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中国グリーン金融月報【2021年12月号】

2022年01月12日 王婷


「中国グリーン金融月報」12月号をお届けします。

1.今月のトピックス
【国家発展改革委員会など9部門】気候投融資パイロット事業に関する通達
 国務院弁公室の「国家級新区の改革創新の深化の支援、質の高い発展の加速に関する指導意見」(国弁発[2019]58号)、「気候変動対応の投融資の促進に関する指導意見」(環境気候[2020]57号)に関連する計画として、生態環境部、国家発展改革委員会、工業情報化部、住宅都市農村開発部、国務院国有資産監督管理委員会、国家管理局、中国銀行保険監督管理委員会、証券監督管理委員会などが「気候投融資パイロット事業に関する通達」を作成した。
 目標について、3~5年の努力により、気候投融資に資する政策環境を形成し、気候に優しい市場プレーヤーを育成し、気候投融資発展モデルを模索し、気候投融資に関する国際協力プラットフォームを構築し、資本、人材、技術など様々な要素資源が気候投融資分野に完全に集まるようにするという。
 8つの重点任務が設定された。①試行プロジェクトの実施計画策定 ②「高いエネルギー消費・高い炭素排出」プロジェクトの開発を抑制 ③炭素金融の秩序ある発展 ④炭素会計と情報公開の強化 ⑤ビジネスモデルと手段の革新の強化 ⑥政策の相乗効果の強化 ⑦気候投融資プロジェクトのデータバンクの構築 ⑧人材の構築と国際交流・協力の強化である。
 特に、炭素金融の秩序ある発展について、試行地域が積極的に全国炭素市場の建設に積極的に参加するよう指導し、炭素金融商品の開発とマッチングを研究し、促進し、炭素市場取引に活力を与えるとされた。試行地域の地方金融機関が、法令遵守とリスク管理を前提に、慎重かつ秩序の方法で、炭素基金、炭素資産担保融資、炭素保険などの炭素金融サービスを模索し、金融リスクを防止し、炭素金融に関する革新的発展を促進するよう奨励するという。
 実施対象地域について、国家級開発区や気候変動適応のモデル都市を優先とし、低炭素モデル都市、低炭素工業園、グリーン金融改革・イノベーションパイロット区などが挙げられた。
2021-12-23 生態環境部
https://www.mee.gov.cn/xxgk2018/xxgk/xxgk05/202112/t20211224_965174.html
コメント: CO2ピークアウトとカーボンニュートラルを実現するためには、百兆元から数百兆元の投資が必要だといわれている。一方、現状この分野に投入できる政府の財政資金は毎年数千万元にとどまっている。気候変動対応の資金の問題を解決する方法として、多方面の施策や投資が必要なことは言を俟たない。政府の財政資金だけではなく、多くの民間資金を気候変動分野に誘導し、気候変動の取り組むための潤沢な資金源を確保するという狙いのもと、このモデル事業をスタートしたといえる。
 パイロット事業を通じて、資金を気候変動分野へ動員し、インセンティブやメカニズムを模索し、普及可能な手法を確立することが目標である。炭素基金、炭素資産担保融資、炭素関連の先物、炭素保険など金融商品の開発が今後検討されていくだろう。

2.今月のニュース
(1)-① 中央政府・グリーン金融
【中国人民銀行】 中小企業向け金融サービス及びグリーン金融に関する記者会見

 12月30日、中国人民銀行は中小企業向け金融サービスとグリーン金融に関する記者会見を行い、王信研究局局長や孫国鋒金融政策局長など出席した。
 2021年8月に公表した「金融機関グリーン金融評価方案」の進捗と今後の注力課題という質問に対して、王信研究局局長は「人民銀行は、今後主に3つの側面から金融機関のグリーン財務評価をさらに向上させる予定だ。まず、データの質を向上させ、グリーン財務データの統計・公開のためのオープンで透明性の高い、権威ある統一的なメカニズムの確立を模索する。より正確で包括的なデータがあれば、評価はより正確で効果的なものになる。第二に、評価対象をさらに拡大し、より多くの種類のグリーン金融商品・サービスを評価制度に含めるべきである。第三に、シナリオの活用を充実させ、評価のインパクトを高めることである。今後、いくつかの効果的な規制措置や金融政策スキームを評価した結果と連動させ、金融機関がグリーン金融ビジネスを行うためのインセンティブを高め、グリーン金融ビジネスの発展を促進する可能性を探っていく」と回答した。
 「炭素排出削減支援スキーム」と「石炭クリーン化・高効率化特別再融資」の進捗状況については、「中国人民銀行は、関連金融機関に855億元の炭素排出削減支援スキームの第一陣を発行し、金融機関が合計2817社の企業に対して条件を満たす1425億元の炭素排出削減融資を行うよう支援し、約2876万トンの炭素排出削減を実現した」という。
http://www.pbc.gov.cn/goutongjiaoliu/113456/113469/4436065/index.html

