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自動運転における「走行環境の安全性確保」に関する考察

2022年01月25日 尾形アンドリュー翔


 当社は、自動運転移動サービスの社会実装とサービス横展開を目指す事業者を支援する「RAPOCラボ(Risk Assessment Process Of Community-Vehicle Lab、ラポックラボ)」を2020年11月に設立した。2021年度も活動を継続し、自動運転移動サービスで具体的な論点となる『許認可を含む地域の合意形成』 と『走行環境の安全性確保』の検討を進めている。

 自動運転移動サービスの早期実装を目指すには、自動運転システムの性能向上だけでなく走行環境の安全性確保も重要となる。例えばガードレールを設置するなどの対策により、交通事故の発生を本質的に除去できる。しかし、これまで自動運転移動サービスの実証が様々な地域で行われたが、走行環境の安全性を確保する明確なフレームワークが存在しないことから、各地域における安全対策は、それぞれ個別に、一から検討されてきた。結果として、安全対策を効率的に講じることができず、ある地域の知見を他の地域に展開されることもほとんどなかった。ラポックラボでは、これら課題の解決に向け、以下を中心に検討を進めている。

1.道路構造単位に着目したブロックベース型ODDの定義手法
 国土交通省は、自動運転車の運行設計領域(ODD)において、自動運転システムが引き起こす人身事故(合理的に予見される防止可能な事故)が生じないことを、自動運転車両システムの性能として求めている。このため、自動運転車両システムの設計者は、様々なリスクを想定して、“合理的に予見される防止可能な事故”が生じないよう安全設計を行おうとしているが、現時点では、政府はODD定義手法やリスクを合理的に予見する考え方・基準を具体的に示していない。
 当社ではODDの定義手法や安全性確保に向けたリスクを特定化するフレームワークの策定を目指している。走行環境(道路+周辺環境)に着目すると、自動運転車両の走行リスクは、「①道路構造×②自動運転車両進路」を1単位としてリスクの特定化が行える。例えば、「①十字路×②右折」や「①単路(右カーブ)×②直進」等をそれぞれ1単位とみなして安全性評価をしていく。このような手法に従って走行経路を一通り評価していくことで、走行経路上で特に注意すべき場所が明らかになり、適切に安全対策を施せるようになる(これを我々は「ブロックベース型ODD定義手法」と呼んでいる)。

2.各ODD定義に応じた安全対策の指針
 当社で検討を進めるブロックベース型ODD定義手法を活用すれば、考慮すべき領域が各道路ブロックの範囲内に限定されることから、交通事故リスクも予見しやすくなる。具体的には、「①事故対象の種別×②事故対象の進路」の組合せ表現で事故の類型化を可能にしている。例えば、「①十字路×②右折」の道路ブロックにおいて、対四輪車・二輪車・歩行者を事故対象の種別とし、事故対象の進路は正面・同方向・左・右の四方向からとする。これにより、道路ブロック内に存在する具体的なリスクの特定が可能となり、ガードレールや中央分離帯の設置等、具体的な安全対策の検討ができるようになる。

 今後、検討しているブロックベース型ODDの定義及びリスクの特定方法を活用することにより、これまで考慮されなかったリスクを洗い出すことができ、運行経路全体の安全対策を施せるようになる。こうした方法論は運行事業者と地域関係者の合意形成を図る際にも役立つものとなると考えられる。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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