり、そのためには、介護保険制度に基づくサービスはもちろんのこと、保険給付の対象とはならない民間サービス(保険外サービス)が充実することも重要である。
 こうした保険外サービスと介護保険サービスとの組み合わせについては、平成30年の通知「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」において、基本的な考え方が整理されている。
 さらに、令和2年度には、「保険外サービス活用推進に関する調査研究事業」が実施され、訪問介護と保険外サービスの同時一体的提供、指名料・時間指定料の徴収に関するルールの検討や課題の整理等が行われた。この検討においては、訪問介護事業者向けのアンケート等から、指名料、時間指定料等については訪問介護事業者側の対応意向が低いことや、追加費用を負担できる利用者とそうでない利用者に格差が生じる可能性などが指摘され、「現時点における検討の優先順位は高くない」と結論づけられた。一方で、同時一体提供については、指名料、時間指定料と比較して、事業者側から一定の対応意向が確認できた。また、消費者(利用者・家族)からも同時一体提供に対する一定の要望があることが確認できたことから、ルールの明確化に向けたさらなる検討の可能性が示唆された。
 そこで、本調査研究においては、仮に今後同時一体提供を認めるとした場合に必要なルールや想定される課題・その対応策等について検討を進め、取りまとめを行った。それに加えて、これまで主たる調査対象となっていなかった多機能系等サービスにおける保険外サービス・保険外相当のサポートについて、アンケート調査により実態把握を行った。なお、調査対象は小規模多機能型居宅介護(以下「小多機」と表記)、看護小規模多機能型居宅介護(以下「看多機」と表記)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下「定期巡回」と表記)とした。

2.事業概要
 有識者や自治体関係者等からなる委員会を設置し、以下について、検討並びに取りまとめを行った。

(1)同時一体提供に関する深堀検討
 今後仮に同時一体提供が認められた場合に必要なルールに関する検討を行うとともに、同時一体提供に係るニーズや、同時一体提供を認めた場合に懸念される課題を整理し、その対応策に関する検討を行った。

(2)「多機能系等サービス」における保険外サービス、保険外相当のサポートの実態把握
 小多機・看多機・定期巡回における現行法規の確認や先行研究の内容を整理した上で、調査内容の検討を行い、全国の小多機・看多機・定期巡回事業所を対象とするアンケート調査を実施した。

3.主な事業成果と今後の検討課題

(1)同時一体提供に関する深堀検討
 今後、仮に同時一体提供が認められた場合に必要なルールに関する検討を行い、同時一体提供の対象サービス、保険外部分(家族への支援分)の費用のあり方、同時一体提供の場合の介護保険内外の区分(請求の仕方)に関する考え方等について議論を行った。
 同時一体提供については、消費者の選択肢を増やすという観点や、ケアラー支援による在宅の生活の維持につながることが考えられ、また消費者から一定のニーズがあることが確認されている。さらに、訪問介護事業者側から見ても、同時一体提供が認められることによる収益の向上を期待する声が多いことが確認されている。
 一方で、同時一体提供には以下の課題・リスクが伴うことも指摘され、下記の課題について検討が行われた。
 ①介護サービスの提供時間の実態把握が難しくなること
 ②介護保険の健全性担保(不要な介護保険サービスの誘引を防ぎ、本来の目的である自立支援を担保すること)
 ③介護人材の保険外サービスへの流入
 ④消費者保護
 こうした同時一体提供に係る課題については、引き続き慎重な検討が必要である。
 なお、出来高払いの介護給付については上述の課題がある一方、包括報酬型の給付等は特に時間管理の課題が少ない。例えば包括報酬である総合事業等において、地域づくりの観点からも、地域の実情に応じた同時一体提供による生活支援が推進できないか、今後検討していくことも考えられる。

(2)「多機能系等サービス」における保険外サービス、保険外相当のサポートの実態把握
 各対象に対する調査結果の概要は以下のとおりである。

①小多機事業所向け調査結果
 ・利用者本人向けに、「嗜好品の買い物」、「化粧・整髪」、および金融関連の手続き代行等については、4割以上の事業者が無償または基本サービスとして提供している。
 ・「化粧・整髪」で1割程度の事業者が有償で実施しているが、その他の支援においてはほとんどない。また、過去に有償で提供したことがあるだけで、直近で実績がないケースも多い。
 ・家族向けの各支援については、全体として「要望を把握しておらず、いずれも実施していない」と回答している割合が高い
 ・通いサービス・宿泊サービス利用時の「事業所でのコンサート・観劇会・落語」、「事業所内での出張販売・買い物サービス」、「外食同行」、「地域活動への参加・友人との喫茶など社会参加のための付き添い」、「冠婚葬祭・墓参り等への付き添い」については、2割から3割程度の事業者が「無償で支援している、もしくは基本サービスとして提供している」と回答している。

②看多機事業所向け調査結果
 ・全体的な回答傾向は小多機に近いが、「地域活動への参加・友人との喫茶など社会参加のための付き添い」については無償または基本サービスとして提供している割合が低い傾向にあり、小多機とはやや異なる結果となった。

③定期巡回事業所向け調査結果
 ・利用者本人向けの各支援について、小多機と比較すると「有償で実施している」を選択している割合が全体的に高く、「無償で支援している、もしくは基本サービスとして提供している」と回答している割合は全体的に低い。「要望はあるがいずれも実施していない」と回答している割合も全体として高い。
 ・家族向けの各支援については、小多機と同様、全体として「要望を把握しておらず、いずれも実施していない」と回答している割合が高い。
 ・特定の集合住宅のみにサービス提供している集合住宅型と、そうではない地域展開型で、提供実態や提供意向が異なる。

※詳細につきましては、下記の報告書および別添資料をご参照ください。
報告書

【本件に関するお問い合わせ】
 リサーチ・コンサルティング部門 高齢社会イノベーショングループ
 部長(プリンシパル) 紀伊信之
 TEL:080-1203-5178 E-mail:kii.nobuyuki@jri.co.jp
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