【中国人民銀行上海本店】 「上海における銀行金融機関のグリーン財務評価実施細則」を公表
 中国人民銀行上海本店は「銀行金融機関のグリーン財務評価プログラムの発行に関する中国人民銀行の通知」(銀発[2021]第142号)の作業要項に従い、このほど「上海における銀行金融機関のグリーン財務評価実施細則」を制定・公表し、上海にある銀行金融機関のグリーン財務評価を行う。
 実施規則では、グリーン金融評価の対象は上海にある銀行系金融機関の法人であり、現在に評価範囲にされたグリーン金融業務は、国内グリーン融資、国内グリーンボンドを含む。グリーン金融評価作業は四半期ごとに行われ、評価結果は人民銀行の金融機関格付けに反映すると明記されている。
 グリーン金融の評価指標には定量的なものと定性的なものがあり、定量的な指標に80%、定性的な指標に20%のウェイトをおいている。定量的な指標としては、グリーン金融事業の全体に占める割合、グリーン金融事業全体の前年比成長率、グリーン金融事業全体のリスク割合などがあり、残高と成長率、事業量と資産の質の両方をカバーしている。定性的な指標としては、国や地方のグリーン金融政策の実施、グリーン金融システムの整備と実施、グリーン産業育成のための金融支援などがあり、これらは9つの指標と28ポイントに細分化されている。これまでのグリーンクレジット実績評価と比較して、今回のグリーン金融評価では、定性的指標の全体設計がより明確化され、環境・気候関連指標の重要性がより際立っている。
 今後、グリーン金融の評価は、中国人民銀行長江デルタグリーン金融情報管理システムを通じて行われる予定である。
2021-12-30 中国人民銀行上海本店
http://shanghai.pbc.gov.cn/fzhshanghai/113571/4435959/index.html

【生態環境部】全国炭素取引市場最初の契約履行期間が成功裏に終了
 2021年12月31日、全国炭素排出権取引市場の最初の契約履行期間が無事終了した。発電部門の主要排出企業2,162社が、国内炭素市場に組み入れられ、年間約45億トンの温室効果ガス排出をカバーした。
 7月16日に開始されて以来、全国炭素市場は114日に及ぶ取引日において取引がなされ、累積取引量は1億7900万トン、累積取引額は76億6100万人民元となった。12月31日の終値は1トンあたり54.22元で、取引開始日の7月16日に比べて13%上昇。
2021-12-31 生態環境部
https://www.mee.gov.cn/

【輸出入銀行】2021年第1回グリーン金融ボンドを発行
 最近、輸出入銀行は全国銀行間債券市場で「2021年グリーン金融債」の初発行に成功した。期間は5年、発行規模は50億元、クーポンレート2.48%、完全引受倍率6.15倍であった。欧州、日本、米国など世界10以上の金融市場から70以上の投資機関が参加した。調達された資金は、白鶴灘水力発電プロジェクトの建設・運営を支援する専門資金として使用されるという。
2021-12-26 中国金融新聞網
https://www.financialnews.com.cn/yh/sd/202112/t20211231_236557.html


