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中国グリーン金融月報【2021年11月号】

2021年12月13日 王婷


「中国グリーン金融月報」11月号をお届けします。

1.今月のトピックス
中国人民銀行と欧州委員会が共同で「持続可能な金融の共通タクソノミーカタログ」を公表
 2021年11月4日、国連気候変動会議(COP26)の開催期間中に、中国、欧州連合、その他諸国が共同で設立した「持続可能な金融国際プラットフォーム(IPSF)」の年次会合が開催され、「持続可能な金融共通分類カタログ-気候変動緩和」レポートが発表された。
 2020年7月、中国人民銀行の提案により、IPSFは中国人民銀行と欧州委員会の関連部門が共同議長を務める「持続可能な金融タクソノミーカタログワーキンググループ」を設立した。ワーキンググループは中国の「グリーンボンド支援プロジェクトカタログ」とEUの「気候変動に関するタクソノミーの委任法令」を比較した上で、「共通タクソノミーカタログ」を作成した。
 共通タクソノミーカタログには「中国・EUグリーン&サステイナブル金融カタログ」で共通認識となっている気候変動の緩和に大きく貢献する経済活動のリストが含まれており、現行版では、エネルギー、製造、建設、輸送、固形廃棄物、林業の6つの主要セクターの主な経済活動を対象としている。
 「共通タクソノミーカタログ」は中国と欧州のそれぞれのカタログの特徴や利点を取り入れており、中国とEUのグリーン投資・融資の協力を促進し、国境を越えた気候変動対策の投資・融資活動を指導し、国境を越えた取引におけるグリーン認証のコストを削減する上で大きな意義がある。
次のステップとして、ワーキンググループは共通の分類カタログでカバーされる領域をさらに拡大する予定である。
2021-11-4 中国人民銀行 
http://www.pbc.gov.cn/redianzhuanti/118742/4357176/4357209/4380064/index.html
コメント:「持続可能な金融の共通タクソノミーカタログ」は、中国とEUの法的根拠、目的、原則、枠組み、論理、分類基準、指標の設定を比較することで、カタログを作成した。また、国連国際標準産業分類(ISIC)を採用している。今後、ワーキンググループは、金融市場と利害関係者にコメントを求め、カタログリストをさらに改善する予定だということである。中国は、共通タクソノミーカタログに基づき、市場関係者が国境を越えてグリーン金融商品を発行し、取引できることを期待している。例えば、中国の債券発行体は、カタログに基づいてヨーロッパでグリーンボンドを発行することができ、ヨーロッパの発行体は、カタログに基づいて中国でグリーンパンダ債を発行することができる環境を作る。

生態環境部会議、「法律に従う企業環境情報の開示に関する管理弁法(草案)」を審議し採択
 11月26日、生態環境大臣の黄潤秋が閣僚会議の議長を務め、「法律に従う企業環境情報の開示に関する管理弁法(草案)」を審議し、採択した。
 会議において、以下が強調された。法律に従って環境情報開示システムの構築を着実に推進し、情報開示に関する法令及び規範の要件を整備し、関連文書及び技術基準の策定を迅速化すべきである。生態環境、公衆衛生、公共の利益に大きな影響を与える情報開示内容の調整メカニズムを確立し、市場や社会的関心の高い企業環境情報に焦点を当て、環境情報開示の内容をタイムリーに改善する。情報開示の監督メカニズムを強化し、行政監督と社会的監督を強化し、情報開示と法執行メカニズムの統合を促進し、法律に従って環境情報の開示を企業の信用管理に統合し、環境情報および監督権の公衆の効果的な保護を行うという。
2021-11-26 生態環境部
https://www.mee.gov.cn/ywdt/hjywnews/202111/t20211126_961998.shtml
コメント:2021年6月28日、中国証券監督管理委員会(CSRC)は「上場企業の情報開示の内容と形式に関するガイドライン第2号 - 年次報告書の内容と形式(2021年改訂)」を公表し、重点排出企業としてリストアップされた上場企業は、年次報告書において汚染物排出情報および汚染防止状況を開示しないといけないと規定した。これを受けて、9月24日、生態環境省は、2021年10月24日まで「法律に従う企業環境情報の開示に関する管理弁法(パブコメ草案)」を公表した。正式な文書は今年中に公開されるといわれている。
 背景には、2021年5月24日、生態環境部は「環境情報開示制度改革計画」を公表し、2025年までに、環境情報の強制開示体系形成を目指すとの目標が定められたことがある。
 今回の草案には、「環境保護法」に定められた情報開示の対象である重点排出企業に加え、①強制グリーン生産監査にリストアップされた企業、②前年に生態環境違反の刑事責任を追及された上場企業または重大な行政罰を受けた上場企業、③前年度に環境違反の刑事責任を追及された企業、社債、非金融企業債など発行した企業、④法令等に規定する環境情報を開示する企業が加えられた。情報開示の主体が拡大されたことがポイントの一つである。開示の項目と罰則も強化された。


