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JRIレビュー Vol.11,No.95

地産地消による再生可能エネルギーの主力電源化をーコストを反映した電気料金による需要家行動の変容が鍵

2021年11月11日 成瀬道紀


政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現するという野心的な目標を掲げた。これを実現するには、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化が求められる。再エネが主力の電力システムは、①蓄電池への投資やデマンドレスポンス(DR、需要側による電力使用量の調整)など需給調整のコスト、および②新たな発電所から需要地までの送電網の投資コスト、が追加的に生じる。このため、たとえ再エネの発電コストは低下しても、火力発電を中心とした現行の電力システムと比べてコスト全体の増加が見込まれる。こうしたコストを可能な限り抑制し、コストを上回るメリットを追求することが求められる。

わが国の発電量に占める再エネの比率は2割弱と、欧州に後れを取っている。欧州では偏西風を活用した風力発電がけん引役であるのに対し、わが国では太陽光発電が再エネ拡大をけん引してきた。太陽光発電では昼間に電力が余剰となる事象が頻発しており、需給調整力の強化がわが国では喫緊の課題となっている。こうしたなか、大口需要家はDRの活用を進めつつある一方、住宅などの小口需要家の間では、電気料金が従量制でインセンティブが乏しいことなどからDRはほとんど浸透していない。

火力発電を中心とした従来の電力システムは大規模集中型といえるが、以下の4点を踏まえると、再エネ主力電源化に向けて、わが国では地産地消型の電力システムに転換した方が効率的と考えられる。
一つ目は、送電網維持負担の増加である。多くの地域で過疎化が進み送電網を維持する費用対効果の悪化が見込まれるなか、地産地消を進めれば送電網維持のコストを軽減できる。
二つ目は、地域独占体制による連系線への過小投資である。わが国では大手電力会社の管轄エリア内で送電網が整備され、地域間を繋ぐ連系線への投資が必要最小限にとどめられてきた。洋上風力など大規模集中型の再エネを主力とする場合、北海道などの供給地から東京などの大消費地を繋ぐ新たな送電網の整備に多額の投資が必要となる。
三つ目は、大規模集中型の再エネの適地不足である。風況に恵まれないわが国では、洋上風力は他の再エネと比べてコストが高い。さらに、遠浅の海岸が少ないため、着床式の洋上風力を設置可能な場所が限られる。メガソーラーも、平地面積が少ないため追加的な導入余地が限られる。
四つ目は、家電IoTの標準規格であるECHONET Liteの存在である。地産地消型の再エネを推進するには、住宅などの小口需要家のDRへの参加が不可欠であるが、そのために必要な、家電を一括制御できる標準規格をわが国では開発済みである。異なるメーカーの家電の一元的な制御ができる標準規格は国際的にも類を見ない。

電力の地産地消の具体的な姿や推進策を検討するうえで、先行地域の取り組みが参考になる。低層住宅を中心としたスマートシティである藤沢SSTでは、全戸に太陽光発電設備や家庭用蓄電池を設置し、各戸で電力を自家消費できる体制を整えている。中高層ビルからなる柏の葉スマートシティでは、ビルの屋上などに太陽光発電設備を設置したほか、共用の大型蓄電池や自営線を使ってエリア内の需要家間で需給調整している。豊かな自然環境に恵まれた長野県飯田市では、住宅用太陽光発電に加え、メガソーラー、中小水力、バイオマスなど様々な再エネを導入し電力の地産地消に取り組んでいる。

こうした事例から、以下の課題が浮かび上がる。まず、分散型電源の設置に関して、である。平地面積が限られるなか、屋根を有効活用できる住宅用太陽光発電は最有力の分散型電源であるが、全国的に導入を進めるには何らかの仕掛けが必要となる。次に、地域内での需給調整に関して、である。現在の制度では、地域内の需要家間による需給調整で経済的メリットを得るには自営線の設置が必要である。地産地消を全国的に推進するには、地域内での需給調整に既存の配電網を活用できるようにする必要がある。

地産地消型再エネを主力とした電力システムでは、発電設備の設置やDRの実施など需要家の役割が格段に大きくなる。需要家にこうした行動変容を促すには、電気料金にコストを反映させ、市場メカニズムを最大限活用することが有効である。具体的には以下の3点が求められる。
一つ目は、炭素税などカーボンプライシングの導入である。炭素税の導入により電気料金が上昇すれば、太陽光発電設備などの設置による自家消費が需要家にとって経済合理的となる。
二つ目は、ダイナミックプライシングの普及である。電気料金が需給状況に応じて変動することで、需要家がDRによるメリットを得られる。ダイナミックプライシングの普及には、電気料金のインデックスとなる卸売市場の成熟化が不可欠である。
三つ目は、託送料金の改革である。現状、送配電にかかる費用である託送料金は託送の距離などにかかわらず一定であるため、近隣で需給調整するインセンティブを阻害している。託送料金を距離など実際のコストを反映した価格にすべきである。

地産地消型の再エネ主力電源化推進の最大の目的は、効率的にカーボンニュートラルを実現することだが、同時に脱炭素以外のメリットも追求していくことが期待される。具体的には、①発電設備の設置や保守管理など地域の雇用創出・地域活性化、②家電の一元管理によるスマートホームの実現、③商圏分析や広告など他分野への電力データの活用などが挙げられる。

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