(1)-② 中央政府・「3060目標」、その他
【工業信息部】 「第14次産業グリーン発展5ヵ年計画」発表

 計画では、2025年までグリーン発展目標について、「エネルギー効率が着実に向上し、一定規模以上の工場の付加価値あたりのエネルギー消費率が13.5%削減。 資源の利用水準が大幅に改善され、産業廃棄物総合利用率が57%に達し、再生可能資源のリサイクル量が4億8千万トンに達するとともに、産業付加価値単位あたりの水の消費量が16%削減、汚染物質の排出原単位が大幅に削減され、主要産業の主要汚染物質の排出原単位が10%削減。重点産業、重点地域のグリーン製造体系が基本的に完成し、グリーン環境保護産業の生産高が11兆元に達する」と記載された。 
 また、「1つの行動に集中し、2つの体系を構築し、6つの変革を推進し、8つのプロジェクトを実施する」という全体的な作業内容を打ち出した。すなわち、産業分野のCO2ピークアプト行動の実施に集中し、グリーン低炭素技術体系とグリーン製造支援体系の構築に注力し、ハイエンド産業構造、低炭素エネルギー消費、資源循環、クリーン生産プロセス、グリーン製品供給、デジタル生産方式など6つの方向へ産業転換を推進し、産業分野CO2ピークアウト推進プロジェクト、重点地域グリーン転換・高度化プロジェクトの実施をサポートする。これに伴い、産業分野の省エネ・エネルギー効率化推進プロジェクト、資源有効利用推進プロジェクト、工業節水高効率利用プロジェクト、重点産業クリーン生産改造プロジェクト、グリーン製品・省エネ・環境保護設備供給プロジェクト、グリーン低炭素技術推進・応用プロジェクトなどの8大プロジェクトを実施するという。
2021-12-5 人民日報
http://www.gov.cn/xinwen/2021-12/05/content_5655915.htm

【中央経済工作会議】 カーボンピーク・カーボンニュートラルについて正しく理解・把握
 12月8日から10日にかけて、北京で中央経済工作会議が開催された。習近平は会議で重要な演説を行い、2021年の経済活動を総括し、現在の経済状況を分析し、2022年の経済活動を展開することを表明した。
CO2排出のピークアウトとカーボンニュートラルについて、以下の点を強調した。
 ①「目標の達成を正しく理解し、把握することが重要である。カーボンニュートラルの実現は質の高い開発を推進するための要件であり、推進は義務である。 ②一度にすべてを達成することは不可能であり、全国の統一調整、省エネを優先、内外の二輪駆動、内外に連携、危険を防止するという原則を守らなければいけない。 ③伝統的なエネルギーから徐々に撤退していくには、安全で信頼できる再エネへの代替を基礎に構築する必要がある。石炭をベースとした国情に基づき、クリーンで効率的な石炭利用を把握し、再エネの受け入れ能力を高め、石炭と再エネの最適な組み合わせを推進する必要がある。 ④グリーン・低炭素技術の研究開発には細心の注意を払う必要がある。科学的な評価を行い、新規に増加した再エネをエネルギー総消費量制御に含めないようにし、エネルギーの「ダブルコントロール」から炭素排出量と原単位の「ダブルコントロール」へできるだけ早く移行する ⑤汚染や炭素を減らすためのインセンティブと制約メカニズムの形成を加速し、単純に目標の分解だけにしてはいけない。 ⑥エネルギー供給を確保するためには、大企業、特に国有企業が率先して供給と価格の安定を図る必要がある。エネルギー革命を推進し、エネルギー強国づくりを加速させなければならない。
2021-12-16 新華社
http://www.greenfinance.org.cn/displaynews.php?id=3579

【生態環境部】 「企業環境情報の法定開示管理弁法」を公表
 12月11日、生態環境部は「企業環境情報の合法的開示に関する管理弁法」を公表した。2022年2月8日より施行される。
 環境情報の開示の主体について、①重点排出単位 ②クリーン生産審査を義務化される企業 ③所定の状況にある上場企業、債券発行企業 ④法に基づく環境情報の開示を求める企業、とした。
 開示の内容について、①企業の基本情報 ②企業の環境管理情報 ③汚染物質の発生・処理・排出 ④炭素排出情報 ⑤生態環境応急関連の情報 ⑥生態環境違法情報 ⑦年度の臨時環境情報開示状況 ⑧法定その他環境情報 である。 クリーン生産監査を義務化される企業には上述した8種類の情報に加え、強制的なクリーン生産監査を義務化される理由、実施状況、評価・受入結果などの情報を開示すると求められている。上場企業や債券発行企業は8種類の情報開示に加え、投資先プロジェクトの気候変動や生態系保全に関する情報開示が求められている。
 環境情報開示の管理について、市レベル以上の生態環境主管部門は、関連規定に基づき、法律に基づく環境情報の開示を企業の信用評価の重要な指標として企業の信用管理に組み入れ、環境情報の開示要求に違反した場合に企業に科される行政処罰に関する情報を信用記録に記録するものとする。
2021-12-21 生態環境部
https://www.mee.gov.cn/xxgk2018/xxgk/xxgk02/202112/t20211221_964837.html

