■世界的なEVシフトで豊富なニッケルが武器 世界的にガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトが進むなか、世界最大のニッケル埋蔵量を保有し、生産量もトップであるインドネシアに注目が集まっている(右上図)。現在、多くのEV用電池には、リチウムやコバルトと共にニッケルが重要な原材料として使われている。今後、EVの生産台数が増加するにつれて、EV用電池の需要増加とともに、その原材料の需要も増加することが見込まれる。International Energy Agencyは、ニッケルの需要が2040年までに2020年の20~25倍に増えると予測している。また、米国のバイデン政権が発表した「重要製品に関するサプライチェーン強化に向けた報告書」によると、ニッケルは電池のエネルギー密度を向上させることを目的に正極材としての需要が高まり、今後3~7年で需給が大幅にひっ迫する可能性が指摘されている。
なお、米国エネルギー省は、2021年6月に発表した「National Blueprint for Lithium Batteries」のなかで、サプライチェーン強化に向けて2030年までにニッケルを使わない電池の開発目標も示している。EV用電池については技術革新の面でもこうした不確定要素が存在し、インドネシアの産業高度化政策にとって大きなリスクとなり得ることにも注意する必要があろう。