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【北京便り】
中国全人代における低炭素関連ホットワード

2022年03月23日 王婷


 中国では、第13期全国人民代表大会第5回会議が3月11日に閉幕しました。
 低炭素・カーボンニュートラルは、依然として注目すべき重点分野と位置付けられました。今年の関連する政策提案は、昨年と比較して具体性があり、専門性が高いと評価されています。排出権取引市場、炭素先物、炭素税、ポイント制、産業分野別のカーボンニュートラルに関する政策提案に加え、二酸化炭素フットプリント管理システムの確立、二酸化炭素排出量に関する中国と欧州の相互承認など、盛りだくさんの提案内容となりました。

 代表的かつホットなキーワードを以下に整理してみました。
 最も注目度が高かった政策提案は、EV用電池で世界最大手と言われる寧徳時代新能源科技(CATL)のCEOである曾毓群氏によるものでしょう。「電池の炭素フットプリントに関する研究の加速と中欧の相互認証メカニズム構築」をテーマとし、3点の提案があげられました。「①中国が有する完備な産業チェーンと豊富な応用データを生かし、中国の電池カーボンフットプリント方法論の研究を加速。中国と欧州の間で電池製品のカーボンフットプリントに関する試算手法の相互承認を推進。②中国の電池産業チェーンの炭素排出係数のデータベースを構築し、国際社会に発信する。③グリーン電力認証に関する国際協力を強化し、中国の電池産業の発展や製品に適用できるグリーン認証管理システムを検討し、ブロックチェーン、5G、Internet of Thingsなどのデジタル技術による権利確認を行う」というのが、その内容でした。

 同じくカーボンフットプリント手法構築を提案したのは、シャオミの雷軍氏です。その提案では、「新エネ車のカーボンフットプリント会計について、管理システムを構築し、新エネ車産業チェーン全体のカーボンフットプリント会計標準と方法を開発し、データプラットフォームを構築し、カーボンフットプリント認証、評価、奨励メカニズムを改善する」を謳っています。
 2020年12月、EUは、「電池規制草案」を公表しました。また、2021年7月に「炭素国境税規制メカニズムの確立に関するEUの提案」を策定しました。両者は現在、立法段階途上にあります。電池産業と新エネ車産業は中国においても、リーディング産業であり、グローバル市場でこの優位性を確保するためには、カーボンフットプリントの計測・表示のルール整備が欠かせないとの認識から、今回の提案に至ったものだと見て取れます。

 次に、排出権取引市場に関連する提案も多くみられました。中国は世界最大の炭素排出権取引市場を有しているにも拘わらず、炭素排出権を金融商品と結び付ける発想が十分でなく、市場の活性化と今後の展開の足かせになっていると見られています。
 中信建設の会長は、「全国の炭素市場建設の更なる改善に関する提案」をテーマに、「炭素市場関連法整備を加速化し、かつての銀行業監督管理委員会(CBRC)のような管理監督機能を持つ『炭素規制委員会』などの規制機関を設立し、より多くの市場参加主体を招聘し、炭素取引、炭素資本管理などの分野におけるライセンス管理、基準の策定、関連業界の標準化と専門化を指導することが望ましい」と述べました。
 奇瑞汽車(チェリー・オート)の会長は、「使用段階における新エネ車の炭素排出量削減の有効性を考え、自動車産業を炭素排出管理に統合すれば、炭素取引の市場化を利用し、伝統的自動車メーカーが新エネ車へ転換することを促すことができる」と提案しました。
 総合電気メーカーのTCLの会長は、個人の炭素排出に注目し、「個人炭素排出権割当パイロット事業」をテーマに、「統一した個人炭素排出測定プラットフォームを構築し、全国の住民の炭素排出量測定の統一アカウントを構築することで、低炭素ライフスタイル、グリーン消費に対する国民の意識を高めよう」と提案しました。

 最後に、注目したいのはブルーカーボンに関する提案です。テンセントの会長である馬氏は、「グレートベイ地域のブルーカーボン生態系の基礎調査を行い、戦略を作成し、データネットワークシステムを確立し、ブルーカーボンの主要技術への研究投資を増やし、ブルーカーボン価格メカニズムを探索し、海洋炭素排出権取引を支援する」と提案しました。同じく海南省の代表団も、海南海洋生態系の炭素排出権パイロット事業を実施すると提案しました。

 二酸化炭素排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの実現に向けて、全人代の席上、習近平国家主席は、目標の実現に向け、「グリーン変革は一夜にして実現するものではなく、さまざまなプロセスを経なければならない。「先立後破」(新しいシステムを確立してから壊す)が必要である。石炭が豊富で、石油が少なく、ガスが少ないというのが、わが国が直面する状況で、石炭が支配するエネルギー構造を短期的に根本的に変えることは難しい。目標を達成するためには、国の状況に基づき、安定を維持しながら進歩を遂げる」と強調しました。ここからは、現実路線で着実に目標に向けた取り組みを進めていく姿勢を見て取ることができます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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