【中国気象局】中国初の温室効果ガスとカーボンニュートラル監視・評価システムが完成
 中国気象局によると、気象部門が構築したグローバルバックグラウンド局(1カ所)、地方都市バックグラウンド局(6カ所)、衛星地上局(6カ所)、46の地方局で採集した高精度の二酸化炭素濃度データに基づき、中国初の温室効果ガスとカーボンニュートラル監視・検証評価システムが完成したという。人工炭素フラックス変化と自然炭素フラックス変化を識別することができる。
 このシステムを通じて、温室効果ガスインベントリの精度を高め、異なる産業が報告する炭素排出データの精度を比較し、各省・地域や産業における主要排出源の温室効果ガス排出量と排出削減の可能性を把握し、排出削減目標の実施を監視し、各級政府部門の意思決定に包括的で確かな情報とデータをよりよく提供することができる。
2021-12-22 中国経済網
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1719647367436150756&wfr=spider&for=pc

【国家発展改革委員会等】第14次5カ年計画期間中園区循環化改造に関する通達
 12月15日、国家発展改革委員会と工業信息部が、工業園区のグリーン・低炭素循環型発展を加速させるため、工業園区の循環化改造に関する通達を公表した。
 目標について、2025年末までに、省レベル以上のすべての工業団地(経済技術開発区、ハイテク産業開発区、輸出加工区、その他の種類の工業団地を含む)が循環化転換を実施し、団地のグリーン、低炭素、循環型開発のレベルを向上させる予定である。 リサイクルトランスフォーメーションにより、園区内のエネルギー、水、土地、その他の資源の利用効率が大幅に改善され、二酸化炭素、固形廃棄物、廃水、主要大気汚染物質の排出が大幅に削減する。
 主要任務について、①産業の空間配置を最適化 ②産業リサイクル連携の推進 ③省エネ、CO2削減を推進 ④資源の効率的利用と総合活用を促進 ⑤汚染管理の集中化を強化、と定められている。
 2022年6月末までに、各地域の第14次5ヵ年計画園区のリストと各園区の循環化転換の期待効果を国家発展改革委員会と工業信息部に報告するようにと指導もなされた。
2021-12-15 国家発展改革委員会
https://www.ndrc.gov.cn/xxgk/zcfb/tz/202112/t20211220_1308649.html?code=&state=123


(2)-① 地方政府・グリーン金融
【武漢】100億元の「炭素大豊基金」+投融資プラットフォームが武漢に誕生、国家炭素金融センターを構築

 12月1日、武漢金融城で「長江ダブルカーボン行動パートナーシッププラットフォーム」が設立された。このプラットフォームは、武漢生態環境局、江漢区政府、三峡電力有限公司などと多くの金融機関と協力して、構築されたグリーン低炭素産業と金融のマッチングプラットフォームである。これに先立って、武漢市政府、中央企業、上場企業が共同で100億元の「武漢炭素大豊基金」が設立され、再エネなど炭素排出削減プロジェクトに重点的に支援するという。
 今後、武漢市は炭素関連の産業と金融の融合を加速するため注力する予定である。武漢炭素取引登録所は、生態環境部が実施する気候投融資試行事業に応募し、炭素ファクタリング、カーボントラストなどの操業許可を申請する機関のためにグリーンチャネルを確立し、気候債券と炭素債券の登録を受け付ける予定である。
2021-12-1 潇湘晨報
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1717944387746301573&wfr=spider&for=pc

【上海】 「上海市における炭素排出権担保融資運用ガイドライン」を正式発表
 このほど、中国人民銀行上海本店、上海市銀行保険監督局、上海市生態環境局が共同で「上海市における炭素排出権担保融資運用ガイドライン」を発表した。ガイドラインにおいては、融資条件、炭素排出権の価値評価、炭素排出権質権登録及び質権処分などについて20の具体的指導意見を提示し、炭素排出権担保業務プロセスを明確にし、金融機関が炭素金融の分野で積極的に革新を実践することを支援するものだという。
2021-12-8 Sina財経
https://finance.sina.cn/esg/2021-12-08/detail-ikyakumx2654204.d.html