2.今月のニュース
(1)-① 中央政府・グリーン金融
人民銀行、「炭素排出削減支援スキーム」を発表

 中国人民銀行は、クリーンエネルギー、省エネルギー、環境保護・炭素排出削減技術など主要分野の発展を支援し、より多くの社会資本を活用し炭素排出削減を促進するために、炭素排出削減支援スキームを策定し、発表した。
人民銀行は、「炭素排出削減支援スキーム」を用いて金融機関に低コストの資金を提供し、金融機関が独自の判断とリスク負担を前提に炭素排出削減の重点分野の企業に対して融資を行うように指導し、融資の金利が同一期間の最優遇貸出金利(LPR)とほぼ同じレートを採用する。人民銀行は、金融機関が企業に提供する融資の60%を提供し、金利は1.75%である。
 人民銀行は金融機関に対し、融資の発行と融資による炭素排出削減量の情報を公開し、第三者の専門機関による検証を受けるように求めている。
2021-11-9 中国金融学会緑色金融専門委員会
http://www.greenfinance.org.cn/displaynews.php?id=3502

財務部、2022年に向け38.7億元の新エネ補助金を発行
 11月16日、財務部の中央予算公開プラットフォームの公式サイトは「2022年再生可能エネルギー関税課徴金補助地方資金予算の早期発行に関する通知」を発表した。通知によると、合計38.7億元の再生可能エネルギー補助金が発行されることになる。そのうち、風力発電に15.5億元、太陽光発電に22.8億元、バイオマスに3824万元を補助することになる。
2021-11-17 央視網
http://news.hnr.cn/shxw/article/1/1460746641241923586

グリーンサプライチェーン指数と企業気候行動指数が発表
 先頃、公益財団法人公共環境研究機構(IPE)は、「第8期グリーンサプライチェーンCITI指数」と「企業気候行動CATI指数」を発表した。
 2021年版では、グリーンサプライチェーンCITI指数における気候変動対策の比重を高めている。
CATI指数は、企業の気候変動対策を「ガバナンス・メカニズム」、「測定と開示」、「目標と実績」、「緩和策」の4つの側面からダイナミックに評価するもので、サプライチェーン企業及び上流のエネルギー・原材料企業の気候変動対策の実績を評価する際に適用できる。
 今回の企業気候行動指数の評価対象は、中国および外国の主要企業662社をカバーする。また指数には、初めて中央企業傘下の58社の上場企業が含まれる。評価対象の業種は30業種に増えた。
 中央企業傘下の上場企業58社のうち55%が自社の事業から排出される温室効果ガスの削減に取り組んでいる。中国石化、中国石油、宝鋼はCO2排出ピークアウトとカーボンニュートラルの目標を公表した。
2021-11-4 東方財富網
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1715463494429163009&wfr=spider&for=pc

