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【北京便り】
COP26、米中が気候変動分野で歩み寄る姿勢をアピール

2021年11月24日 王婷


 11月10日、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)において、米中両国が「21世紀気候行動の強化に関するグラスゴー共同宣言」を発表しました。両国がCOP会合で共同宣言を発表するのは初めてです。
 世界最大の温室効果ガス排出国である中国と第2位の排出国である米国が、貿易摩擦など多くの対立を乗り越え、気候変動に関しては協力を模索し、合意に至ったことは世界中から歓迎されています。一方、多くのメディアが、「異例」、「サプライズ」と形容し共同宣言の発表を報道しました。

 中国国内では、「この宣言の最も重要な点は、米国と中国の間に開かれたコミュニケーションのチャンネルが確立されたことである。気候問題についてより深い意見交換と共通基盤の模索が可能になった」と好意的に評価する声も多く聞かれます。
 実は、共同宣言発表に至るまで、長い交渉期間があったことを、中国気候変動担当特別代表の解振華氏がインタービューで明らかにしています。米中両国関係者は、これまで約10カ月間接触を続け、30回近くのビデオ会談のほか、上海、天津、ロンドン、グラスゴーで4回の直接会談を行ったとのことです。

 共同宣言は16項目で構成されています。パリ協定の目標と実施に向けた再確認と、将来を見据え、2020年代の重要な10年間にパリ協定目標と現状のギャップを解消し、世界経済のネット・ゼロへの移行を加速させる努力を強調しています。加えて、クリーンエネルギーへの移行、メタン排出の抑制と削減、違法森林伐採の撲滅など排出削減といった重要な取り組みを共同で進めることが盛り込まれています。
 米中共同声明に関して、中国国内で特に注目すべきとされているポイントは以下3点です。

 第1は、両国の協力においては、気候変動に関する基準、規制の策定を重要視していることです。今回の共同宣言は、2021年4月に調印された「米中気候変動危機対応共同宣言」を踏まえ作成したといわれています。ただ、技術分野の協力というより、今回は政策、基準作りの領域まで協力分野が広がったのです。
 宣言では、①2020年代の温室効果ガス排出削減のための政策枠組みと環境基準、②クリーンエネルギー転換の社会利益の最大化、③エンドユーザ業界の脱炭素と電化を奨励する政策、④循環経済関連重点領域、例えばグリーン設計及び再生資源の利用、⑤応用技術、例えばCO2回収・貯留(CCS)、利用、空気捕集など、5つの分野での協力に合意しました。

 第2は、メタン削減に関する協力合意に至ったことです。中国政府は、「グローバル・メタン・プレッジ」に参画しなかったものの、共同宣言において、メタン削減に向けた計測、削減計画策定、メタン削減措置を強化すると約束しました。

 第3は、「21世紀20年代気候行動強化作業グループ」を設置し、定期会合などを通じ、協力メカニズム構築の推進に合意したことです。宣言のもと、2022年上半期において、米中間で電力システム、森林保護、CO2排出削減の分野で、実務会議が行われると発表されました。2014年11月に調印された「米中気候変動共同声明」においても、「米中気候変化ワーキンググループ」の設置に合意していましたが、トランプ政権の誕生で実務的には、何も進まなかったという経緯がありました。

 一方、今回の共同宣言に対して、「技術協力や、メタンと二酸化炭素排出削減分野の協力を定めたものの、どのように実現するかについては明確になっておらず、具体性が乏しい。発展途上国への支援資金についても2025年までに1,000億ドルを動員するという内容にとどまっている」という意見もあります。米中協力といってもあまり楽観視はできないとの指摘です。

 ただ、2014年11月に調印された「米中気候変動共同声明」と2015年9月に調印された「米中元首気候変動共同声明」が、パリ協定の合意を後押ししたという実績もあります。COP26における米中の協力表明が、今後10年間の世界の気候変動における取り組みをリードし、カーボンニュートラルの実現に向けて貢献を果たすよう期待したいと思います。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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