【深圳市】深セン市人民政府が「深圳市炭素ポイントシステム建設作業計画に関する通達」を公表
 深圳市政府が、12月13日、「深圳市炭素ポイントシステム建設作業計画に関する通達」を公表した。グリーン生産とグリーンライフスタイルを推進し、カーボンニュートラルを実現するために策定されたものである。
 目標について、2021年までに、炭素ポイントシステムの上流設計を完了させ、関連の制度や基準、方法論を構築し、炭素ポイントシステム認証削減量取引メカニズムを完備し、インセンティブメカニズムを確立する。2022年までに、統一プラットフォームを構築し、炭素ポイントや排出権取引市場との連携、交換、取引を徐々に実現し、健全な制度、管理規則、炭素ポイントシステム運営メカニズムを確立する。2023年までに、炭素ポイントシステムを完備し、明確なルールと手続き、豊富な応用シーン、持続可能なビジネスモデルを備えたエコロジーが形成する。
 今後の具体的取り組みついて、専門推進チームの設置、炭素ポイント管理方法を作成、炭素ポイント方法論の開発、低炭素シナリオ評価規則の開発、排出削減量と炭素ポイント交換ルールの開発、低炭素シナリオの構築(交通や生活分野など)、認証排出削減量に基づく取引メカニズムの構築、財政支援の強化などが重点任務として挙げられた。
2021-12-13 深圳市政府
http://www.sz.gov.cn/zfgb/2021/gb1222/content/post_9447776.html


(2)-② 地方政府・「3060目標」、その他
【広東省】広東省燃料電池自動車実証応用都市群、水素エネルギー産業プロジェクト10件に調印

 12月8日午前、佛山市南海区の西樵山文化センターで、「2021国連開発計画水素エネルギー産業会議」が開催された。
2021-12-9 北極星氢能網
https://chuneng.bjx.com.cn/news/20211209/1192599.shtml


(3) 業界・金融機関
【農業銀行】初の新エネ車ダブルポイント収益権担保融資を発行

 中国農業銀行湖北黄岡支店は先ごろ、新エネ車担保融資「グリーンカー融資」の発表会を開催し、湖北興匯新エネルギー知能汽車有限公司に1000万元の融資を提供した。
 グリーンカー融資は、農業銀行湖北支店が乗用車の「ダブルポイント」制度(※1)に基づき作った炭素金融商品である。新エネ車企業が保有するポイント数を短期と長期の収益と見なし、それを担保にし、新エネ車企業に対して融資を提供するということである。
 中国農業銀行湖北支店は、「新エネ車ダブルポイントの収益権担保に関する運用指針」を策定し、「グリーンカー融資」のさらなる普及を試みている。
2021-12-1 新華網
http://www.xinhuanet.com/money/20211201/379e29c1c6414781b8037ee2421ff81b/c.html

ハンガリー、中国でグリーンソブリンパンダ債10億元を発行
 ハンガリー政府は14日、中国の銀行間債券市場で満期3年の10億元のグリーンソブリンパンダ債の発行に成功した。海外の国が中国でグリーンソブリンパンダ債を発行するのは今回が初めてである。
 パンダ債を引き受けた中国銀行本店投資銀行・資本管理部責任者は、グリーンソブリンパンダ債が国内外の投資家から注目され、利子が3.28%、募集倍率が1.78倍、海外投資家からの注文は全体の4割を占めたと述べた。
2021-12-16 中国経済網
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1719256232587091609&wfr=spider&for=pc