持続可能な開発の概念が深まり、新たなパンダ債が発行
 11月11日、中国銀行間市場交易協会(NAFMII)は、人民銀行の指導のもと、社会的責任債券と持続可能な開発債券を導入し、海外発行者を対象にパイロット事業を実施すると発表した。
パイロット事業段階では、外国の政府系機関、国際開発機関、外国の非金融企業が、協会を通じて債券の発行を登録することができる。
 パイロット事業は GSS 債券の国際基準に沿って、国連の持続可能な開発目標(SDG)及び中国の第14次5ヵ年計画などの関連政策も取り入れ、国際的に認められている「4つの柱」というコアメカニズムを採用している。プロジェクトの評価・選定、資金調達の管理、情報開示のほか、外部評価・認証の仕組みや「フレームワーク発行」の仕組みを導入するという。
 パイロット段階では、社会的責任債券は、ヘルスケア、農業、農村・食料安全保障、教育・雇用、水・衛生、インクルーシブ・インフラ、災害防止・救援などの分野の事業を支援する。持続可能な開発債券は、下水処理、スマートバス、新エネ車調達、健康年金などのプロジェクトを支援するという。
2021-11-17 中国金融新聞網
https://www.financialnews.com.cn/sc/zq/202111/t20211117_233241.html

中国、石炭のクリーン化・効率的利用に2,000億元の特別再融資を設立
 17日に開催された国務院常務会議では、先に発表した炭素排出削減金融支援スキームに加え、石炭のクリーン化・効率的な利用を支援するため2,000億元の特別再融資を設定すると決定された。
 特別再融資は、安全で効率的かつ環境に優しい石炭の採掘、クリーンで効率的な石炭の処理、クリーンで効率的な石炭発電の利用、産業用クリーン燃焼とクリーン暖房、家庭用クリーン暖房、石炭資源の包括的利用、炭層メタンの開発と利用の積極的な推進を支援する。
 具体的には、全国規模の商業銀行は、同じ期間の融資の市場価格金利とほぼ同水準の金利で、基準を満たしたプロジェクトへ優遇融資を自主的に発行し、人民銀行は、融資の元本等に応じて再融資支援を行うという。 
2021-11-18 新華社
http://www.gov.cn/zhengce/2021-11/18/content_5651536.htm

中国証券会の副主席方星海氏、2021年中国・シンガポール戦略的連携モデル事業金融サミット(重慶)での講演
 11月23日、中国証券会の副主席方星海氏が2021年中国・シンガポール戦略的連携モデル事業金融サミット(重慶)で貢献し、グリーン金融協力の強化について言及した。「中国証監会は資本市場がカーボンコンプライアンスとカーボンニュートラルの目標を支援するための政策・措置を検討・策定し、グリーン企業や低炭素企業への融資支援を強化し、上場企業の環境情報開示制度を検討・改善し、市場関係者がグリーン投資理念を確立するよう指導し、国際証券委員会機構(IOSCO)の持続可能な金融に関する業務に積極的に参加している。われわれはシンガポールやASEAN諸国と持続可能な金融に関する交流と協力を引き続き強化し、関連する国際基準の策定と改善を共同で推進していきたいと考えています」と述べた。
2021-11-23 中国証監会
http://www.csrc.gov.cn/pub/newsite/zjhxwfb/xwdd/202111/t20211123_408877.html>

(1)-② 中央政府・「3060目標」、その他
中国と米国、気候変動対策の強化に関する共同宣言に合意

 中国気候特使である解振華氏は10日夜の記者会見で、「中国と米国は2つの大国として、大国の責任を負うべきだ」と述べ、今回の共同宣言が中国と米国にとって会議の成功に貢献することを期待した。
 「共通だが差異のある責任」に基づき、各国の事情を考慮しながら、パリ協定の実施を強化し、気候危機に効果的に対処するためすべての締約国と協力していくことを約束した。双方は両国間の気候変動に関する協力と多国間プロセスを促進するため、「2020年代気候行動強化作業部会」を設立することに合意した。
 また、中国は初めてメタンの排出問題に取り組むことを約束した。メタンに関する包括的で強固な国家行動計画を策定することを計画しており、2020年代までにメタン排出量の制御と削減において大きな成果を上げることを目指すという。
2021-11-11 澎湃
https://m.thepaper.cn/baijiahao_15347896

生態環境部: 中国はメタン排出抑制活動をさらに進める
 11月25日、生態環境部気候変動対策司陸新明副司長は11月の定例記者会見において、第14次5カ年計画期間中、中国は関連計画と政策の策定と実施を組み合わせ、メタン排出抑制のための中国の行動を促進するための更なる措置をとると述べた。 具体的に下記5つの措置が述べられた。
 第1に、メタン排出抑制に関する研究。第2に、中国のメタン排出抑制行動計画の推進。 第3に重点分野におけるメタン排出のモニタリング、会計、報告、検証システムの構築を強化。 第4に、モデル事業を奨励。 重点分野におけるメタン自主的排出削減行動を奨励し、地域および企業に対し、メタン排出管理協力を奨励し、メタン利用関連技術、設備、産業開発を促進するための実証プロジェクト及びプロジェクトを確立。 第5に、国際協力を強化。メタン管理政策、技術、標準システム、メタンモニタリング、会計、報告・検証システム、排出削減技術革新に関する協力と交流を強化する。
2021-11-25 中国新聞網
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1717408425110256911&wfr=spider&for=pc

日中炭素削減政策対話が開催
 11月26日、国家発展改革委員会と経済産業省は、オンラインで日中炭素排出削減政策対話を開催した。国家発展改革委員会副事務総長の蘇偉氏と、経済産業省資源エネルギー局チーフ・インターナショナル・カーボン・ニュートラル・ポリシー・オフィサーである南亮氏が共同議長を務めた。
 双方は、カーボンニュートラルに関する政府の政策と課題を紹介したうえ、水素エネルギー利用、二酸化炭素の捕捉・貯蔵、石炭・クリーン・トランスフォーメーション、再生可能エネルギー開発、グリーン低炭素分野における技術交流の深化、産業協力の深化について議論した。日中省エネルギー・環境保護総合フォーラムの協力プラットフォームを活用し、中国と日本の実務協力を促進し、炭素排出削減分野における共通の課題の解決に協力することに合意した。
2021-11-29 国家発展改革委員会
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1717777299761325698&wfr=spider&for=pc

(2)-① 地方政府・グリーン金融
江蘇省、8つの分野でグリーン金融を発展させるための25の具体策を提案

 中国人民銀行南京支店、江蘇省地方金融監督局及び江蘇省発展改革委員会などの部門が共同で主導した「グリーン金融の旺盛な発展に関する意見」を策定された。
 意見では、グリーン金融支援の重点分野の明確化、グリーン金融の枠組みの構築、環境取引市場の育成、グリーン金融機関のシステム改善、グリーン金融商品・サービスの革新、グリーン金融改革・イノベーションパイロットの推進、グリーン金融のインセンティブ・抑制メカニズムの確立、グリーン金融のリスク防止・管理メカニズムの改善等8つの分野で25の具体的な施策を打ち出している。
 意見では、グリーン金融の支援対象として、第1に工業企業のグリーンアップグレードの促進、第2に農業分野のグリーン開発の促進、第3にエネルギーシステムのグリーン転換の促進、第4にグリーン・低炭素技術の進歩の促進、が挙げられた。革新的なグリーン金融商品・サービスの方向性は、第1にクレジット商品の革新、第2に投資チャネルの拡大、第3にグリーン保険の開発、第四にグリーン融資保証システムの改善、を明確にした。
2021-11-11 中国経済導報
http://www.ceh.com.cn/epaper/uniflows/html/2021/11/11/02/02_40.htm

山東省のエネルギー業界、クリーンな低炭素社会への移行に3,000億元のグリーン金融支援を受ける
 山東省エネルギー局と中国工商銀行山東支店の戦略的協力協定の調印式が済南市で開催された。今回の合意では、今後5年間、中国工商銀行山東支店が山東省のエネルギー産業に対し、「融資+債券+株式+代理+リース+コンサルタント」などの投融資で、3000億元以上のグリーン金融支援を行い、エネルギー分野の大型プロジェクトの建設を支援し、クリーンで低炭素なエネルギー転換を促進することが表明された。
2021-11-19 鲁網
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1716821909667832678&wfr=spider&for=pc

中国、初の地方レベルのグリーン金融推進条例を発表 炭素排出を重要内容に
 浙江省湖州市人民代表大会常務委員会は17日、中国の地方レベルでは初となるグリーン金融に関する条例「湖州市グリーン金融推進条例」を正式に発表した。
 条例では、グリーン金融の改革・革新を地方政府の国家経済・社会発展計画に組み込むこと、主要企業が融資申請時に炭素排出量に関する包括的で正確な情報を提供すること、炭素排出量の評価が金融機関の企業やプロジェクトに対する与信限度額や金利設定に影響を与えること、グリーン企業の上場や資金調達を支援すること、保険機関がグリーンで低炭素な自動車保険を開発するよう指導すること、などが明記されている。
2021-11-21 央広網
https://www.sohu.com/a/502616881_362042