【中国建設銀行】世界初の「中国・EU持続可能な金融の共通タクソノミーカタログ」に基づくグリーンボンドを発行
 12月13日、中国建設銀行は今年2回目の海外グリーンボンドを発行し、3年間で5億米ドルを資金調達することになっている。今回の発行は中国建設銀行が初の米ドル建て変動利付債で、新基準金利で価格を決定し、中国・EU持続可能な金融の共通タクソノミーカタログに基づき発行した世界初のグリーンボンドで、資金はグレーターベイエリアのクリーン交通とクリーンエネルギー分野の優良プロジェクトの支援に当てられる。
 マカオ金融管理局、韓国投資公社、泰進国際銀行、アリアンツ・グローバル・インベスターズといった質の高い国際投資家を集め、2倍近い応募があった。
 また、この発行は国際資本市場協会のグリーンボンド原則、共通タクソノミーカタログ、気候投資・金融プロジェクトの分類ガイドの関連基準に準拠し、CECC Equity Services (Beijing) Limitedおよび香港品質保証機構からおのおの第三者認証を取得している。
 当該社債は中国建設銀行マカオ支店を発行元として発行され、交付後、香港およびマカオの証券取引所に上場される予定である。
2021-12-16 中国建設银行
http://www.greenfinance.org.cn/displaynews.php?id=3581


3. 王の視点
 全国統一排出権取引市場運営市場運営から半年の成果と課題

 2021年12月31日、全国炭素排出権取引市場の1年目の契約履行期間が終了しました。7月16日よりスタートしてから114日間運営され、発電部門の主要排出企業2,162社が取引に組み入れられ、45億トンの排出量をカバーすることになりました。
 生態環境部の発表によると、12月31日までに累積取引量は1.79億トン、累積取引額は76.6億人民元で、12月31日の終値は1トンあたり54.22元、取引開始日の7月16日の48元と比べ13%上昇したといわれています。別の統計を見ると、114日間の取引において、最高値は61.07元/トン、最低値は38.5元/トン、多くは40-60元/トンで推移していたとのことです。
 良好なスタートを切ったとの評価がある一方、いくつかの問題と課題も呈されています。
 第一は、取引量が寡少で、取引規模が小さいことです。欧州市場ではトン当たりの金額が90ユーロを突破しました。これに比べ、中国の炭素価格は低いままです。取引に参加する企業数が少なく、業種も限られていることに起因するといわれています。このような状況が長期に続くと、市場の流動性と企業のインセンティブに影響するだろうと懸念が高まっています。
 次に、炭素データの正確性と透明性の問題です。全国取引市場がスタートしてから、データの改ざんやデータ不備などの問題が摘発された事例がありました。二つの原因が指摘されています。一つは企業が故意にデータを改ざんすること、もう一つは炭素排出量計算式のパラメータの基準が変更され、データのブレを生じさせたことです。データの不備は取引の正当性を脅かす重大な問題になるでしょう。
 最後に、金融商品性が画一的で、市場流動性に欠くということです。中国の排出権取引市場は、市場原理で企業に炭素排出を自主的に削減させ、中国の国家自主目標を達成するという目的から制度設計がなれました。このため、金融取引に関する考慮が足りませんでした。
 1つ目の課題については、2022年に石炭に加え、石油化工、建材など3~4業種が新たに取引市場に組み入れられる予定で、第14次5カ年計画中には対象である8つの業種をすべてが市場に組み入れる予定となっています。2つ目の課題については、データ偽造の企業に対してより厳しい罰則を設定したり、基準の精密性と安定性を高めたりして、政府が制度設計の立て直しを急いでいます。3つ目の課題については、生態環境部をはじめ9つ政府機関が先ごろ共同で公表した「気候投融資に関する試行実施案」において、炭素金融や先物取引など炭素関連の商品づくりを模索するよう方針が打ち出されました。広州先物取引場が炭素の先物取引市場の創設を模索すると発表したことや2022年には中国認証排出削減量(CCER)市場が運営開始予定となるなど、今後、取引市場の活発性を高めるために様々な施策が動くでしょう。
 2030年中国のCO2排出量のピーク量について、清華大学や環境保護部の試算は、108~119憶トンと予測しています。引き続きこの水準に至るまで、巨大な炭素取引市場が誕生することに注目したいと思います。


(※1)「ダブルポイント」制度とは、2017年工業情報化部など5省が策定した「乗用車企業の平均燃費ポイントと新エネ車ポイントの並行管理弁法」のことである。エネルギー効率評価基準を満たした自動車企業にはプラスポイントを付与、そうでない企業にはマイナスポイントを付与する。自動車企業は、商務部の「ダブルポイント」管理プラットフォームを通じてポイントの取引や譲渡を行うことができる。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。






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