江蘇省、初のカーボン・リンク・ローンが登場
 江蘇省興亜農村商業銀行はこのほど、台州市興亜市の火力発電会社に対し、炭素排出権リンクローン500万元を提供した。融資金利は4.85%である。加えて融資金利の50%に財政利子補助の交付をした。江蘇省初の「金融政策スキーム+財政資金補助」による炭素排出権リンクローン支援を実現した。
 炭素排出権担保融資は、生態環境部門が発行した炭素排出権を担保の対象とし、全国の炭素市場における炭素排出権の平均取引価格に基づき、企業の炭素排出権の価値を評価するもので、企業の「炭素資産」を活性化させ、資金調達のルートを広げることができるものである。
 炭素排出権リンクローンは、金融政策スキームと財政資金補助を通じて双方にインセンティブを与え、江蘇省興亜農村商業銀行が炭素排出権リンクローン専用の金融商品の革新者となる。
2021-11-16 中国環境報
https://www.cenews.com.cn/newpos/xf/202111/t20211116_983967.html

(2)-② 地方政府・「3060目標」、その他
上海、再エネ建築物の大規模な開発促進政策を公表

 11月11日、上海市住宅・都市農村開発管理委員会は「上海グリーンビル第14次5ヵ年計画」を発表した。
 計画では、建物と一体化した再生可能エネルギーの利用を奨励する。 「太陽光発電+」再生可能エネルギー建物の大規模な導入を加速させ、太陽光発電の設置に適する新築建物を推進し、2022年から政府機関、学校、工場などの建物の屋上に設置する太陽光発電の面積を50%以上とする。再生可能エネルギー建物モデル事業の革新を促進し、建物の最終電化レベルを向上させ、太陽光発電、エネルギー貯蔵、DC配電、柔軟な電力使用を統合した「光貯蔵直柔」建物の建設を模索することを目指すという。
2021-11-12 科創板日報
https://www.china5e.com/news/news-1125117-0.html

(3) 業界・金融機関
中国銀行が6つのESG債、総額22億米ドルをロンドン証券取引所に上場

 11月12日、中国銀行はロンドン証券取引所において、6つのサステナビリティ・ボンド(総額22億米ドル)の上場式典が行われた。今回6つのESG債のうち、「サステナビリティ・リンク・ボンド」は中国銀行ロンドン支店が2021年10月に発行した初のサステナビリティ・リリンクト・ボンドである。
 また、中国銀行はすでに他の取引市場で上場した既存のサステナビリティ・ボンドのうち5本をロンドン証券取引所に同時上場した。持続可能な海洋経済関連のブルーボンドが2つ、伝統的なセクターにおける低炭素またはゼロ炭素関連のトランジションボンドが2つ、生物多様性を促進するための生物多様性ボンドが1つである。
2021-11-13 21世纪経済報道
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1716304115315882752&wfr=spider&for=pc

興業証券、環境開示報告書を発行、2022年までに自社事業のカーボンニュートラルを実現
 11月16日、興業証券は上海で2022年度資本市場投資戦略会議を開催し、「環境情報開示報告書」を公表した。これは中国人民銀行の要求仕様ならびに国際気候関連財務情報開示タスクフォース提言に準拠して作成された初の環境情報開示報告書である。
 報告書では、興業証券は2022年までに自社の業務においてカーボンニュートラルを達成し、2025年までに2,000億人民元以上のグリーン投資・融資規模を目指すというカーボンニュートラルとグリーン投資・融資の目標を提示した。オフィスのグリーン化や低炭素化、省エネ・排出量削減のための改装、クリーンエネルギーの利用などのカーボン削減アクションを継続的に推進するとともに、投資、融資、コンサルティング、調査など、資本の仲介・斡旋における同社の特別な役割を活かし、気候変動対策分野への資本投資をより多く誘導・促進していくとしている。
2021-11-17 金融界
https://www.163.com/dy/article/GP0JJMLA0519QIKK.html

CCERの取引価格が18倍に高騰、国の炭素市場が遵守に近づく
 全国統一炭素取引市場の初めての誓約期間が近づくにつれ、CCER(Chinese Certified Emission Reduction)市場での取引が活発になったという。上海の炭素取引市場では、今年10月末CCERの日次取引量が10万トンを超えており、10月28日からの累計取引量は540万トンを超えている。また、CCERの価格は1トンあたり35元前後で推移しており、11月2日に取引された最高平均価格は1トンあたり37.58元、11月11日と11月12日に取引された平均価格は1トンあたり36元になった。
 誓約期間が近づくにつれ、国内の炭素市場における主要な排出ユニットの排出枠取引に対する意欲が高まり、取引活動が徐々に活発化した。
2021年11月16日現在、7月16日に開始された国家炭素市場での累積取引量は2703.31万トンに達し、累積取引額は11.93億元である。
 全国の炭素市場の価格はわずかに変動し、11月16日の全国炭素市場の終値は1トンあたり43.16人民元で、初日の始値である1トンあたり48人民元を依然として下回った。
2021-11-19 証券時報
http://www.eco.gov.cn/news_info/50803.html


3. 王の視点
 中国、金融機関の環境情報開示への取り組みが活発

中国では、近年国内で金融機関の環境情報開示をグローバルスタンダードに適応させる取り組みが活発化しつつあります。
 2021年1月に、中国人民銀行は、「グリーン金融改革イノベーション試験区金融機関環境情報開示作業計画」、「銀行金融機関環境情報開示運用マニュアル」、「金融機関炭素会計技術ガイドライン」を策定し、金融機関に、事業活動や投融資における環境影響や炭素排出量の計上及び関連情報開示を促しました。指導とともに、作業計画やガイドラインを踏まえ、実験区で金融機関によるパイロット事業もスタートしました。8月には、人民銀行は「金融機関の環境情報の開示に関するガイドライン」を公表しました。中国の金融当局は、これらの取り組みを通じて、金融機関による環境情報の開示を牽引することを目指しているといわれています。
 中国国内研究機関のレポートを見る限り、近年、金融機関は環境情報開示に積極的に取り組んでいるように見てとれます。金融機関の情報開示のタイトルは様々あります。アニュアルレポート、持続的発展報告書、ESG報告書、責任投資報告書、TCFD報告書、グリーンファイナンス報告書等です。また、環境情報開示に基づく基準も様々のようです。GRI、TCFD、PRI、ISO26000など国際基準に基づく情報開示を行う機関が最も多く、取引所の情報開示基準やESG評価機関の基準、金融業界の情報開示基準などに基づく機関も少なくありません。業種別にいえば、銀行は主にGRIとSDGs、上場した取引所、中国銀行監督管理委員会の基準を踏まえるのが一般的で、保険会社は主にGRIとSDGsに、証券は主に上場した取引所報告基準やMSCIなどのESG格付機関による評価基準を参照し、ファンド会社はPRIの基準を参考する機関が多いとのことです。
 上述した人民銀行の作業計画及びガイドラインに基づき、金融機関がパイロット事業を行い、7月に興業銀行深セン支店が第一号の環境情報報告書を出しました。これまでの公開情報によると、課題もいくつかあります。炭素排出量など環境指標の定量化の試算の基準が多く複雑であること、企業のデータ取得が困難であること、金融機関のキャパシティが足りないことなどといわれています。
 2021年11月3日、IFRS Foundationは、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP 26)において、国際財務報告の持続可能な開発に関する国際ガイドライン(ISSB)の策定を担当する「持続可能な開発基準評議会」の設立を発表しました。それに先立ち、10月13日、米国ワシントン・DCで開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、「G20持続可能な金融ロードマップ」と「G20持続可能な金融総合報告書」が採択され、気候関連の情報開示に関する要件を示すガイドライン作成を促進し、グローバル規模の気候関連情報開示の報告基準作りの基礎をつくることに合意しました。
 気候変動や持続的発展に向けて、グローバル規模での基準統一は強力に動いているように見えます。中国金融機関の情報開示も今後ますます強化されるでしょう。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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